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選挙カーを見ると胃が痛くなる

わたしがSNSで政治的なもの、イデオロギー的なもの、党派性のある事柄に関して極力ポストをしないのは、数年前、地方選の選挙事務所にいたことがあるからだ(候補者本人ではなく、スタッフです)。

私のSNSのメインアカウントは全て本名だし、フルネームはnoteにも、他の署名記事にもバンバン出ている。経歴や属性も、過去の署名記事でおおかた公開されている。「あのとき、あの事務所にいたあいつだな」ということは調べればすぐにわかる。

いろいろあって、今後、選挙や政治にはいち有権者を超えるような立場で関わるつもりは今のところ一切ない。当時お世話になった政党さんとも選挙の間だけの関係で、いまは全く繋がりがないんだけど、そんでも「昔、あいつ某党にいたぞ」ということになると(事実だけに)厄介だ。

わたしがいま、そういう気楽な「元」の立場でいまさら迂闊な発言をして、万が一にも現役で頑張っておられる人たちの足を引っ張ることになってはいけないとは思っている。これが理由である。

だけど、特定党派や思想信条にかかわらないところで、いくつか言えることはある。

しょせんSNSで見えるのは人のごく一面、それも比較的小綺麗な一面だけだ。そんでもって、SNSでの私は、毎日毎日毎日、猫と家族と仕事の話くらいしかしない、ごく普通のおばちゃんだ。

私のポストの内容から、私が拡声器を持って人前で話して、肩書の立派なおじさんたちに万歳三唱されている姿を想像できるひとは誰もいないだろう。

だけど、誰も想像しないとしても、それって本当にあった出来事なのだよな。自分でも思い返すと不思議な気持ちになるくらいのことだけど。だってぜんぜん似合わないもんなあ。

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そんで、ここからが大事な話なんだけど、
そういう私が「全然似合わないのに、選挙ガチったことあるよ」という事実自体が、結構大事なことなんじゃないかなと最近では思っている。

選挙事務所で「中の人」をやったのは、数年前の地方選でのことだった。地方選って小さい事務所で運営をぶん回しているところも多くて、選挙なんか初めてやる素人も混じっていたりする(わたしだ)。

そういう素人は、たいてい候補者の知人友人が手伝いに駆り出された格好で、普段は地域のなかで、ごく普通に生活して仕事をしている人だったりする(わたしだよ)。

素人は、プロ選挙マンたちの常識や慣習が全然わからないので、一般社会のビジネスのやり方を流用して仕事するしかないのだけど、そうすると、それに対して「選挙のやり方と違う」って舌打ちされたりする(これもわたしだよね)。

こういうことを、今、数年たって思い返すと、
健全だったのはわたしのほうだったんじゃないか?と思うのだ。

何にも分かってねえ素人が、一般社会と同じやり方を持ち込んで、ビジネスと同じ方法で仕事を回して、それで舌打ちされる「選挙」ってどうなん?
一般社会と乖離していく「選挙」、ひいては「政治」って何なん?

おかしな話だよ。
だれが、選挙を、政治を、限られた人だけのものにしちゃったんだろう?
「あの世界には独特のしきたりとルールがあるから」っていうけど、政治って、そういうガラパゴスを作っちゃいけない分野なんじゃないのか?

これは、わたしが
「今後、選挙や政治には、いち有権者を超えるような立場で関わるつもりは一切ない」ことの一番の理由だ。つまりわたしは、ここで諦めてしまったのだ。

組織の体質と構造から変える、そりゃなかなかの大仕事だ。でも、それができないと、政治も選挙も、ますます普通の「素人」の手から離れて、遠いところに行ってしまうだろうという気がする。若い人を見ていると、ますますそう思う。

でも諦めてしまった。わたしのような者こそが変えなくちゃいけなかったのだろうが、自分の生活と家族と仕事を守りながら、とてもそこまで余剰の労力を払えない。使命感だけではとてもできない。あなたにはできる?たぶんできないよね。できるという人だけが石を投げてくれ。たぶんわたしに石を投げられる人は誰もいない。

わたしに石を投げられるとしたら候補者本人だけだろうが、候補者たちは、そういうことをすべて呑み込んで、もっと多くのことを諦めて、ようやくあの場所に立っている。彼らもやっぱりわたしに石を投げはしないだろう。

まあだから、どんなに意見が気に入らなくても、ヤベエ奴だと思っても、候補者に対しては最低限の礼節を持って言葉をかけてほしいなとは思う。私は、あの場所には絶対に立てない。どんなに考えが合わない立場の人だろうと、いけ好かん奴だろうと、あの場所に立てる胆力だけは称賛に値する。
でもきっと、ネットで暴れちゃうような人は、この文章絶対に読んでくれないし理解もしてくれないと思うから、こんなことをここで言ってもどうしようもないな。まあ、これは余談だ。

ちなみに貴重な経験ではあったけど、選挙には負けたし、わたしは友達(このときの候補者だった)をひとり失ったと思っている。率直に言って、失ったものばかり大きかった。得たものは経験値と、この、何とも言えない後味の悪さだけだ。マジでやってられない。

でも、この後味の悪さ。結構これはこれで、文章にすれば誰かに届くものがあるかもしれないと思って、今これを書いている。

それで、私も一応まだ、何かできることあるかなあ、とはずっと思ってはいる。何年もの間、答えは出ないけど。

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わたしはこの選挙の前も、後も、必ず投票には行く。どんなに苦くても、やれることをやるしかないからだ。
みなさんもそうしてくれたらいいなと思う。



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