2023.6.17~9.3 いわてでえがく いわてでつくる展 石神の丘美術館
展示風景
岩手県岩手郡岩手町の石神の丘美術館で行われたグループ展「いわてでえがく いわてでつくる展」に参加しました。私は展示室と野外展示の両方に作品を出しています。
展示室では、縦3メートル×横2メートルの大きなキャンバス作品を展示しています。この作品は、転写技術を使って作ったもので、かなり迫力があります。大きさもあって、遠くからでも目を引くような仕上がりになっています。細かい部分までじっくり見てもらえると、転写の独特な表現が楽しめるはずです。
一方、野外展示には、看板をモチーフにした作品を出品しました。こちらは屋外という開放的な空間を活かした作品で、実際の看板のような存在感がありつつ、ちょっと考えさせられるような要素も含んでいます。
室内と屋外、全く違う雰囲気の2つの場所で異なるアプローチの作品を見てもらえるよう工夫しました。
野外展示の作品です。本物の看板の形にして、広告や標識のようなデザインに仕上げています。
遠くからでも目を引くような見た目で、ただの看板ではなく、「これって何を伝えているんだろう?」と考えたくなるようなアート作品になっています。
キャンバス作品制作記
キャンバスに転写を行うためには、まず平らなパネルにキャンバスを貼る必要があります。今回は作品がとても大きいので、必然的にパネルのサイズも巨大になりました。そのため、まず3×6サイズの板を6枚繋げて、まるで床のような大きなパネルを作るところから始まりました。これが土台となり、その上で転写の作業を進めていきました。
キャンバスを仮止めしたら、まずアクリル絵の具で色を塗り広げ、その上に転写元の紙を貼り付けていきます。色が乾いたら、貼った紙を濡らして剥がす作業に移ります。一般的なサイズの作品であれば、それほど難しくない作業ですが、今回は床に広げた大きなキャンバスで作業を進めていたので、どうしても画面の上に乗って作業する必要がありました。そのため、画面を踏まないように、板を設置してその上に乗りながら作業を進めました。
作業は、インクジェットプリンターのように上から順番に塗りと貼り付けを繰り返していきます。接着剤は水で薄めたものを使用しているため、乾くまでに時間がかかり、その間にシワができやすいです。そのため、何度も貼り直しをしながら、慎重に作業を進めていきました。
次に、紙を取り除いていく作業に進みます。紙の繊維が完全に取り除けるまで、乾いたら削り、また乾いたら削りを何度も繰り返していきます。この作業を続けることで、図像がだんだんとはっきりと現れてきます。
使用する道具は主に耐水の紙やすりですが、力を入れすぎると転写した部分まで削れてしまうため、加減を見ながら慎重に作業を進める必要があります。繊細な作業で、微妙な調整が大切です。
画面が完成したら、次は仮止めしていたパネルからキャンバスを外し、展示用に作った木枠に張り替えます。大きな画面を貼る作業はいつも手が痛くなるので、正直あまり好きな作業ではありません。しかし、これが最後の仕上げの部分なので、ここで一踏ん張りして完成させます。
木枠にキャンバスを貼った後、最後にクリア塗料を吹き付けます。塗料には少しパールを混ぜているので、光に当たると作品がキラキラと煌めくようになります。この艶が出ることで、転写した部分もより鮮明に見えるようになります。これで、制作過程は完了です。