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「守備戦術の駆け引き」オフェンスを揺さぶる6つの視点|タッチフットボール

以前、攻撃からみた「揺さぶり」についてのバリエーションを紹介しました。
では、守備が仕掛ける「揺さぶり」としてどんな駆け引きが考えられるのか、K-SPEX&郡山女子が試合に向けて準備しておく視点を書きます。

以下、守備全体としての駆け引きを、

①時間を奪う
②時間を与える
③ミスマッチを作る
④認知を並びで阻害する
⑤認知を動きで阻害する
⑥スペースを限定する

という6つの視点から見てみます。

時間を奪う

典型的には、ブリッツです。パスラッシュの枚数を増やすことは、QBとオフェンスから「時間」を奪う戦術です。

タッチフットボールでは、2枚のパスラッシュがベーシックといえますが、そこから変化をつけるために3枚または4枚のラッシュを入れます。

結果として、ラッシュの枚数を増やすほど、オフェンスは早いプレーで対応してきますので、これによって1プレーの時間を早くすることができます。

下の動画は、トライフォーポイントのプレーでディフェンスがラッシュを4枚入れてくる作戦です。
結果として、このパスカットがこのゲームのキープレイとなっています。

時間を与える

逆に、パスラッシュを減らした「1枚ラッシュ」は、中盤を厚くする戦術で使うことが多いですが、QBとオフェンスにあえて時間を与えるために使うこともできます。

あえて時間を与える戦術のねらいは、

●QBの判断ミスを誘う
●ロングパスを放り込ませる

が主なものです。

前者はたとえば相手QBが経験豊富でない場合、後者は対空能力が高いDBで勝負したり、フィールドポジションがいい状況でインターセプトを狙いにいく場合などに使います。

弱点としては、結果が相手QBの判断力に大きく依存するので、全国大会では試合を通した有効性が低いところです。しかし、たとえば学生リーグの「同レベルチームに打ち勝つ戦術」としては使い道があると思います。

ところで、下の動画は、ゼロラッシュの例です。
このディフェンスの狙いは、時間の揺さぶりというよりは、中盤を厚くすることにあると思われますが、ラッシュを減らすことによって、QBに予想外の時間を与え、プレーそのものにかかる時間が緩やかになります。
(【時間を緩やかにする=ゆっくり守る】ことには、ゲーム全体の流れをコントロールする重要な意味がありますが、それは改めて書きます)

ミスマッチを作る

さて、オフェンスがミスマッチを狙うのと同様にディフェンスもミスマッチを狙っていきます。

狙いやすいのは、パスプロの強くないガードやセンターの前にもっとも強いラッシュをおくことです。

また、ガードにはそれぞれに、止めやすい(ラッシャーの)タイプと止めにくいタイプがあります(いわゆる相性)。

ミスマッチを生かす方法としては、とくにポイントになるシーンで

●ラッシュの選手を変える
 → 左右を変える、選手を変える
●苦手なタイプの選手でブリッツを入れる

などが有効です。

全国レベルの試合では、ディフェンスがミスマッチを作ることはなかなか難しいのですが、一方、たとえばミックスの試合では、男女のミスマッチをどう組み合わせて解釈するかが戦術のポイント、ゲームプランの楽しみの中心になっています。

認知を並びで阻害する

オフェンス(とくにQBとオフェンスライン)は、セット時のディフェンスの並びを見て、ディフェンスのシステムを予想したり、自分のスナップ後の動きをイメージしています。

そこで、並びをかえてその予測を妨害(ディスガイズ)し、一瞬の判断を惑わし、個人戦術として優位に立つことができます。

一般に使いやすいディスガイズとしては、

●自分たちのゾーンと違う並びをする
 → 例えば、4-2に並んで、2-3-1に引く
●個人の任務(アサインメント)と違う位置にセットする
 → 例えば、2DEEPのCBがWRとのクッションを浅くセットする

などがあります。

開始直前まで位置を変更できる、動きながらプレー開始できるという、ディフェンスに与えられた絶対的に有利な条件を生かすために、ディスガイズを活用すべきでしょう。

認知を動きで阻害する

上のディスガイズは、個人でもできる駆け引きですが、さらにチーム戦術として、選手の動き、全体の動きを変えてオフェンスの予測を裏切ることが有効です。

それは例えば、

●ローテーション守備
●キープレーヤーを限定した待ち伏せ守備
●あり得ない箇所のマンツーマンカバー

などです。(それぞれの詳細は別の機会に譲ります)

私たちが強豪チームから奪うインターセプトは、ほとんどがこうした認知の駆け引きから得ています。
フィジカルで優位に立てないチームは、ぜひ挑戦してみてください。チームディフェンスのコツをつかむ最短の方法です。

私は、個人的に一番好きなのは「認知の駆け引き」です。
相手選手に「こんなはずではないが」「思ってたのと違う」と感じさせる仕組みをチームとして作れれば、それだけでおおよそのチームからは精神的な優位をとれます。

全国レベルの強豪チームは、QBの判断ミスやスローミスが極端に少なく、偶発的なインターセプトがほとんど見込めません。

とくに経験や技術に優位性をもつチームとの対戦で勝利をもぎとるためには、狙いをもってインターセプトを複数回取っていくことが必須であると考えています。


Author イシダトモヒロ (SPEX FOOTBALL)
宗教家、元大学准教授(社会政策学・幸福学)。SPEX FOOTBALLディレクター。
第1回シュガーボウル、第1回ファイナルタッチのファイナリスト。監督として東日本学生優勝(郡山女子大)。現在は、地元郡山市で子どもと女性を中心としたコンパクトフットボール「カトラス」の普及活動をおこなう。

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