2024 Viz Games 優勝Vizができるまで(思考編)
このブログでわかること
2024/6/12 Salesforce World Tour Tokyoにて日本初開催となるViz Gamesが行われ、我如古さん、さかぴーさん と共に出場するという大変貴重で光栄な時間を過ごすことができました。
このブログでは、Viz Gamesで作成したViz(ダッシュボード)を作るまでの過程、特に思考の部分をまとめていきたいと思います。
テクニック部分はまた別でまとめます。
自分の記録として残しておきたいですし、今後皆様がデータ分析・可視化をする際に少しでも参考になれば幸いです。
考えたことをつらつらと書いていくので、まとまりのなさ、流れの悪さ、長さはご容赦ください。
Viz Gamesとは?
3人の出場者が共通のお題に沿って、与えられたデータを使って20分でTableauダッシュボードを作り上げ、3分で分析結果をプレゼンテーションするという競技。
毎年アメリカで開催されているTableau Conferenceの名物企画 "Iron Viz" をご存知の方はイメージしやすいかと思います。
審査項目は、以下3点。
Analysis
Design
StoryTelling
ビジュアルアナリティクスで必要な3つの要素になりますね!
挑戦して改めて難しさと面白さを実感しました。。。
ちなみに、イベントのアーカイブは9月中旬まで見られるので、会場の雰囲気を感じたい方はこちらのSalesforce+からどうぞ!
1.データを手に入れる
Viz Gamesは本番約1ヶ月前に運営チームからお題とデータが提供されます。
今回のテーマは
でした。
なので、もちろんお題のデータも国別のCO2排出量や、大気汚染状況、気候など、環境に関するデータが中心となっていました。
それと、デモグラ情報として人口や1人あたりGDP、平均寿命などなど。
データセットはこちらで公開されていますので、触ってみたい方はダウンロードすることができます。
データを手に入れたらまず内容を確認。
確認方法は人によって様々だと思いますが、私は紙に書いて整理することが多いです。今年の自分的目標として、ナレッジを共有するというのを掲げているので晒します。あぁ恥ずかしい。笑
主に確認したことは以下
各データに入っている数値の定義
粒度(国ごと?市区町村ごと?年ごと?年月ごと?)
期間
個数や期間をざざっと見るのはやっぱりTableauに読み込ませて確認するのが早い。とにかく疑問点と誤認がないように、色々調べました。
調べていくと、自分の教養のなさが浮き彫りになって泣きそうでした。半べそかきながら、それぞれのデータにどんな関係があるのかをコツコツ紐づけていきました。
2.ストーリー作成
誰に何を伝えるかを考えるストーリー作成。
ビジネスのダッシュボードであれば、ある程度担当者が決まっているので
発見した課題を担当者へ提示し、解決策立案につなげる
という割とシンプルな(これも難しいこともありますが)流れになりますね。
ただ、VizGamesは「誰に」の部分から自分で定める必要があります。
イベント会場には
・経営者から、現場担当まで
・Tableauヘビーユーザーから、Tableauって何という方
・データ分析が生業の方から、データ分析業務始めたばっかりの方
などなど。オンライン視聴者も含めると更に枠は広がります。テーマが環境問題なので自治体や国なんかもターゲットになり得ます。
もう出だしから迷子です。笑
なので、ターゲットを決めた後のストーリーまで広げてみます。何を伝えてどんなアクションを起こしてもらうか、をそれぞれのターゲットで考えてみます。
伝えたいこと:地球環境は悪化している。より良い未来を作るには?
ターゲットが国の場合:・・・(イメージできない)
ターゲットが企業の場合:エコな製品やサービスの開発・流通
ターゲットが個人の場合:・・・エコバッグの徹底?(ちっちゃいなおい)
企業向けに何か提案できないかなーと思いましたが、今回のデータセットには業種や企業規模などのデータはなく、上手く伝えられそうにありません。
ますます迷子です。
引き続きデータセットを中心に環境について色々調べていくとマイナスな記事が多く、だんだん暗い気持ちになっていたのですが・・笑
ただ、「PM2.5は減らしすぎると太陽光が地球に直接届く量が増えるので気温が上昇する」ということを知り、「ん?減らせば良いってもんじゃないのか・・」とちょっと見方が変わりました。
が、まだピンとこない。
迷いに迷って迷走しまくっていた私を救ってくれたのはRikaさんの登壇内容&記事でした。
私は何者なのか?
私がストーリーを語ることによってどんな意義を生めるのか?
を考えたうえで改めてテーマを見てみると「より良い未来」というポジティブなワードが気になり「未来=子供たちの未来」と変換しました。
私といえば?を考えた時、一番最初に「母」が出てきたからです。
環境問題が叫ばれる中で、子供たちのためにできることって何だろう。
エアコンを28度にする?重いマイボトルを持ち歩く?
