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志摩市民が考える人がいない志摩スペイン村が潰れない理由

 この文章を読むにあたっての注意点です。

  • この文章はできるだけ信頼できる情報を元に作成していますが、あくまでも素人の考察であり、間違った情報が含まれている可能性があります。

  • すべての情報を鵜吞みにせず、知識源とされる際は、ご自身で必ずデータを確認してください。

  • タイトルに「志摩市民」と入っておりますが、志摩市民の全員がこのように考えている訳ではありません。

 以上の点を留意した上でお読みください。

かなり文章が長くなってしまったため、潰れない理由の考察の結論だけをいち早く知りたい方は、目次からまとめに移動するとすぐに知ることができますのでご利用ください。ですが、すべてを読むことを推奨いたします。(個人的に見て欲しい部分はあとがきです)



0. 人がいないスペイン村

志摩市民の自分はもちろん志摩スペイン村に行ったことがある。志摩スペイン村に行った記憶には、いつも人はいない。アトラクションで列に並んだ記憶はない。

悲しいことに志摩スペイン村が世間で話題になるときは、いつも人がいないというところだ。人がいないことを宣伝し、SNSで話題になった。

また、人がいないことで、コロナ流行中には、志摩スペイン村を修学旅行先に選ぶ学校が増えた

多くの方々が最初に志摩スペイン村を知るきっかけになったのは、周央サンゴ様の配信内の紹介であろう。ここでも人がいないことを強調されていた。

どうして人がいないのに潰れていないのか?その理由を志摩市民が考えてみる。

1.志摩スペイン村ができた理由

志摩スペイン村は公式ホームページによると、

伊勢志摩にある複合リゾート「志摩スペイン村」
“こころの再発見”を求め、新しいライフスタイルを提案。


きらめく太陽、紺碧の海、豊かな大地・・・。
そんなスペインのおおらかな気風に包まれて、忘れかけていたゆとり、遊びごころを取り戻す・・・。
そんな“こころの再発見”のためのリゾート空間が、テーマパーク「パルケエスパーニャ」を中心に、
ホテル、天然温泉をあわせもつ複合リゾート「志摩スペイン村」。

誰もが楽しみながらスペインの豊かな心とふれあえる空間づくりをめざし、人と自然の調和・共存を大切に、
将来にわたり夢いっぱいのリゾート構想をどこまでも大きく広げていきたいと考えています。

志摩スペイン村

としている。

では、志摩スペイン村ができた背景にはどのようなことがあったのか見ていこうと思う。このことについて、鍛冶 博之 氏の『テーマパーク経営と日本社会への影響──志摩スペイン村の場合──』には、

 遊園地やレジャーランドは概して遊戯機器の面白さや迫力に依存した子供向けの施設である場合が多い。そのことはたいていの遊園地にジェットコースターが設置され人気施設となっていることからも窺える。一方 TDL をはじめとするテーマパークは,旧来から存在した遊園地やレジャーパークとは異なり,特定のテーマに基づいて施設全体を構成し,子供だけでなく大人も巻き込んで楽しめるエンターテイメント空間の創造を目指した。つまり徹底した非日常空間の形成を目指したのであり,その先駆的存在となったのが TDL だったのである。

 TDL は開園後,当時の生活者の強力な支持を受けて集客数を伸ばし,日本人の新たなレジャー施設として日本社会に定着した。こうした都市型テーマパークの代表であるTDL や地方型テーマパークの代表であった長崎オランダ村(現ハウステンボス)の成功を受け,日本各地にテーマパークが建設されていくことになった。特に過疎化や高齢化に直面していた地方では,テーマパークは地域振興や観光資源としての役割を期待された。さらに 1987 年には総合保養地域整備法(通称リゾート法)が制定され,リゾート開発に伴う自治体への助成制度や税制上の優遇措置が認められたことで,全国各地でリゾート構想が持ち上がり,その中核施設としてのテーマパーク建設が加速した。結果としてリゾートブームに便乗して全国各地に多種多様なテーマパークが過剰に建設された。本稿で取り上げる志摩スペイン村もこうした流れのなかで建設が進められたテーマパークのひとつであった。

鍛冶 博之『テーマパーク経営と日本社会への影響──志摩スペイン村の場合──』

と書かれている。このことから重要なのは、テーマパークは子供も大人も楽しめることを目指していたこと、実際にテーマパークが人を集めることに成功しており、地方復興の役割として、テーマパークがよいのではないかと考えられたことである。

