「支援学」(Helping)への招待 #6 - ほんとうの意味で、相手の話に耳を傾ける
今回は、「Chapter 3 成功する支援関係とは?」を読んでいきます。これまで見てきたように、支援を求める人と、支援を提供する人との関係は、気持ちの面で対等ではありませんでした。助けを求める人が「ワンダウン(一段下にいる)」の状態に置かれてしまうからです。
「ワンダウン」の状態のままでは、クライアントが自らの手で問題に取り組むことを目指すという、ほんとうの意味での支援が機能しづらくなります(本の中では「クライアントが陥りやすい五つの罠」と「支援者が陥りやすい六つの罠」が紹介されています)。
したがって、誰かを助けようとする人はまず、目の前の相手が「ワンダウン」となっている状況を是正する必要があります。さて、どうやって?
当事者ではない支援者による分析ではなく、クライアント本人による経験と語りにこそ価値があると信じること。聞き手が自分の世界観や視点を通して話し手の世界を分析するのではなく、話し手自身がどのように世界を体験しているのかを一緒に感じようとすること。心から相手の話に耳を傾けるとは、そうした「あり方(Being)」で話を聞くことなのだと、シャインさんは言っているのだと思います。
心から耳を傾けているつもりでも、私たちはつい、「自分にとってどのような意味があるのか」、「自分にとってどのような価値があるのか」、などと考えながら相手の話を聞いてしまうことがあります。話を聞いてもらう立場としても、相手の聞き方に不満を感じたことがあることでしょう。人の話を聞くというのは、難しいものなのです。
「目の前の相手は、どのように世界を経験しているのだろうか」。この問いを持ち続け、相手の話を聞くことができるか。
誰かを助ける立場になったとき、心に留めておきたいポイントです。
次回も引き続き、「Chapter 3 成功する支援関係とは?」のシャインさんの言葉に触れながら、支援者としての「あり方(Being)」を探究します。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?