孤独は悪なのか?心地よい「孤独」と「孤独感」の違い
2023年6月7日、「孤独・孤立対策推進法」が公布され、国は本格的に孤独・孤立対策に乗り出した。
なんだかすごい。国は本気だ。
相互に支え合い、人と人との「つながり」が生まれる社会を目指すという内容は、たしかにとてもすてきなこと。
…でも、同時にちょっと「コワい」とも思ってしまう。オトナたちが本気でつながりを生む社会を目指してしまったら、「つながり=善」という価値観が一般的になってしまわないだろうか。
「つながり」は必ずしも善ではないし、同時に「孤独」も必ずしも悪ではない。
物理的にひとりになりやすい日本の現状
単身者が増えている。
40代後半の未婚者の割合は、男性が約30%、女性が約20%と経済的にも精神的にも自立して生きる人が増えているのだ。
1970年代までは男女ともに5%以下だったことを考えると、時代は大きく変わった。
「婚活」という言葉があるくらいだから、「結婚」自体に魅力がなくなったと言うわけではない。
でも、親や親戚がムリヤリお見合い相手を探してくることはなくなったし、結婚するもしないも自分で自分の人生の選択をすることができる時代になった。
ひとりひとりの価値観が認められるようになってきた結果だ。これはつながりを作る以上にすばらしいことだとわたしは思う。
「孤独」と「孤独感」の違い
内閣官房孤独・孤立対策担当室が2018年に行った「わが国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、日本人は悩みや心配ごとがあっても「誰にも相談しない」割合が高い。
でも、このデータを見て、「これは大変!早急に人と人とのつながりをつくらなくちゃ」と考えるのは、かなり乱暴だと思う。
このアンケ―ト結果は「誰にも相談しない」人の割合であって、「相談したいけど相談できる人がいない」人の割合ではないからだ。
この違いをごっちゃにした文脈で語られることが意外と多く、その度にわたしはちょっとコワくなる。
「孤独」と「孤独感」は違う。
「孤独」は、解決すべき「問題」じゃない。問題があるとすれば、「孤独感」のほうだ。
日本人は他国に比べて「誰にも相談しない」人が多いのは事実だが、その理由はいろいろだと思う。
もちろん中には「相談したいけど、できる人がいない」人もいるかもしれないが、「自分で解決したい」とか、「別に相談したいと思ったことがない」とか、「相談しても解決しないので自分の好きな人たちに余計な手間をとらせたくない」とか、それこそ本当にいろんな人がいると思う。
「誰にも相談しない」=「孤独感を持っている」とつなげてしまうのは、ちょっと乱暴すぎる。
実際にわたしもあまり人に相談するタイプじゃないけど、「相談したいけど、できる人がいない」と思ったケースはほぼ皆無で、むしろ違う理由で自ら「相談しない」ことを選ぶことのほうが多い。
「孤独」が「孤独感」を必ず生むという誤解
孤独に関しては、世界中でたくさんの研究がされている。
でも、日本の場合、物理的に孤独である人が増えているにもかかわらず、自殺者数は増えていない。
やっぱり「孤独」が「孤独感」を必ず生むというのは誤解だ。
***
遺伝子検査サービス「MYCODE」の調査によると、日本人の約69.2%が「孤独をあまり感じないタイプ」らしい。
その結果に納得していたら、わたしもまさに「孤独をあまり感じないタイプ」に分類された。
遺伝子から紐解くと、たしかに物理的に一人でいることが多くなれば、そのうちの30%の人は孤独感が増してしまう可能性が高い。
それを少しでも和らげるために、人と人との「つながり」が生まれやすい社会を目指すのはすばらしいことだ。
でも、個々の自由の上になりたった「つながり」であることを意識しないと、今度は心地よい孤独が社会から排除されてしまうリスクがある。
心地よい「孤独」が必要な日本人は、意外と多いのだ。
↓↓↓ この note の人気記事はこちら ↓↓↓
↓↓↓ この記事に関するマガジンはこちら ↓↓↓
だれかの明日の行動を変えたり、不安が減ったり、元気になるエッセイが書けるよう、日々精進しております。いただいたサポートは、活動費に使わせていただきます<(_ _)>