そして、総合保養地域整備法から自治体がリゾート構想を考え、そこにテーマパークが組み込まれたことである。

志摩スペイン村もその中の一つであるとしている。では、自治体側の立場について書かれている文章を見てみたいと思う。東 達二 氏の報文『三重サンベルトゾーン構想の推進と地域振興』の” II. 国際リゾート「三重サンベルト」構想 ” によると、

 21世紀に向けて, 高齢化, 国際化, 労働時間の短縮, 余暇時間の増大といった流れのなか,心の豊かさや質の高いヒューマンライフを求めて, 国民のニーズは多様化しかつ高まりつつある。こうしたなかで本格的な余暇時代に対応した, 新しいライフスタイル創造の場を整備するため,「総合保養地域整備法」が制定され, 民間活力を活用して, 新たな地域振興策が図られようとしている。

 三重県は地理的には日本のほぼ中央に位置し, 中部圏と近畿圏の結節点にあり, 大都市圏に近い優位性を擁しており,また, 伊勢志摩国立公園, 吉野熊野国立公園をはじめ, 美しい自然と古い歴史・文化に恵まれ, 既存のリゾート地域としての一定の集積もあり, わが国有数の観光地としても知られている。

 本県南部の「伊勢志摩・東紀州」地域は, 第2次三重県長期総合計画(昭和58年度策定・70年度目標)においても, 国民的, 国際的な休養・保養基地として整備を図る「サンベルト地域」と位置づけている。この計画の目的は, 恵まれた自然環境, 優れた歴史・文化的資源, 豊かな農林水産資源を有するサンペルト地域を, 総合保養地域整備法の適用を得て特定地域として設定し, 民間事業者の活力と創意・工夫を活用しながら, 21世紀に向けて海洋性を基調とした国際的なリゾートゾーンとして整備し, 当地域の活性化と, あわせて県土の均衡ある発展を図ろうとするものである。

東 達二 報文『三重サンベルトゾーン構想の推進と地域振興』

整理すると、そもそもサンベルト計画は、三重県の第二次長期総合計画から考えられた話であった。その後に、総合保養地域整備法(リゾート法)が生まれ、ちょうどサンベルト計画と総合保養地域整備法の目的が一致していたということである。そして、ある程度は、リゾート地としての素質があったことがわかる。

社会背景を考えると、法律ができた時期は、バブル景気(1986年12月から1991年2月頃)であり、多くの人々が娯楽に投じるお金を持てるようになってきたころである。

『三重サンベルトゾーン構想の推進と地域振興』の “5. 推進における課題と問題点” には、

リゾートの整備推進について, 三重サンベルトは全国第1号の承認であり, 全国注視の的である。ヨーロッパのリゾートに遅れること100年, 歴史, 文化の違う西欧型リゾートに学びながら, わが国独自の新しい形のリゾート構築が必要であろう。

東 達二 報文『三重サンベルトゾーン構想の推進と地域振興』

と書かれている。この時期に国内に西欧のようなリゾートとよべる場所が少なかったことを窺える。そのため三重県は、スペイン・バレンシア州に調査訪問団の派遣をしている。リゾート開発をするために学びにいったと想像する。

