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「普通」とはなにか?バチェロレッテが「普通」と言われて傷ついた理由

発するのにこんなに勇気がいる言葉を、わたしはほかに知らない。

普通=いつ、どこにでもあるような、ありふれたもの

傷つく人がいれば、安心する人もいるこの言葉は、多様するとムダな誤解を生む。だれかを傷つけてしまう。

今回は、なぜバチェロレッテが「普通」と言われてうろたえたのか、わたしなりに整理してみたい。


バチェロレッテシーズン3とは?


Amazonプライムの人気恋愛リアリティ番組『バチェロレッテ・ジャパン シーズン3』を見ている。

今、6月27日(木)20時に配信された第4話までを見終わったところ。

番組名:バチェロレッテ・ジャパン シーズン3
配信開始日:2024年6月27日(木)
話数:全9話

シリーズ3作目になる今回のバチェロレッテは、東大卒の元官僚という肩書を持つ、武井亜樹さんだ。

武井 亜樹 (たけい あき)
群馬県出身。2021年3月、東京大学工学部・航空宇宙工学科を卒業後、経済産業省に入省。現在は、宇宙関連事業に熱心に取り組む一方で、宇宙に関する記事の執筆など、宇宙に関する情報を発信するライターとしても活動。趣味は空手(黒帯)、アウトドアスポーツ、食べること(こってり系の日本食とスイーツが特に好き)、ファッション、絵画鑑賞

参考:バチェロレッテ・ジャパン シーズン3

バチェロレッテシーズン3の「普通事件」


まずは、問題の「普通事件」を整理してみよう。

事の発端は、参加者の一人である櫛田創(くしだそう)さんと亜樹さんのデートでの会話だ。

亜樹さんはデート中、櫛田さんに「普通」と言われ、ショックを受けてしまう。

そして、翌日のデートで「わたしは普通じゃない」と唐突に英語で自己紹介をはじめてしまうのだ。

その場にいた3人のデート相手(櫛田さんはいない)は、前日の櫛田さんとの出来事を知らない。

突然英語を話す亜樹さんに、ぽかんとする男性3人。

…そりゃ、ぽかんとすると思う。

***

のちのインタビューで、その場にいた参加者の小川哲郎(おがわ てつろう)さんが、「英語がよくわからなかった」と言っているのを見て、さらに確信した。

亜樹さんはこの時、デート相手の男性3人に向けたコミュニケーションをしていない。

本当の気持ちは正直わからないが、少なからず亜樹さんはバチェロレッテであることに対してプレッシャーを感じていて、「バチェロレッテ」を自分なりに理解し、真面目に向き合おうとしたのだろう。

番組や視聴者に向けた「わたし、英語できます!普通じゃないでしょ?」というちょっとした演出だ。

それか、百歩ゆずって3人に向けているとすれば、なんだろ、普通に素直な自己アピール?笑 多少の意地と持ち前の愛嬌で、あの表現になっちゃったのかもしれない。

これだけ素直なふるまいをするバチェロレッテは今までにいただろうか。

彼女は番組の宣伝サイトや動画で「東大卒」「元官僚」「シリーズきっての才女」と押されていたが、本当の魅力はそこじゃない。

「素直」で「真面目」…そして実は「愛嬌たっぷり」というのが、彼女の本当の魅力だろう。

のちに参加者の一人であるセバスティアン クラビホさんが、「パートナーというよりも、妹みたいに見えはじめた」といったような発言をするのだが、なんだかとても納得した。

亜樹さんは本当に「素直」で「真面目」で「愛嬌たっぷり」なのだ。

バチェロレッテが「普通」と言われて傷ついた理由


亜樹さんと櫛田さんのあのデート場面を、もう一度思い出してほしい。

実は二人は、ぜんぜん違うはなしをしている。

櫛田さん:櫛田さんと亜樹さんの関係性のはなし
亜樹さん:亜樹さんのバチェロレッテとしての評価のはなし

櫛田さんは、あくまで自分と亜樹さんとの「2人の関係性」について話している。

亜樹さんには番組宣伝上どうしても「東大卒」「元官僚」「シリーズきっての才女」というイメージがあり、櫛田さんからみたら一定の距離感があった。

でも、櫛田さんは亜樹さんと実際に話すことで、自分との類似点を多くみつけることができた。

親近感が持てていることを「普通」というニュアンスで表現してしまったのはちょっと雑ではあるが、あくまで、とても良い意味で「普通」という言葉を使っている。

櫛田さんの「普通」= 理解や共感がしやすい = 良い意味

一方、亜樹さんはこの番組を盛り上げなければならない、いわば座長だ。

バチェロレッテという高嶺の花をしっかり演じて、番組を成立させなければならない。

「東大卒」「元官僚」「シリーズきっての才女」ともなれば、番組を成立させるための責任感も強いだろう。

実際彼女は、MOREのインタビューで「番組を観て、仕様や流れを予習した」と答えている。

一貫してそうふるまえたのは、いい意味で、“知らなかったこと”がプラスに働いたかなと思います。自分が番組のファンだったら、「歴代のバチェロレッテたちがやっていることをやらなきゃ」と焦っていたかも。さすがに、バリ島に行く前には番組を観て、仕様や流れを予習しましたけど(笑)。

引用:武井亜樹さんインタビュー|MORE

こういうところ、さすがだ。

だからこそ、櫛田さんの言葉の意味を自分への評価として受け取ってしまった。

亜樹さんの「普通」= 一定のレベルに達してない = 悪い意味

櫛田さんは、おそらく亜樹さんの評価なんてこれっぽっちもしていない。

ふたりは全く違う話をしている

「普通」には2種類ある


ブルガリア出身のユダヤ人作家で哲学者だった、エリアス・カネッティは言う。

普通を求めるのは人間の本能であると。

・集団との距離をゼロにすれば恐怖心はなくなる
・人は安全のために普通に合わせようとする

参考:エリアス・カネッティの権力論の一考

ただ、大事なのは「普通」には2種類あることだ。

・自分の中での「普通」
・他人も含めた集団の中での「普通」

集団の中での普通と自分の普通は、常に異なる。

亜樹さんは番組を成立させる責任感からか、自分の普通ではなく「集団の普通(=制作側や視聴者も含めた)」にあわせようとしてくれている。

これが、そもそもかなり「普通」を難しくしている原因だ。

「集団の普通」は環境によって変化する。

合わせようとして合わせられるものではないのが、むずかしい。

***

いろいろ言ってしまったけど、亜樹さんは真面目さや誠実さがとても伝わってくるし、共感しやすくて、応援したいバチェロレッテだ。

ぜんぜん、普通じゃない。

とにもかくにも、やっぱりバチェロレッテシリーズはおもしろい。

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石井しい
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