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夢の中の人

平日昼間の表参道。僕の品格には似つかわしくない場所だ。

周りを見渡せば、かっこいいビジネスマンやきれいなOLさん、オシャレなマダム。その中に一人、真黒なバンドTシャツを着た自分。キョロキョロするのも恥ずかしいくらいだ。

だがこんな時、僕にはとっておきの作戦がある。そう、飲んでしまうのだ。

麻衣と優佳が現れる前にビールを二杯たいらげてしまった。

「遅くなってすいません。あれ?もう飲んじゃってます?w」

「ああ、ちょっとね。エヘヘ」

恵比寿の学校に通ってる優佳が、今日は授業が早く終わりそうだというので、麻衣と時間を合わせて東京までやってきた。

僕に薄い緊張感を与えるこの店を選んだのは彼女たちだ。僕ならきっと迷わず磯丸水産を選んでいた。


三人でワイワイやっているとカウンターに一人の女性が座るのが見えた。

その女性の後ろ姿に、僕はなぜか惹かれた。


じっとその女性を見ている僕に優佳が言う。

「ちょっと砂男さん。何見てるんですか。いくらキレイな人だからってジロジロ見過ぎですよ」

「あ、ごめん。いや、あの人ね。知り合いかもしれないんだよ」

「そうなんですか? 砂男さんにもあんなキレイな知り合いがいるんですね~」

「何を言ってるんだよ。君達も十分美しいではありませんかw」

「またまた~ww」



冗談を言いながらも僕は、カウンターに一人で座る彼女が気になっていた。

一人で優雅にランチか、と思っているとそうでもないらしい。本を出して何か勉強をしている。韓国語だ。

間違いない。

彼女だ。

僕は、席を立って彼女の元に行き話しかけた。

「あの、すいません。かし子さんですよね?」

僕の声に振り返る彼女。

「あ、はい。どちら様ですか?」

そう。かし子さんのことは僕が一方的に知っているだけだ。

言葉を交わしたことはあるが、かし子さんは僕の顔を知らない。

「あ、砂男です。ほら、あの。砂男です」

説明に困り、名前を連呼するだけしかできなかった。

伝われ。伝わってくれ。


「ああ、あの砂男さん」

やった!わかってくれた。

「はい! それです!その砂男です!いやー、こんな所でお会いできるなんて!光栄です!」

「あ、はい… 」

「勉強ですか?頑張ってるんですね!応援してます!」

「ありがとうございます… 」

「この辺りにお住まいなんですね。いやー、奇遇だなー、こんなところで会えるなんて。うれしいなー」

「そ、そうですね… あの、お連れの人達は大丈夫ですか?」

「ああ、あの子たちは気にしないでください。僕なんかいなくても二人で楽しんでますから。いやー、こういうのを運命っていうかなー。うん、そうだ。運命だ。間違いない!」

「いや… あの… 酔ってます? 私、ちょっと勉強をしたいので…」

「全然!まったくのシラフです!」


ウソだ。

ビールを二杯飲んだあと、オシャレな空気に押しつぶされそうになる恐怖をごまかすために、慣れないワインをガバガバ飲んでいた。

自分でもわかる。

昼間だというのに今俺は、ガッツリ、酔ってる。



「かし子さん、ちょっと待っててくださいね。今、あっち片付けてきますんで」

そういうと僕は、自分のテーブルに戻り、優佳たちに事情を話した。

「ということでさ、向こうの彼女、俺の知り合いなんだよ。こんなところで会えるなんて、もうこれは運命だから。俺、あっちで飲んでくるね」

「えー、何言ってるんですか。今日は私たちと飲むって約束ですよ。ひどーい」

「いや、君たちはさ、ほら、いつでも会えるから」

「なんですか、それ!なんで私達が軽く扱われなきゃいけないんですか!いつもジジイに付き合ってあげてるのはこっちの方ですよ!」

「なんだよ、ジジイって!優しくしてやってるのわからねぇのか!たしかにジジイだけどな!」

「大きい声出さないで!静かにしてよ。もうー知らない!帰ります!」

「おう!とっとと帰りやがれ!」



優佳と麻衣に別れを告げると、かし子さんの席に舞い戻った。

「もう大丈夫ですから。ワイン飲みます?」

「いえ、あの、もうこっちに来ないでもらえます? あの人達、ホントに大丈夫なんですか?怒ってますよね?」

「いえ、まあ、ガールズはいつもあんなもんです。勝手な連中でして」

「そんな… あんなにかわいい女の子なのに」

「あ、いや、そうじゃなくて。かし子さんの前ではもう、彼女たちなんて子供ですから」

「ひどい言い方しますね。砂男さんってそういう人だったんですか。とにかく、私は一人で勉強をしたいので」

「じゃあ、僕は横にいるだけにしますんで」

「ハッキリ言いますね。邪魔です。酔っ払いが横にいると気が散ります」

「あ、そうですか… でも…」

「私、帰ります。それじゃ」

「あ、そんな。じゃ、LINEだけでも」

「無理です」

「あ、じゃあメールアドレスでも」

「イヤです。もう、しつこい!」

「お願いです!教えてくれないと、僕、化けて出ますよ!かし子さんの枕元に!」

「勝手にしてください!」

「後悔しますよ!今日の夜、僕はあなたの夢に化けて出る!」



翌日。


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ほらね。

LINE教えてくれないと、

僕、明日も化けて出ますよ。


キャァ━(艸゚Д゚*)━ァァ★




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noteを始めて半年くらいになるのですが、CASSIEさんは初期のころから僕のnoteを読んでくれている希少な方です。

そのCASSIEさんの夢に僕が出てきたたらしいんですよ。

顔も見たことないし、連絡先も知らない方ですが、でも、夢に出てきたってなると、ちょっと気になるじゃないですか。

どんな感じで僕が出演していたのか。

内容を聞いたんです。そしたら・・・

「内容ですが、砂男さんはとても酔っていて、私の耳元で雑な囁きを繰り返すので『来ないで!』みたいな感じでした 笑 
砂男さんがnoteで仲良くしているという若い女性もその場にいて、その人にも絡んでいました 笑 
『静かにして!』みたいなやり取りが何度も... 笑 。
素敵な夢じゃなくてすみません💦 笑」

ということでした…

僕って、こんなイメージなんですね… (やっぱり)

そして

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という流れで今日の作品を作ってみましたw

でもたぶん、

今後も僕が彼女のLINEを知ることはないと思います。


きっと、ずっと。

夢の中の人。




CASSIEさんは、いろんな経験がある方で、彼女のnoteは単発で読むのもいいのですが、フォローして連続で追っていく事をおススメしたいです。

その中で、生活や仕事や成長の過程に大切なモノが散りばめられていることを感じられると思います。

今では見られなくなった記事にもたくさん良いお話があったので惜しいのですが、それも時間の流れですから。

CASSIEさんのnoteに限らず、今感じ取れるものは今つかんでおくのが大切ですね。


ということで僕の『 #あなたの推しnote教えて 』はCASSIEさんの記事で決まりです。

よろしくお願いいたします!


あと、これ。

参考までに、前に書いた僕とかし子さんの物語。

自信作なんですけどね。

note公式はこういうの見逃してるよ!もったいない!

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