志摩スペイン村を開発した近畿日本鉄道 (以下:近鉄) 側の立場を見てみようと思う。『テーマパーク経営と日本社会への影響──志摩スペイン村の場合──』には、

 志摩スペイン村の誕生の背景には,終戦後から本格化した近畿日本鉄道(近鉄)に伊勢志摩地域の観光開発に向けた働きかけが大きく影響している。
 1946 年,伊勢志摩地域は国立公園に指定された。これを機に近鉄は観光開発の重要拠点として伊勢志摩の観光開発を積極的に進めていくことになる。
 (中略)
 近鉄による本格的な伊勢志摩地域の観光開発は 1960 年代後半からである。背景には1970 年に開催された大阪万博の来場者を伊勢志摩まで誘致することを目的としたことを挙げられる。(前略)1970 年 3 月には大阪・京都・名古屋の三大都市から賢島駅までの特急の直通運転を実現した。これにより大都市部から伊勢志摩への観光客を誘致する観光交通環境が大幅に整備された。また近鉄は特急乗入れに合わせて,関連会社とも協力してホテルの増築,旅館の新増築,別荘地やホテルの開発,マリンランドやスポーツランドの開設,観光船の新造などを進め,国立公園としての環境整備を加速させた。
 ところが大阪万博以降,伊勢志摩方面を訪問する観光客は伸び悩むようになった。(中略) 近鉄では 1970 年代以降,伊勢志摩のリゾート開発を一層進め人工観光資源の充実を図り,若年層やファミリー層を伊勢志摩に吸引でき,年間を通して楽しめるレジャー施設の建設が目指されることになった。志摩地域での大規模レジャー施設の設置は,1983 年に開園した TDL の驚異的な成功と新しいレジャー施設としてテーマパークの存在が注目されるようになり,日本各地でテーマパークの建設ブームが起ったことを背景に現実味を帯びてきた。近鉄は志摩半島を一大リゾート地として開発する構想を練っており,1988 年 2 月には三重県と国土庁(当時)に近鉄の社有地を中心とした志摩半島の開発計画を届け出ている。こうして志摩スペイン村は,1988 年に制定されたリゾート法に伴い策定された「三重サンベルトゾーン構想」の中核的施設として,三重県磯野町の協力を得ながら建設されていくことになった。

鍛冶 博之『テーマパーク経営と日本社会への影響──志摩スペイン村の場合──』

と書かれている。以上のことから近鉄側からすると、伊勢志摩地域は重要な観光地であることがわかる。また、伊勢志摩地域に来る人がどのような年齢層であったかというと、やはり (伊勢)神宮があることからも伝統的な日本の観光地というイメージが強く、比較的年齢層が高い方が多く来ることが多かったようである。近畿日本鉄道が2009年夏頃に発足した豪華特急列車の開発プロジェクトによる調査の傾向にも表れているらしい。

また、2000年代以降、メディアにパワースポットとして紹介されるようになり、若い層に来てもらえるようになったと考えられる。

そのことからも当時の近鉄は、ターゲットになる年齢層の拡大、伊勢志摩地域に観光客を呼び込むために、リゾート開発をすることを計画し、「三重サンベルトゾーン構想」に参加することになる。しかし、バブルが崩壊したことで、志摩スペイン村の計画は縮小する方向で、建設することになっていった。

以上のことが志摩スペイン村のできた背景を簡単に示したものである。私が重要だと思うのが、あくまでリゾートを開発することに重きを置いて開発されていることであると考える。志摩スペイン村は、どうしてもTDLやUSJと比べられることが多いが、それらはテーマパークに重きを置いているように感じる。

志摩スペイン村がリゾート地に重きを置いていることは、公式名が「伊勢志摩近鉄リゾート 志摩スペイン村」ということから読み取れる。また、メディアが報じるときにもよく表れていると感じる。志摩スペイン村が紹介されるときには、【複合リゾート施設 志摩スペイン村】と書かれることが多い。そのことからも志摩スペイン村はリゾートを重きに置いていることがよくわかると思う。

志摩スペイン村が衰退していった理由として、鍛冶 博之氏の『テーマパーク経営と日本社会への影響──志摩スペイン村の場合──』に複数書かれているが、個人的に大きく影響していると感じるのは、開園2年目に阪神淡路大震災が発生したことと、大阪にUSJが誕生したことであるように感じる。


2.志摩スペイン村が潰れない理由

本題である志摩スペイン村が潰されない理由について、考察していこうと思う。まず潰れない理由を考える。志摩スペイン村が潰れない理由は、インターネット上でさまざまな説がある。

主な潰れない理由として挙げられているのは以下のような内容である。

  • 経営の母体が近鉄グループホールディングスであるため。

  • 伊勢志摩国立公園のエリア内にあり、現状復帰にとてもお金がかかるため。

  • 集客力があるため。(2021年度、業態別集客ランキング、テーマパーク部門、入場者数第3位)

どの推察も潰れない理由になるような内容だと感じる。この中で近鉄が経営しているということが特に大きな理由であると考える。では、近鉄が志摩スペイン村を潰さない理由はなぜだろうか

赤字であることが多いレジャー施設をこれだけの理由で、伏見桃山城キャッスルランド、近鉄劇場および近鉄小劇場、あやめ池遊園地を閉鎖し、プロ野球経営についても撤退の決断はするが、志摩スペイン村を潰さない判断をするだろうか。

