Wヤング平川幸男師匠「超絶おちゃめ伝説」
私の辞書に
「大物ほど腰低い」
という上沼恵美子さんから勝手にいただいた言葉がある。
これ真理。
私のお会いした方で統計とってみても数字出ております。
おおむね「マウントとってこようとする人」は、中途半端な人。
とか、売り出し中の若手におりがちな
妖怪テングザカリ。
ついこの前も出没したがな。
ある番組の収録後。こちらが45度に礼をしてお疲れ様でした言うとるのにカウンターテーブルに上半身寄りかかったまま「どーもー」ていう超若手、あんたは関口宏か!
て、おもんないツッコミさすな!
しんどいねん!
と、書いてるうちにめらめらと負の感情が甦ってきて、オープニングですでに息切れの中高年。
ペース配分、気をつけましょうね。
はい。
で。
本日3月28日のNHKラジオ「上方演芸会」は、
『Wヤング・平川幸男さんを偲んで』であります。
なので、それにちなんで平川師匠の思い出を書き残しておきたいと思います。
あれは2013年、NHKラジオの「上方演芸会」静岡県三島市での収録。
Wヤング師匠と初めてお会いした日でありました。
今いくよくるよ師匠とも初めてお目にかかれて、私にとってはまさに記念すべき日。
収録も無事終わり、打ち上げへ。
私の右隣にいくよ師匠、くるよ師匠、向かいに平川師匠が座られました。
こりゃあ、どえらい席に座ってもーた。
緊張でお酒も料理も味がせんぞい。
そしたらよ。
ガチガチになってる私を見かねたのか
隣に座っていらしたいくよ師匠が、
「飲みよし、飲みよし」言うて、ビールを注いでくださるではありませんか。
グラスが空いたら、またすぐ
「飲みよし、飲みよし」言うて注いでくださるのです。
しかも
「いつから漫才、書いてんの?」とか「今まで誰に書いたん?」
とか、話題までふってくれるという……
こんな師匠、おるかね?
ここにおった。
誰もがいう、『いくよくるよ師匠、超絶優しい説』を目の当たりにした瞬間でした。
あの頃、
「いくよ師匠は、人にニックネームをつけるのが得意」っていうノリがありましてね。
私も以前テレビで、いくよ師匠が後輩芸人に絶妙なニックネームをつけていくっていう企画を見たことあって。
その打ち上げの席で、いくよ師匠にビールを注がれてポーッとなって、グーっと飲んで、ポーッとなって、グーッと飲んでを繰り返すうち徐々に緊張がほぐれてきた私。
つい
初対面のいくよ師匠に言うてしもたんです。
「いくよ師匠、私にもニックネーム付けていただけませんか」
つて。
おい。
ハメはずしやがったな。
だから酒はこわいってんだよ!!
言うてしもてから、あれ?わい、何を口走ってんや?流石にそれはちゃうやろ〜!と冷や汗が出そうになった途端、いくよ師匠はニッコリ笑っておっしゃった。
「よっしゃ!!」
え!……
「な〜にがええかな〜〜〜」
と私の顔をまじまじ見ながら
「ほんなら、『はるか』でいこか」
当時、全盛期だった綾瀬はるかの『はるか』を命名される私。
ここへすかさず入って来られたのが
平川師匠でした。
平川「はるか?」
いくよ「そやで」
平川「ハリセンボンの?」
いくよ「綾瀬やがな!」
くるよ「どやさ!」
ちょ、待ってくれろ!
なにこの、黄金のパス回し!
いくくる師匠と平川師匠が、あたいをネタにして掛け合いしてはるんやけど!
はっはーん、さては、これ……
夢やな?
この後、パッと目が覚めて、はあああああ……のやつやな?
「はるかちゃん、飲みよし!」
いくよ師匠の声で我に返る。
ゆっめ〜じゃない〜あれもこれも〜〜〜
フフフンンフンフンフン〜〜〜♪
毎度の歌詞うろ覚え。
ほらね、「大物ほど腰低い」説、立証。
腰低いというか、それはもう、
天性の優しさ。
感動の心持ちで楽しい宴が続く中、
平川師匠がおっしゃったのです。
「はるかちゃん、またWヤングの漫才も書いてな」
って。
マジですか。
そやけどサービス精神旺盛な師匠のこと、社交辞令ですやんね〜?と思ったら
「はるかちゃん、電話番号教えといて。またネタの相談するかもしれんから」
マジですか。
電話番号を聞かれるということは、
ほんまにお仕事のオファーが来るか
それとも
口説かれてるか。
↑こら。
で、そこから番号交換ってなったのだが、師匠から何回かけてくださっても私のケータイが鳴らない。こちらからかけても発信せず。翌日わかったのだが、前日、機種変更したばかりの私のケータイがなんと「機内モード」になっていて、電話機能がストップしていたのでした。なぜかお互い発着履歴も残らなくて、なんでやろ〜?って言い合って交換できずに終わってしまったのでした。今思えば私が機転を利かせてメモなり何なりを渡すべきであった。これは今でも後悔のたね。
そして打ち上げも終わり、店を出てホテルの部屋に引き上げる前にみんなでコンビニへ寄った時のこと。
お茶やらお菓子やらまだ飲み足りん人はお酒やら、それぞれが買い物ををしていた時に……
不意にカゴが重くなって、ハッと見たら平川師匠が缶ビールを私のカゴにーポイポイ入れとるんですわ。
「あっ!師匠、何してはるんですか」
「はるかちゃん、まだ飲み足りへんやろ?」
と、いたずらっ子のような笑顔の平川師匠。
「けど師匠、こんなぎょーさん飲めませんよ」
「かまへんかまへん、遠慮しな」
ポイポイポイ。(まだ入れる)
「え、でも……」
「かまへんって。支払い全部、この人やから」
と指さした先は、いくくる師匠。
いくよ「うおぇーい!」
平川「よろしくね♡」
くるよ「どやさ!」
黄金のパス回し、再び。
おーいみんなー、静岡県の夜更けのコンビニでレジェンドたちがキャッキャ言うてるよー。私、それ真横で見てるよー。この仕事しててよかったよー(泣)
そしてこの後のいくよ師匠にまたびっくり。
「も〜、全員、もっといで」
とおっしゃって、結局うちら全員の支払いをしてくださったのでありました。
ホテルの部屋に戻って大量の缶ビールを眺めながら思いました。
ああ
今日はすごい夜だった、と。
↑語彙乏。
あれから時は流れて、平川師匠もいくよ師匠もあちらに旅立ってしまわれたけれど、あの夜のことは私の胸に大切な思い出として今もあります。
優しかった師匠方のこと、ずっとずっと忘れません。
あと、関口宏ポーズのテングザカリも忘れんからな。
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