何事もそうですが「我慢や辛いこと」は継続できない。ダイエットとか運動とかね・・・。
自分が継続できないことを探っていくのは辛いし、子どもたちに継いでいくのもイマイチすぎる。
だったら、ポジティブなことを伝えて「未来は明るい!」と感じてもらうことが、私がストーリーを語る意義なのではと思うようになりました。
で、手に取ったのは名著「FACTFULNESS」だったのでした。
ポジティブな視点で環境問題を調べていくと
「石器時代は石が無くなったから終わったのではない」
という素晴らしい言葉を見つけました。
石器が使われなくなった理由は、それより優れた技術が登場したことで石器が必要無くなったからだ、ということです。
世界に誇れる技術力を持つ日本にぴったりの言葉かも、と感じてストーリーを構築していきました。
ここまでのもやもやを書きながら整理したメモの一部がこちら。
あぁ恥ずかしい(2回目)
ストーリーを作るのに一番時間がかかりました。
2週間以上、毎日2~3時間うんうん考えていました。
サポートいただくTableauSE・AEの方々とディスカッションしたり。夫にも夜な夜な壁打ちに付き合ってもらいました。感謝。
大まかに、
ターゲット:環境問題にネガティブなイメージを持つ個人
起:温暖化が進んでいることは事実
承:しかし、我々は対策していないわけではない。ちゃんと成果を出せている部分もある。
転:日本は?
結:自分たちの行動で未来はちゃんと変えていける
の起承転結でストーリーを作ることに決めました。
3.Viz作成
ストーリーが決まってしまえばこちらのもの!!というわけにはいかないのがビジュアルアナリティクスの面白さ・難しさです。
自分が伝えたいことを誤解されずに正しく・わかりやすく伝えるためにはどんな表現が良いのか?どんな見せ方が良いのか?
を、これまたうんうん考えます。
FACTFULNESSの散布図は各国の現状把握に使えそう。
これは使いたいし、提供データで各種数値算出できる→OK
Tableauのクラスター機能で国を分類してみる。
先進国がCO2排出量減らせてる・・!→OK
なんで減らせてるんだろう??
CO2排出量には人口と1人あたりGDPが影響しているそう。マトリクスだと上手く表現できない・・・
樹形図みたいにする?
いやいやTableauでそれやるなら全部浮動にするから手数が増える&メンテナンス無理。もしくは1シート教に入信して悪魔の手を借りるしか・・・
あ、そういえば何かの表現で切り口をぽいぽい入れるの見たな・・?
あぁ、サンキーチャートね!
複数ディメンション入れられるし、関係性もわかりやすいし、見た目的にもインパクトあって良いかも・・!
でも作ったことないねぇ←致命的
こんな時はもうここに行くしかない。
丁寧にHowToをまとめてくださっているArakawaさんのブログ!!
まぁ・・表計算ですよね。
なんとかできた(時間無視)
ここから、
起承転結作るためにオープニングを入れて、クロージングを入れて…
エリアチャートよりも起点からの変化率の方が良いか?などなど見た目と機能を調整していきます。
で、どうやって動かす・・??
Tableauにはストーリー機能がありますが、チャートを残しながらストーリーを進めたかったので、ストーリー機能だと手間がかかるかもなと思いました(機能名と名詞のストーリーがあって文章ややこしくなるな)
今年のTableau Conferenceで参加したテクニカルセッションの中に、2022年のIronViz優勝者、WillさんのVizを解説したものがあったのを思い出しました。1枚のダッシュボードだけでストーリーが進んでいく、当時は超斬新な作り方で目を奪われたことを覚えています。
これならチャートを残しながらスムーズにストーリーを進められるということで、動的ゾーン表示という機能をフルに使った形で進めることにしました。
そこまでのもやもやや思考をメモしたのがこちら。
パラメーターも何の時にどうすれば良いんだっけ?などメモして考えていました。
そして出来上がったのがこちらのダッシュボードでした
4.あとはひたすら練習
ストーリー・デザインが決まったらあとはもうひたすら練習です。
20分でダッシュボードを作り切り、3分以内で説得力のあるストーリー&言葉選びをひたすら繰り返しました。
当日、ステージの演台の高さが約90cmとのことだったので自宅で最も高さの近いカラーボックスにPCを置いてスタンディング練習。
爆音BGMに慣れるために爆音で音楽かけて練習。
他の人のコメントに惑わされないように、サポートのTableau SE・AEさんでお喋りや実況中継してもらいながら練習。
などなど。
緊張しいなので、どんなシチュエーションでも大丈夫なようにひたすら練習を重ねました。
作成時間を短くするためのTipsやテクニックは別記事でまとめます。
また、こちらの動画でも詳しく解説しています!
まとめ
データとビジュアライゼーション、ストーリーに本当に真剣に向き合うことができた約1ヶ月でした。
結果、ポジティブなストーリーと効果的な可視化を評価いただいて(たぶん)優勝することができました!!
日本で最初のViz Gamesで優勝できたことは素直に嬉しいですし、自分にとって改めてデータビジュアライゼーションの面白さを実感できる最高に楽しいイベントでした。来年は審査員として参加させていただく予定ですので、皆様の作品を楽しみに待っています!