ヨーロッパに搾取され続けるアフリカ
貧しいアフリカ
アフリカと聞くと「貧困」『飢餓』「内戦多発」「疫病蔓延」「独裁者の国家元首」など、あまり良いイメージは思い浮かんできません。
特に「貧困」というイメージは日本に限らず全世界でも同様かと思います。 欧州の列強がアフリカの国を植民地化して、ただ同然の賃金で現地労働者をプランテーションや鉱山などで強制労働させ、おまけに奴隷輸出などして搾取してきた結果極端に貧しい国が多くなったのは事実でしょう。
以下の地図はヨーロッパのたった7か国でエチオピアを除くアフリカ全土を植民地化していたことを表すものですが、この7か国のうち特にイギリスとフランスは多くの国を植民地化していたことが分かります。
第2次大戦後アジア各国で独立運動が広がりアフリカでもその機運が高まった結果、20世紀初頭から中頃にかけてアフリカ諸国が次々と旧宗主国から独立を果たし現在ではほぼ全てのアフリカの国が独立国家となっていきました。
独立から半世紀、早く独立を達成した国では100年も経った現在アフリカの大半の国はどういう経済状況でしょうか。
アフリカには金・銀・ダイアモンドなどの貴金属資源、コバルト・マンガン・チタンなどのレアメタル、石油・石炭・ウランなどのエネルギー資源などが豊富に存在し、途轍もない資源大陸です。
こういった天然資源を有効に活用し、輸出などすれば中近東のように国民を含め国全体が豊かになれる筈ですが、大半の国、特にサブ・サハラ(サハラ砂漠以南)、またはブラック・ アフリカと呼ばれる国々は貧しいまま、特に旧フランス植民地だった地域には世界最貧国とされる国が多数存在しています。
これらの天然資源は十分に開発され、カカオなどの農作物なども大量に輸出されているのですが、どういう訳だか大半の国とその国民は非常に貧しいままです。不思議ですね。何故でしょうか。
アフリカでは独裁国家が多く政府のトップが天然資源の利権や国際支援金などを横領しているから、彼らは金持ちだが一般大衆は貧しいまま。民主主義が未発達だから力で政府を武力で倒すクーデターや内乱が起きやすい。部族が多数いて部族間の争いがこれに拍車をかけている等々・・と、一般的には言われています。
アフリカの独裁者と言えばウガンダのアミン大統領、ジンバブエのムガベ大統領、リビアのカダフィ大佐などは日本でもよく知られています。
リビアのカダフィ大佐は巷で言われていることに反して、また他の私服を肥やしたアフリカの独裁者とは異なり国内では自国民の為の様々な福祉政策を行い、国民の非常に厚い支持を得ていたとされています。
またアフリカ全体が植民地支配から完全に脱してより良い方向へ舵取りが出来るよう様々なアフリカ全体に関する計画を発表していたのですが、2011年に暗殺されています。
さて、アフリカが貧困状態のままの理由ですが、先ほど述べた「独裁者横行」「政府要人の汚職と腐敗」、「部族対立」などがその背景にあるのだろう、と私自身もずっと長い間そう思っていました。
確かに政権トップの要人達が私腹を肥やして国民には全くと言っていいほど還元されていない国がアフリカには多いのは事実のようですが、それだけではない、ある「仕組み」がフランスの旧植民地国に今も存在しています。日本では99%の人はこのことを知らないのかもしれません。
次回投稿予定の「カダフィ暗殺の闇」の中で述べますが、フランスに限らず、イギリスやドイツなどヨーロッパNATO連合軍はアフリカをバラバラにして一致団結させないようにし、自分達の利権確保の為にカダフィを排除したのですが、直接的且つ露骨にアフリカを支配・搾取をしているのはフランスです。
フランスの支配・搾取の仕組みは金融を通じたものです。 漠然と金融というとあまり酷いやり方ではないように聞こえますが、この金融の仕組みは非常に巧妙に仕掛けられておりこれに組み込まれた国々は恒常的に貧しいままの状態に置かれるようになっています。
フランスは旧植民地からこの仕組みで富をどんどん自国に吸い上げ、アフリカの現地住民は非常に貧しいままという状態となっています。旧フランス植民地には世界最貧国と言われるニジェール、ブルキナファソなどの国が多いのもこれで説明がつきそうです。