志摩スペイン村に使うお金を観光客が多く来る伊勢にまわすことや、潰さないにしても他の会社に委託することを決断してもよいように思える。そのことを考えると、近鉄が残すという判断を下した理由はまだあるのではないかと考える。近鉄が潰さないという判断を下した理由をもう少しだけ深く考察していこうと思う。

考察するにあたって、ある鉄道会社を取り上げる必要がある。その鉄道会社は、近鉄と同じ関西にある阪急電鉄 (以下:阪急) である。ご存知の方も多いと思うが、阪急の創業者である小林一三は、現在の私鉄経営にも通ずる鉄道事業で稼ぐ方法を日本で実行した第一人者であるとされる。そのことについて阪急の公式ホームページによると、

(前略) 阪神電車などのようにすでに発展している都市間を結ぶ鉄道と違って、梅田から農村地帯を経由して紅葉(箕面)や温泉(有馬)の観光名所を結ぶ路線ということで、「遊覧電車では利用者が少ないのではないか?」など、誰もが鉄道開業に対して消極的でした。

そんな周りの考えを覆すアイデアを思いついたのは、一三が池田と梅田の間の予定線を実際に歩いたとき。牧歌的な風景を見ながら、「こんな良いところに、どうして大阪の人間は住みたがらないのか?」と、当時、人口増加が著しかった大阪市内の狭い住居の暮らしと比べ合わせ、「郊外に住宅地を新たに作り、その居住者を市内へ電車で運ぶ」という、その後の私鉄経営の基礎となる考えに至ったのです。

阪急電鉄

と書かれている。つまり、鉄道の建設と同時に沿線に住宅の建築をすることで、沿線の住宅に住む人が移動するために鉄道が必然的に利用されるという仕組みである。

また、住宅も阪急が開発することで不動産事業としても阪急にお金が入ってくるという利点ももちろんあると考える。利用者を作り出すことができるというところから多くの私鉄がこれに準ずるような方法でビジネスモデルを展開していくことになる。

阪急といえばもう1つ有名な事業があると思う。宝塚歌劇である。阪急によると、

(前略) 1914年(大正3年)4月の初演時には、「宝塚少女歌劇」の舞台公演のみでは集客力は弱いと考えていた一三でしたが、初日の様子が新聞で好意的に紹介され、世間に広く知られることになり、初演は毎日"大入満員"という好調なスタートを切ったのでした。

その後も一三や制作・指導に携わる人たち、そして少女たちの熱い思いで興行は成長。「この楽しい演劇を一人でも多くの人に観てもらいたい」と思った一三は、宝塚に4,000人を収容する(旧)宝塚大劇場を完成させ、さらに東京、海外へと進出していくのでした。

阪急電鉄

と書かれている。多くの人を魅了する宝塚が公演される劇場は、宝塚駅が最寄り駅である。ここで注目して欲しいのが宝塚駅の位置である。

図:阪急電鉄. 「路線・駅」.

阪急の路線図を見ると、宝塚駅の位置は主要な都会(神戸三ノ宮、大阪梅田、京都河原町)から離れており、またどの路線の駅からも程よく離れているように感じる。

以上のことを組み合わせて考えると、平日は郊外住宅地から人を通勤、通学のために都会に運ぶことで鉄道利用者を作り出すことが出来ている。これでは、休日は通勤・通学する人がいないため、鉄道の利用者が減ることになる。

だが、宝塚劇場のようなエンターテインメント施設を設けることで、休日でも鉄道の利用を促すことが可能となっている。さらに、普段の通勤、通学では鉄道を利用しない、先ほど例に挙げたような都会に住んでいる人も阪急を利用してもらう機会を作り出している。

また、現在の大阪梅田駅にある世界初のターミナルデパートの阪急百貨店も郊外住宅地から離れた場所にあり、休日に訪れる人が多いことからその役割を担っていた部分もあると考える。

このように考察すると、人が住んでいる場所から離れている場所に訪れる目的を作り出し、平日、休日関係なく鉄道を利用してもらうという点をかなり考えられているように感じる。

(:阪急の公式ホームページでは、「小林一三が、鉄道の開業と共に展開した様々な事業は、私鉄経営のビジネスモデルの創造として語られることが多いですが、目指したのは、便利で環境の良い住宅に暮らし、デパートで買い物をしたり、観劇を楽しんだり、ゆとりある生活をする、現代に繋がる理想のライフスタイルの創造でした。」と書かれていることを紹介しておく。)

ここまでは、阪急について取り上げたが、近鉄についてみていこうと思う。近鉄は、阪急のビジネスモデルを参考にし、より広い地域で展開している会社だといえる。路線図を見てみよう。

図:近畿日本鉄道. 「路線図」.

