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宇都宮さん、都知事選なのに何故わざわざ九条?④

横田基地に限らず、在日米軍基地全体の問題を、そして東京都として沖縄と連帯する。大いに結構。横田基地に米軍オスプレイが飛来するようになって、都民が、沖縄で起きていることが、日本人全体の問題であることに目覚める好機が、やっと訪れたようだ。

しかし、米軍機で、落ちるのは、オスプレイだけか? 有視界飛行を止めさせればいいのか? あなたの中で、日米地位協定の「根本的見直し」と「廃棄」は同じなのか? 僕は、翁長知事の時から現在につづく沖縄県知事室による(あなたがいう)「諸外国の地位協定との比較」に全面的に協力してきたが、あなたは今回この問題を公約に掲げるにあたって、ちゃんと精読したか?

国際比較から明らかになるのは、(あなたがいう)「より対等なもの」にすること。これには何の意味もないと、いうことだ。なぜか? 

諸外国では全て、とっくの昔に、完全な対等が当たり前、だからだ。

日本と同じ敗戦国のドイツ、イタリアを含む全NATO諸国、そしてフィリッピンまでもが、地位協定においてアメリカと完全に対等なのだ。

この対等性とは何か? アメリカに対して、逆のことができる、ということだ。つまり、彼らが、アメリカ本土に駐留したと法的に想定して、同じことができる、ということだ。

ウイーン条約に基づく外交特権と同じだ。異国に駐在する外交官が引き起こす事故の犠牲者にとって外交特権は不等に見えるが、外交官を置き合う二国間にとっては平等なのだ。事故は起きる。事故の発生を完全に防ぐことは保証できない。しかし、両国が、事故の法的な処理、そして事故をできるだけ抑止ための教育・内規等の方策への真摯さは増すはずだ。なぜなら、「明日は我が身」だからだ。

上記の国々は、自国の軍を、共同訓練等で、米本土に駐留させた場合、公務中の事故について米側は裁判権を放棄する対等だからだ。繰り返すが、フィリッピン軍でも、だ。当然、米軍機は、住宅地や学校の上空を飛ばない。なぜなら、アメリカが米本土で同盟国軍に許さないことを、米軍はそれらの国でできないからだ。

上記の国々だけでなく、アメリカの戦争の直接の戦場になっているイラクとアフガニスタンでも、そうだ。僕は、この二つの国、つまり、米軍が出ていけば明日転覆する、米軍駐留への依存度が日本より格段に高い国家の高官と一緒に仕事をする機会に恵まれたが、「横田空域」の存在を彼らに理解させることは、難儀を要する。このような紛争国にとっても、「横田空域」は、概念として、ありえない、からだ。

オスプレイだけじゃない。秘密裏に緊急発進する米特殊部隊ヘリも、ドローンも、特殊部隊を救出に行く緊急軍用ヘリも、すべて、被駐留国の事前許可制である。それらが堕ちたら、発信を許可したその国家の責任になる。だからこそ、米軍の全ての行動を、その国家の基準に従わせる。これを国家主権という。

だから、宇都宮さん。日米地位協定を変えることは、簡単なのだ。イタリア、ドイツ、そしてフィリッピンと同じにしろ、と迫るだけ。これで済むのだ。僕は、アフガニスタンで米の占領政策に関わり、その後も米軍、特に陸軍と一緒に仕事をする機会に恵まれているが、彼ら自身が、日米の「非対等性」を異例だ、と思っているのだ。

じゃあ、なぜ、今まで、何も変わらないのか。日本側の問題である。それも、歴代の日本政府というより、この問題に誰よりも敏感でなければならない野党などの対政府勢力、リベラルな市民の問題である。なぜなら、そういう諸外国で、現在の地位協定の法的対等性を生んだのは、事故を契機に粘り強く展開した市民運動だからである。

日本もやっている! と、あなたも、あなたの支持者も言うだろう。違う。やっていない。何も。なぜなら、(あなたの公約でいう)地位協定の「根本的見直し」と「廃棄」は、完全に別物だからだ。

地位協定の廃棄、つまり、駐留米軍の完全撤退。これは、近代の地位協定の歴史上、数少ないが、起きている。事故・事件による対米感情の悪化が根底にあり、1992年に火山の噴火で基地が使えなくなったことを契機に「廃棄」を実現したフィリッピン。日米のよりはるかに被駐留国の主権が盛り込まれていた地位協定に更に主権を要求し、更新の交渉がアメリカと決裂したイラク。これも、日本の沖縄でのものより規模も性質も格段に凶悪な駐留米軍による事件が立て続けに起きていたイラクの国民感情が根底にある。いずれの国も、その後、国際情勢を鑑み、主権国家の判断と、主権が完全に米軍を支配する内容(被駐留国による完全な許可制)を条件に、米軍を呼び戻している。

つまり、地位協定の「廃棄」は、天災地変か、筆舌に尽くしがたい凶悪な事件、それも連続する発生がないと、実現はしない。つまり、神頼み、だ。

はっきり言おう。日米地位協定の「廃棄」、つまり日米同盟の廃止は、(僕も願う)神頼みなのだ。少なくとも、都政の政策、そして、あなたが当選したとしても、神頼みを公約することは、ただの無責任な吹聴である。

あなたが約束するべきは「根本的見直し」だけである。オスプレイをやめさせることなんかじゃない。米軍機のすべての運用を、日本の安全基準に従わせる「対等性」である。

あなたの支持母体である、護憲派勢力に、そして、9条の護憲を掲げたあなた自身に、これができるか? できるわけがない。説明する。

アメリカと、地位協定で対等になるとは、どういうことか? 地位協定とは、軍事に関するものである。その対等性とは、両国の軍事の対等性である。まず、ここ。護憲派に、概念として、これが呑めるか?

加えて、、そして述べたように、日本には、国際法に則って、自衛隊を含む国家の実力がおかす国際法上の違反行為を立件する法体系そのものがない。国際法が国家に義務付ける、つまり個人による犯罪よりずっと大規模で凶悪な国家による違反行為を命じた者を起訴する法がない。その象徴が、国外犯規定。自衛隊隊員個人による業務上過失を裁く法もないのに、日ジブチ地位協定のように相手国に裁判権を放棄させ、フル武装の自衛隊を海外に駐留させる異常。このとんでもない非人権的行為を国民にスルーさせ、法整備を阻止してきたのは憲法9条であることは、既に説明した。

もし、日本政府が、地位協定を対等にせよ、とアメリカに迫ったら、米側の交渉官は、こう言うだろう。「ドイツ、イタリアなんかとは既にそうしているし、フィリッピンにさえ認めていることだから、まあ分かるけど、お前のところ、無法だろ? そんな国に対等性を認めるわけないじゃん」。

宇都宮さん、おわかりか? 憲法9条を維持する限り、何も変わらない。神頼みするしか。

今この瞬間、横田空域を日本の許可なく自由に浮遊する危険な飛翔体。それらが落ちても、日本のリベラル系メディアでさえ「墜落」とも報道できず、沖縄で起きたように、市民の命の安全のために駆けつける警察・消防・救急の現場が、米軍によって封鎖される。繰り返すが、こんなこと、どんな親米国でも、ありえないのだ。

都民の頭上にこの瞬間に存在する脅威。この除去は都政の早急の義務である。僕は、米軍上層部との縁故をフルに利用して、新しい東京都知事に同行し、米軍横田基地の最高司令官と、都民の命と安全の大義を交渉することを、ぜひお手伝いしたい。心からそう願っている。

しかし、その都知事は、9条護憲という交渉の最大の障害を公約にするあなたではない。絶対に、あなたでは、ない。


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