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城郭に関する超難問です。 -なぜ、日本の城石垣は曲面か?-
私なりに世界を廻って城壁を観ましたが,明確な意思をもって曲面(三次曲面を造る勾配)に施工している城壁は日本以外にはありません。そもそも、城壁を曲面にするような馬鹿なことは考えません。
時代は中世戦国時代から江戸時代初期に造られたものです。
私は、日本人の「モノづくり」に対する伝統的な考え方を表していると思っています。
今までに、誰も指摘したこともなく、その回答を求めたものもありません。
そして、明確な「答え」はありません。想像するしかありません。
人間の視覚の特性と洗練された美への意識と戦国大名の「粋」か。
この難問に向き合った人はいないため、私の想像です。
石垣築造後の変形や変位(孕み出し)に対する事前の対処か、土留め石積の延長からと考える人も居るかもしれませんが、違います。
一辺の長い長方形の構造物を傾けて築造したとき、それを斜めから観る人間の視線は「中央部が孕んだように」見える特徴があります。延長がある垂直や水平が人間の目には必ずしもそう見えないのと同じ原理です。
視点を変えれば、モノが観えてくることもあります。
そもそも、城壁の景観は誰を対象?「滅多に来ない敵軍か、毎日通る味方か」
日本の「モノづくり」に対する伝統的な考え方なのかもしれないが、自然や生活環境の中で、特に日常的に視覚に入るものに「調和」を求めるような強い感覚があると想っている。人間が創り出すものでも、たとえ城壁であっても環境の中に異を唱えるような「モノづくり」を嫌い、画一的で平坦でないものを嫌った結果なのかと私は想っています。
観念的な言い方だが、往時の人間は城石垣の均一化を嫌い、使う場所によって勾配を変え、曲率を変化させたのです。
自己顕示欲が強い戦国大名が身に着ける派手な衣装や鎧兜、異常な執着を見せるお茶や茶器、侘びや寂びへの傾倒を見れば、己が居住する城郭の石垣に、均一で表情のないものなど使う訳がないと考えれば、少しは納得できるのではないかと私は思っている。