フランスによる植民地搾取の仕組み
フランスの旧植民地の大半の域内では共通通貨CFAフラン(セーファーフラン)と呼ばれる通貨が流通しているのですが、全く聞いたことがないと思われる人が殆どではないでしょうか。
CFAはColonies Françaises d'Afrique(フランスのアフリカ植民地)の頭文字です。そこで流通するフラン(ユーロ導入前のフランスの通貨はフランス・フラン)で、旧フランス植民地域内の西アフリカと中部アフリカで2種類のCFAフランが使われています。
以下に旧フランス植民地であったアフリカの国の地図と2種類の異なるCFAフランを採用している地域の地図を示しておきます。
この2種類のCFAフランは全く同一の価値を持つものですが、相互に用いることは出来ません。つまり、それぞれの域内でのみ使用される共通通貨ということです。
1945年フランスのドゴール将軍の植民地政策の一つの重要な柱として共通通貨としてのCFAフラン制度が作られ、植民地独立後もそのまま残っているものです。
① CFAフラン通貨の発行権
中部アフリカと西部アフリカの2か所の中央銀行がそれぞれのCFAフランを管轄し通貨の発行量などを決める政策は複数の国の代表の全会一致での決定が義務付けられているのですが、この2か所の中央銀行にはフランスの代表がそのメンバーの一員となっています。
例えばある国の経済状況が悪い時は通貨を沢山刷ってお金の供給量を増やして公共事業を活発化させ景気を底上げする、といったことが可能ですがフランスの同意がなければこういった決定は出来ないことになります。
つまりアフリカ通貨加盟国には通貨の発行権がなく、実質的にフランスがこれを握っていることになります。
② CFAフランの為替レート
CFAフラン導入当時ユーロは存在していないので、為替レートは1958年にフランスの通貨に対し1FFr(フランス・フラン)=50CFAフランと決められ、その後1994年にはIMFの介入で1FFr=100CFAフランと切り下げを実施しています。
その後フランスがユーロを導入した後の1999年には1ユーロ=656CFAフランと設定されましたが、この為替レートは固定レートで変動することはありません。
アフリカのCFAフラン導入国にとって非常に大きな問題なのはこの656FCAフランというレートは導入国の経済状況に照らし合わせると著しく高く評価されているということです。
分かりやすくドル・円で考えてみましょう。東北大震災の頃1ドルが80円を以下となった時期があり特に輸出企業には大打撃で大騒ぎとなりました。円以外の外国通貨に対し円が高く評価されたので外国で日本製品を買う人から見ると現地通貨建ての値段は跳ね上がるからです。
1ドル=100円の時、日本の輸出業者が売値10,000円で採算が取れる水準として100ドルでアメリカの輸入業社へ売っていたとします。1ドルが80円となってしまうと10,000円相当の売り上げを確保するには125ドルで売らないといけなくなり、製品の価格競争力が落ちることになります。
逆に海外から輸入をする会社や日本から外国へ旅行する人などにとって円高は有利となります。現在1ドル=157円と歴史的な円安傾向が続き輸出企業に有利とは言え、それ以外の点で深刻な問題を孕んでいるのですが、そのことはここでは触れないでおきます。
さて、ユーロに対してCFAフランが高く評価されるとどういった問題が生じるかと言うとアフリカ側から欧州のみならず全世界への輸出競争力が損なわれるということになります。
それを補う為売値に含まれる利益を圧縮しなければならなくなり、アフリカ側に入る利益が低く抑えられてしまうこととなります。これでは現地はますます貧しくなります。
ヨーロッパ側から見ると、ユーロはFCAフランに対し割安なため価格競争力があり、ヨーロッパ製品、特に旧宗主国フランスの製品が大量になだれ込みそのことによってアフリカ側では輸入に頼る結果、国内産業が育たないという弊害も同時に生じることとなります。
