見出し画像

なんだかんだで延長戦。ここからが面白い。

昨日の夜のこと。僕は動画配信を見ていた。

男三人が寄せられた相談に応えていくだけの番組。お色気コーナーがあるわけでもなく、テレビではTHE MANZAIが放映されているというのに、僕は一人パソコンの前に座っていた。

番組はするりとスタートした。雑談があり、相談があり、脱線がある。

「何の相談だっけ?」

途中繰り返されるこのセリフも、彼らの過去動画を何本か見た僕には違和感はまったくない。いつも通りの平常運転で、それがまた小気味がよくて気持ちいい。



動画を見ながら僕は考えていた。

” 僕はなぜこの男達にひかれるのだろう "

俺達


僕は男性に興味を持つことはあまりない。その理由は自分でもハッキリしてないのだが、たぶん『つまらない』からだと思う。どこがと言われても困るのだが、仕事モードが心と体にベッタリと染みついてしまったおっさん同士ではそれもしょうがないことだと解釈している。

それでもたまに僕の興味をそそる男が現れる。

今年で言えば 清水貴一 さんがその一人だ。文章そのものの魅力もそうだが、そこからあふれ出る”人間”に僕は興味をそそられた。すぐに彼に会いに行ったのだが、期待以上だった。(参考note:『この男を記憶セヨ!清水貴一』)


そしてこの年末にこの三人。

動画を見ながら思っていた。

” 僕はこの男達のどこに魅力を感じているのだろう ”

おらたち


一本目の塩レモンサワーの缶があいたころ、なんとなくわかってきた。

「そうか。この人達の魅力は大人としての覚悟なのかもしれない」


動画の中で『自分を開く』という話題があった。本名顔出しでSNSをやればいい、という内容だったのだが。

僕も含め多くの人が、SNSでは顔も名前も出していない。いろんな理由があるのだが、その理由のほとんどは『反応がこわい』で集約されるような気がする。

「こんな事を言ってることが知られたら会社の反応がこわい」
「こんな事を考えてることが知られたら家族の反応がこわい」
「こんな人とやりとりしてるのが知られたら彼氏の反応がこわい」

これ以外にも「悪口を言われる」「街で突然声をかけられる」なんていうのも反応の一つだろう。

そうした反応がこわい。


だがどうだろう、この三人の男達は。

実名顔出しでSNSをやり、動画では内容によっては敵を作るリスクもわかりながらハッキリと自分の意見を言う。覚悟ができている。そしてそれを「当たり前のこと」と言い切る。

僕を含め多くの人が配慮という大義名分のもと、相手の顔色を見ながら自分の意見を言う。空気を読むのが社会人としてのたしなみとされ、周りと同色になることで安心感を得ている。

しかし彼らは違う。

動画の中で語られたある女性が放った

「 It's not my style 」

という言葉。たったこれだけの言葉。だが、それなりの覚悟が必要な言葉。


彼らは自分を偽らない。「俺はこう思う」を正直に言う。そのままの自分をさらけ出している。オリジナリティこそが人間の魅力だと言う。

動画を見ているとわかるのだが、提起された問題によっては三人の意見が違うこともある。だが、それでも「俺はこう思う」をちゃんと出し、そしてそれを他の二人はちゃんと聞く。違いは否定されることなく、互いに認められている。

これが彼らにとっての『普通』なのだろう。

だが、その彼らの『普通』をフツーにできる人は多くはない。

それには覚悟が必要なのだ。

その覚悟が、今のご時世なかなか難しい。

では彼らがなぜ正直でいられるのかといえば、これは僕の推測でしかないのだが、

それはこれまでずっと覚悟してきたからだと思う。


動画では『プロの定義』についても語られた。

「プロとは、素人から見ると魔法にしか見えないことをやってのける人」

という話があったので、僕は「そうか、才能のことだろうな」と思ったのだが違った。

「それは訓練でしか到達しえない境地」

訓練。積み重ね。なんて地味な結論。

だが、そうなのだろう。

今の自分はこれまでの自分が作り上げて来たもの。

この三人の『普通』も、きっとこうして作り上げられてきたのだろう。


僕が魅力に感じているのは、

この三人が今『背負っている大人』であり、

大袈裟に言えばこの三人のこれまでの人生なのだと思う。



さて、今回の動画配信は22時で終わる予定だったのだが。

22時から延長戦が始まった。これがいい。

それぞれ特異なオリジナリティを持つ三人だが、彼らから共通して感じるのは、人への愛情だ。

愛情の話になるとその具体的な方法には違いがあれど、グッとまとまり力強さを感じる。

前回もそうだったのだが、今回もこの延長戦は見所の一つだと思う。



僕も彼らと同年代でもう青春とは言える歳ではないのだが、残念ながら彼らほどの大人にはなれなかった。

だが、まだ試合は終わっていない。途中何度もダメだと思いながらも、なんだかんだで9回裏に同点に追いついた。

さあ、ここから延長戦。面白くなる。






前回動画のレビューはこちら↓

#上田豪 #田中泰延 #前田将多

#ショートショート   #小説 #短編 #短編小説 #超短編小説 #ドキュメンタリー #実話 #コラム #エッセイ

いいなと思ったら応援しよう!