近鉄の営業路線は私鉄の中で日本一の長さである。大阪府、京都府、奈良県、愛知県、三重県に路線が伸びており、路線図を見ても阪急と比べ、情報量が明らかに多いことからもとても広い路線を持っていることがわかると思う。近鉄の一番長い区間は、京都駅から賢島駅である。この区間の全長は、195.2kmであり、四国で一番長い川である四万十川が196kmであることからもとても長いことがよくわかると思う。

近鉄の鉄道の稼ぎ方は、阪急に酷似しているが、相手にしている府県が多い。平日は、主に大阪府に通勤・通学をする奈良県、三重県に住んでいる人、愛知県に通勤・通学をする三重県に住んでいる人を運ぶ。

休日は、逆に大阪府や愛知県に住んでいる人を観光地が多い奈良県、三重県に運ぶことになる。京都府は、大阪府、奈良県と平日、休日のどちらとも相互に人の移動があると考える。

以上のように考察した上で、本題である近鉄が志摩スペイン村を潰さない理由を考えようと思う。改めて、路線図の都会の駅(大阪難波、京都、近鉄名古屋)の位置と、志摩スペイン村の現在の最寄り駅である鵜方駅の位置をみると、とても離れていることがわかる。

鉄道にかかる運賃は、皆さんもご存知の通り遠くに行けばいくほど、高くなる。もちろん、近鉄の料金体制もそのようになっている。近鉄の伊勢志摩方面に行く列車の中で主力である「しまかぜ」の料金を見てみよう。

近鉄. 停車駅相互運賃表(大阪難波発着)

例として、大阪難波発着のものを載せた。この運賃表をみると、鵜方駅までは運賃が上がっていることがわかる。京都駅から賢島駅、近鉄名古屋駅から賢島駅の運賃表であっても同じである。

つまり、鵜方駅まで乗るお客さんがいると最大値の運賃が手に入るということになる。

しかも多くの人が伊勢志摩エリアを訪れるときは、特急列車を利用する。特急列車は、全車指定席のため指定席の料金(特急券)が必要になる。特急券は、距離が遠くなればなるほどかかる料金が上がる。

また、特急列車の中には特急券にさらに追加して、特別車両券(観光特急「しまかぜ」・特急 「ひのとり」などが該当)が必要になる場合がある。乗車券の料金に足してさらにお金を取ることができるということになる。

以上のことを書くと、「特急列車に乗ることは損しているのではないか」と感じるかも知れないが、長距離移動をすることを前提に考えると、絶対に座れることが保障されることはとても大きな価値があるように思う。

また、特別車両券は料金以上に価値を感じることができると思う。近鉄はサービスを重視しているように思える。

戦後復興期には、買収や合併により路線を拡大する中で、特急ネットワークの構築にも注力しました。1947年に日本の民鉄で初となる座席定員制(1949年からは座席指定制)の有料特急を上本町-名古屋間で、翌年には上本町-宇治山田間で運行開始。当時、鉄道は大変混雑しており、近鉄は「赤ちゃんを連れたご婦人でも、安心して快適に座って行ける旅」を提供することで、今後の鉄道輸送サービスの在り方を示しました。1958年には、世界初の2階建て特急電車を導入したほか、列車公衆電話やシートラジオの設置、おしぼりサービスなど、日本で初となるサービスを次々と実施しました。

近鉄グループホールディングス株式会社

以上のことからも昔からサービスで他の競合と勝負してきていることがわかる。逆の考え方をすると、移動時間が長いからこそさまざまなサービスを提供できるとも言える。

以上の運賃の最大値を得ることができるというのは現在、鵜方駅がスペイン村の最寄り駅となっているため言える理論でもある。昔の最寄り駅は、今でも特急列車が止まる志摩磯部駅であった。志摩市に人を呼び込むことに焦点を当て考えると、さらに志摩スペイン村を存続させている理由が見えてくるように感じる。

では、志摩市まで人を呼ぶためには、どうすればよいのか考えてみる。志摩市には、都会が持っている要素が少ないため、観光地として人が訪れるような場所にする必要がある。観光地が持っている要素として、美しい自然の景観や歴史的な名所、伝統と文化、レジャーアクティビティ、リラックスした雰囲気などがある。