一般的に発展途上国では経済が脆弱な場合が多く、その国の通貨の価値は低くなります。
途上国ではない国も一時的に経済が停滞すると自国通貨を安くして(通貨切り下げ)、輸出競争力を増やして景気を回復しようとする場合もあります。
CFAフラン導入国ではこれが出来ず、先ほど述べたように公共投資などの財政出動も出来ないという状況に置かれています。共通通貨圏では輸出を梃子にした景気回復が出来ないというのはCFAフラン採用国ほどひどくないにせよ欧州域内でも起きたことがあります。
リーマンショック後の2010年イタリア、スペインやギリシャが経済悪化で金融不安が発生し特にギリシャはEU離脱の話まで話題になりましたが、これらの国々の不満はユーロ圏では欧州中央銀行ECBが通貨に関する権限を独占している為イタリアやギリシャは単独での通貨切り下げで輸出競争力を増やすことが出来ない、というものでした。
逆にドイツはこの状況のおかげで以前にもまして輸出競争力が増し、南欧の国々に対する輸出が倍増して豊かになったので、ドイツは金融支援をすべきだ、との声が南欧から噴出し、ドイツは「いや、それはあんた達政府の放漫経営のせいだから、そんな支援はしない」とやり返すなど醜い争いが欧州内でありました。
③ 外貨準備金の預託
上記①と②の「通貨発行権」と「為替レート」だけでも酷い仕組みだと思われるのにこれに加えCFAフラン導入国は輸出で得た外貨の50%をフランスの国庫に預け入れなければならないことになっています。
最初は100%をフランスが自由に操作出来るフランスの中央銀行口座に預け入れることが義務付けられていたのですが、それが65%となりそれから50%(2005年)という比率になりました。本来はアフリカの経済発展の為に使われるべき資金がフランスに献上されていたことを意味します。
フランスの強大な経済力でCFAフランの価値を担保し、フランス・フラン(その後複数の国の集合体で更に強大な経済力のEUの通貨ユーロ)との相互兌換を無制限に保障する見返りとしてフランスが要求したのですが、これがCFAフラン加盟国にとっての唯一のメリットとなっています。
アフリカは経済が発展しておらず、地政学上も様々な動乱など社会不安も多い為、通貨は不安定となり易くジンバブエで起きたような通貨暴落によるハイパーインフレなどの心配があるので、通貨の安定はアフリカの国にとっては非常に重要だからです。
ただ、ガーナやナイジェリアなどユーロやドルなどとの固定相場制を取っていない国などでは特に通貨の変動が酷いわけでもなく経済も比較的安定していることからCFAフランの仕組みはアフリカ側にとってあまりにも不公平な制度であることに変わりはないでしょう。
私がこのフランスのアフリカに対する酷い仕組みを知ることになったきっかけはイタリアがEUの移民政策に関しフランスを非難したことです。
2010年にはじまった「アラブの春」騒動をきっかけとしたアフリカからヨーロッパへの難民が増え、特にイタリアはアフリカに近いことから大量の難民が押し寄せていました。
2022年にメローニイタリア首相はこれ以上難民を受け入れることは出来ないと表明するとフランスが人道的見地から受け入れるべきだとイタリアを批判。これに対してメローニがフランスによるアフリカ搾取を指摘し、難民問題の本質をついた反論をテレビ局のインタビューでしています。
メローニのCFAフラン批判
今だに続くフランスの植民地政策
1975年にナイジェリア、ガーナやCFAフラン加盟国を含む地域の15か国でECOWAS(西アフリカ諸国経済共同体)が結成されていますが、2019年にナイジェリアで会合が開かれ2020年までに域内の共通通貨ECOを導入することを目指すことに合意しています。ECOはユーロなどとは固定せず、変動相場制を採用することとなっていました。
自国の権益が侵されることを恐れたフランスのマクロンは慌てて直ぐに動き、親仏とされるコートジボアールを訪れ、フランスの国庫にあるCFAフランの預託金は返却する、通貨政策への介入を止める、中央銀行はアフリカ人だけで運営する、などの懐柔策を提示。
