コロナ、五輪、SDGsで分かった、スポーツを「スモール化」するメリットとは
今回は、スポーツを「スモール化」するこんにち的な意味について、コロナ、五輪、SDGsという3つの視座から論じます。とくに、今後のスポーツと社会の行方に関心があるという方に、気楽に読んでもらいたいです。
結論
・コロナ禍の苦境の中で、スポーツの「安・近・短」とスモール化が見直される
・五輪種目の選考において、省スペース、少人数という「普及可能性」が考慮される
・SDGsにおいても、スポーツの地域差を是正するために「スモール」がキーワードになる
これまでスポーツが目指してきたのは「大きくなること」
これまでスポーツは、地域のスポ少から、世界のメガクラブまで「規模の拡大化・範囲の広域化」にあらゆる力を注いできました。
それは、資本主義のもとでは、大規模・広域(=資本)こそが力、そして持続性、であるからです。
コロナ禍の三重苦は「集まれない、移動できない、費用がまかなえない」
ところが、資本の集積やグローバル化の副作用である格差の拡大、また、大規模開発の副作用である環境問題やコロナ禍が私たちに突きつけてきたのは、集まれない、移動できない、費用がまかなえない、という三重苦です。スポーツ業界もただごとでなく苦労しています。
仮にコロナ禍が長期化した場合には、オリンピックやワールドカップなどの、巨額の資金を保有する巨大スポーツイベントでさえも、大規模な集客や選手の移動にともない、苦境に立たされると言えるでしょう。
スポーツの「安・近・短」が見直される?
逆に、コロナ禍の中で低リスク、低コストなのは、
①少人数で近場でできる、②開催コストが低い、③少ない回数と短い時間でコンパクトに開催できる、「スモールな」スポーツやイベントです。
コロナ禍の中で、近場の旅行やレジャーが見直されたように、スポーツでも「安・近・短」のよさ(コンパクトさ)が見直されるのではないでしょうか。
五輪がすすめる「スモール」
フラッグフットボールが選ばれる理由
さて、2028年ロサンゼルスオリンピックでは、追加種目として「フラッグフットボール」が検討されています。
なぜ、アメリカ人が熱狂する市場規模の巨大な「アメフト(タックルフットボール)」ではなく、アメフトを簡単にした「フラッグフットボール」だったのでしょうか。
この選考の経緯について、私は関係者から「アメフトはスタッフを含めて人数が多すぎて選手村に入りきらない」というふうに聞きました。
(野球と同様に、試合時間が長すぎるというネックもあったようです)
人数については、「Flag Football World Championship Tour」のウェブでも同様に解説されています。
↓↓↓ 趣意:タックルフットボールは50人以上の選手だが、フラッグフットボールは15人でいい、1/3だ。
Where each traditional tackle football team would probably carry 50+ competitors, flag football would need probably 15 players at most, cutting that number to less than a third. This is important because the Olympics cap their total participants to 10,500 athletes and coaches.
普及のための「スモール」
スモールスペースと、スモールコスト
同ウェブで、さらに言及されているのが、より貧しい国での普及可能性についてです。
↓↓↓ 趣意:より多くの国で競技をするには、省スペースで少ない資金でできる方が理にかなっている。
It also again allows more countries to compete, especially poorer countries, where fielding a smaller and less financially demanding team coupled with the reasons above makes more sense.
初期投資がかかるスポーツほど、多くの国で普及することが難しいと弱点を抱えているわけです。
SDGsがすすめる「スモール」
経済力で強さが決まらないこと
三つ目の視点は、2030年までに世界を変えるための目標を示し、国際合意された「SDGs」です。
SDGsの中心テーマは、地球環境の保全、そして、格差・不平等をなくし、誰も(どの国も)取り残さないことです。
「スポーツSDGs」は、スポーツに含まれる格差・不平等を解消すること
スポーツ庁は「SDGsの達成にスポーツで貢献していきます」と宣言しています( #SportsSDGs )。しかし、SDGsの理念から考えたとき、スポーツをSDGsのPR手段にするだけでは貢献していることにはなりません。
社会の縮図であるスポーツ自体に含まれる、格差・不平等、ジェンダー問題等の解消をゴールに設定して、はじめて真の「スポーツSDGs」だと言えるのではないでしょうか。
スポーツの地域差を是正するための「スモール」
SDGsはグローバルな枠組みですが、国内の格差、すなわち「地域差」も認めていません。
この観点からは、たとえば地方を置き去りにして大都市のみで普及し、盛り上がっているスポーツは「持続可能とはいえない」と評価されてしまいます。
スポーツの地域差・不平等をなくすためには、先に述べた、用具、施設等に費用がかかりすぎないこと、経済力の格差が競技力・普及に影響しない状況が必要になります。
人口減少、低成長経済、コロナ禍にメリットのあるスモール&コンパクト
こんにち、コロナ禍と人口減少で、選手、チーム数、練習や試合の機会が著しく減少する中、スポーツはどうすればよいのでしょうか。
また、コロナ以前のように大規模に集まれないとき、スポーツはどう変わればよいのでしょうか。
そのヒントのひとつがこれまで述べてきた「スモール」そして「コンパクト」にあると、私は考えています。
スモールこそ連帯が必要になる
最後にひとこと。
スモールなスポーツに必須なことは、内部でも外部でも「つながり」を重視して孤立しないことです(連帯)。
そして仲間と「徹底的に楽しく」やることです。
誰でも区別せずに自分たちのグループに受け入れ、他のグループとつながり、大きなスポーツに合わない、または取り残されている人たちを優しく包んでいくことが、スモールなスポーツの社会的な使命になるでしょう。
おわり
補足
大規模スポーツイベントの問題点
オリンピックなどの大規模スポーツイベントが持続可能なのかという問題は、長期的な経済活動とのバランスにおいて、常に考えなければなりません。
たとえば、大会運営に大きな費用がかかり、大会後の施設・スタジアムの運営コスト(赤字)を自治体の税収で埋めている地方都市の状況は、長期的に「持続可能なのか」という見方です。
その意味で、大企業や大きなスタジアムを中心にした、興業化と大規模集客によるスポーツが、低成長経済のもとで住民の幸せに効果的なのかどうか再考が必要です。
補足
ジェンダー平等であること
また、SDGsには重要な理念として「ジェンダー平等」があります。この観点から、男女が異なる団体やルールでおこなったり、男女の環境差が著しいスポーツは望ましいとされません。
アメフト、ラグビーは、フルコンタクトのスポーツであるがゆえに、いまのところ男性中心のスポーツといえます。また、サッカーでさえも国内の女性選手の比率は数%に過ぎません。
女性プレイヤーがアクセスできる環境を整備したり、性別を超えて一緒にプレーできるジェンダーフリーなスポーツを提供するなどの社会的活動が必要になるでしょう。
以上
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