何で湘南に住んでるんですか?
茅ヶ崎に移住して丸6年が経つ。
「何で湘南に住んでるんですか〜?」と都内では良く言われる。
コレには自分の中で明確な答えがある。
「何で湘南に住んでるんですか〜?」と言われる為に住んだからだ。
世田谷区、目黒区での家探しに疲れ切った僕は、江ノ島の海の家で持ち込んだ安いワインを(当時は持ち込み大丈夫だったけど今は知らない)後輩と呑みながら、流れてくる地元のラジオを聴いていた。
「江ノ島でラジオ」
何か心の中に引っかかる物があった。
「江ノ島でラジオもええなぁ」と僕がポツリと言うと、後輩は「江ノ島でラジオやれたら楽しいですよね!」と返事する。
いや、聴く方の事を言ったんやけどなー。
パーソナリティーの方の捉え方もあるよねー。
と思いながら、もう一度口に出してみた。
「江ノ島でラジオ」
何だかドキドキした。
帰りの電車に乗る頃には、どうにか江ノ島に住めないだろうか?と考えだしていた。
30歳まで大阪に住んでいた僕は、上京しても関東の知識が余り無く
江ノ島と鎌倉と葉山と大仏と大磯ロングビーチはだいたい同じ場所にあると思っていたし、住んでいる人間にすらハッキリ認定されていない「湘南エリア」なんて分かる訳もなかったのだ。
「江ノ島に住みたい」というのは
「このエリアに住みたい」であり
「海の近くであれば、そこはもう江ノ島や」
という発想であった。
魔法のことばのように
「江ノ島でラジオ」
が脳内で再生される。
結果、湘南に来てすぐさま江ノ島が放送エリアのラジオが決まるのだから不思議なもんだが、この話しはまた別で。
兎に角、それがキッカケで湘南エリアの事を詳しく調べだした僕は、湘南のトリコになった。
海があって山がある。神社仏閣が山のようにある。江ノ島が見えて富士山が見える。季節ごとにビーチエリアではイベントが行われて非常に楽しそうだ。
何より都内まで通うのに電車で1時間かからない圏内。
僕が生まれ育った大阪府阪南市という場所は目の前が大阪湾で部屋の窓から対岸の淡路島が良く見えた。裏側はすぐ山で毎年夏になるとカブトムシ獲りに精を出した。
繁華街の難波まで出るのに電車で50分ほど。
思春期も終わりに近い頃、こんな田舎に住んでられるか!と思い大阪西成で一人暮らしを始めた自分を棚に上げて思った。
あの少年時代に戻りたい、とまでは言わないが、あの少年時代の感じを少しでも家族に感じてもらいたい。
その夏、息子に言われた「オトーチャン、カブトムチとりたい」。
虫網とカゴを抱え三軒茶屋からバスに乗って環八沿いの大きな公園に行き、山崎まさよしのワンモアタイム、ワンモアチャンスよろしく、こんな所にいる訳もないカブトムシを探した。
藪蚊に刺され膨らんだ部分を親指の爪でバッテンしながら「カブトムチおらんかったなあ」と息子に言ってる自分を何だか情け無く感じた。
都内で正社員として働いていた妻には大変申し訳なかったが、交渉してみる事にした。
家族ぐるみでお付き合いのある一家が茅ヶ崎に住んでいた事もあり、試しに都内まで通えるかどうか、そのお宅に何日か泊まらせて頂き通えそうなら住もうという事になった。
ほぼほぼ僕のゴリ押しではあったが、了承してくれた妻に言われた。
「何で湘南に住みたいの?」
僕は胸を張って答えた。
「湘南に住んでる方がオモロいやん」
妻は不思議な顔をしていた。
「何で湘南に住んでるんですか?って絶対聞かれるやん。オモロいやん。」
妻は更に不思議な顔をしていた。
続きはまた今度。