そしてそのような懐柔策と引き換えに現行のCFAの制度はそのままでCFAフランの名称をECOに変更することを提案、コートジボアールがECOWASメンバーを説得するよう依頼するのですが、旧英国植民地のナイジェリアなどが反対し、ECOの導入は宙に浮いた格好となっています。
フランスはこのECOWAS内で国力や人口など圧倒的な存在のナイジェリアが西アフリカ全域で覇権を握ることを恐れISISのようなイスラム過激集団ボコ・ハラムを作り、支援してナイジェリアの政情不安を煽っている、と噂されています。
これまでフランスに反旗を翻した、あるいはアフリカ全体をよくしようとした複数のアフリカの政治家が不審死していることからも、十分にあり得る話でしょうね。
フランス植民地統治終焉の始まり
近年中国やロシアのアフリカに対する軍事支援、資金供与及びインフラ整備などが盛んになったことを受けてなのか、アフリカではヨーロッパ離れが起きつつあるように見受けられます。
中国は貸し付けた資金をアフリカが返せないとなるとその国の自分達で作った港や土地・建物などを差し押さえるなどのあくどいやり口も目に付くのですが、ヨーロッパが植民地政策でやったのに比べればまだましだ、と思っているのか大半のアフリカ諸国は中国との協力関係に前向きです。
ロシアは主に軍事的な協力関係を梃子にアフリカ内での影響力を拡大しています。2021年から2023年にかけてCFAフラン導入の3か国で立て続けにクーデターが起きましたが、背後でロシアがクーデターを支援していると言われています。
まず2021年にマリ共和国でクーデターが起こり新政権はフランス軍のマリ常駐は認めず翌年にマリから撤退しています。2022年にブルキナファソ、2023年にはニジェールでクーデターが発生しアフリカ西部での動乱が広がっています。
こういった状況を日本のメディアは報道していませんが、フランスは追い詰められ対応を迫られています。その対応策は西部アフリカでも親フランス国、例えばコートジボアールなどの連合軍でクーデター新政権と一戦を交える検討をしているようです。
CFAフラン地域はフランスにとって死活的に重要でこの地域から毎年50兆円ほどの実入りがあったとされ、シラク元大統領は「フランスの国力はアフリカを失えば第3世界のレベルまで低下する」と発言していることからもフランスが対応に躍起になっていることがお分かりいただけると思います。
まあ、仏軍と親仏同盟軍の連合軍の相手の背後にはロシアが構えていることからそう簡単にクーデターによる新政権を倒して元に戻すことは出来ないかも知れませんね。
更にフランスを窮地に追いやっているのは原子力発電用のウランの供給途絶あるいは購入価格の暴騰です。フランスは原子力大国で電力の70%は原子力発電によるものです。また余剰電力はドイツやイギリスに輸出しています。
燃料のウランは主にアフリカから調達しています。フランスのウランの全調達量の25%はニジェールからの輸入ですが、クーデター後ニジェール新政権は軍隊も含めフランスの現地からの撤退の要求と同時にウランの売値を1kgあたり0.8ユーロから200ユーロと250倍の値上げを通告しています。
この200ユーロ/kgという値段はほぼ2024年1月時点でのウラン鉱石の市場相場なのでこれ一つとってみてもフランスがどれほどニジェールを搾取していたかが分かります。
ニジェールウラン鉱石値上げ
自由・平等・友愛を国是とし、お洒落で文化的な国フランスがとんでもない植民地搾取をしていたことがバレてしまっています。 仏領ニューカレドニアでも選挙権に関してひと騒動が起きていますね。
フランスは(に限らないのですが)絵にかいたようなダブル・スタンダードで偽善の国と言っても過言ではないように思えます。アフリカは相変わらず動乱に巻き込まれ貧困のままの状況ですが、クーデターで主権を取り戻したこれらの国々のように旧宗主国からの真の独立で将来は良い方向へ進むことを願うばかりです。
今回の投稿は以上ですが、次回は似たようなテーマですが、「カダフィ暗殺の闇」ということで投稿予定です。