志摩市は、美しい自然の景観、伝統と文化、レジャーアクティビティを持っているように感じる。まず、志摩市の美しい自然の景観、伝統と文化の要素として、よく言われるのは、リアス式海岸による景観と、真珠の栽培、海女小屋といったものである。レジャーアクティビティは、サーフィン体験やカヌーなどができる。

だが、これらを目的に訪れる人は、志摩市の隣である鳥羽市で体験する人が多いように感じている。鳥羽には、レジャーアクティビティはもちろんでき、リアス式海岸を見ることができるクルージングや、ヘリコプターで遊覧するといったプランがある。 

また、ミキモト真珠島という場所があり、真珠についての博物館がある。そして、海女小屋も鳥羽にあり、海女の文化も触れることができる。さらに、日本一の生きものの飼育種類数を誇り、日本で唯一ジュゴンを飼育している鳥羽水族館がある。

都会の駅から見ると、鳥羽観光の入り口である鳥羽駅は、鵜方駅よりも近い位置にある。要するに、都会に近い場所にあり、真珠を解説してくれる施設や海女小屋があるといった観光するものが被っており、雨天でも楽しめる水族館があるという上位互換的な地域が近くに存在してしまっている。

志摩市の歴史的な建造物は、聖武天皇の詔により日本各地に建立された国分寺のうちの一つである志摩国国分僧寺の後継寺院の志摩国分寺がある。また、国の重要文化財指定されている銅造如来坐像がある和具観音堂などがあり、重要無形民俗文化財も3つあるのだが、近くに(伊勢)神宮があるためどうしても印象に残りづらいように感じる。

レジャーアクティビティに志摩スペイン村が入るのだが、志摩市において、志摩スペイン村以外のレジャーは、自然を楽しむものが多く、夏が本番であるケースが多い。自然アクティビティは、体力が必要であることや、汚れることを考えないといけないことが多い。季節によっては、体験することがそもそも厳しいことが多いと考える。

志摩スペイン村は、夏以外にも人が来てもらえるような行事を展開することができる。老若男女が楽しめるように作られているため、自然のアクティビティ以外を目的として訪れる場所として十分な施設であると考える。

つまり、志摩スペイン村は、通常は志摩市に観光で訪れない人を連れてきてくれるような施設であると考える。このことは、周辺の観光施設や、ホテル、旅館にも大きな恩恵をもたらすように考える。実は、ホテル志摩スペイン村以外にも近鉄グループのホテル・旅館があり、志摩市には、全部で7か所ある。近鉄の囲い込みが成功しているように思える。

これは当初の志摩スペイン村ができた理由についての近鉄側の狙いとして出てきた理由にも繋がっている。

以上のことから志摩スペイン村は、

  • 幅広い年齢層のさまざまな人々に来てもらうための目的地として機能している

  • 現在は運賃の最大値を取るための重要な施設となっている

このことが近鉄が志摩スペイン村を潰さない理由であると考える。


3.志摩スペイン村のこれから

近鉄にとっての志摩スペイン村は、これからどのようになっていくかを推測していく。志摩スペイン村、ないしは、伊勢志摩地域の重要性はこれから益々上がっていくと考える。

理由は、リニア中央新幹線 (以下:リニア) の存在である。リニアは、執筆中の今のところの予定では、主に東京、甲府、名古屋、奈良、大阪を結ぶと考えられている。あまり触れていなかったが近鉄は、大阪と名古屋を結んでおり、東海道新幹線と競合している。

主に、キタ (大阪、梅田エリア) に停車駅があり、値段は高いが早く移動することができる東海道新幹線、ミナミ (道頓堀近隣のエリア) に停車駅があり、値段が安く、くつろいで移動することができる近鉄特急という区別をすることができる。

事実として、ミナミに行くときであっても東海道新幹線を利用して難波に向かった方が近鉄より所要時間が短い。では、近鉄の方は、誰も利用しないのかと思われるかもしれないが、とても混んでいることが多いように感じる。特に最近デビューした名古屋と大阪を結ぶ列車である「ひのとり」は、いつも混んでいるように感じる。

リニアが登場すると、大阪と名古屋間が最速約30分になるとされている。近鉄に速度の優位性は元々ないが、時間の差がさらに拡大することは多少は利用者に影響があるように感じる。リニアの途中駅に奈良県と三重県が立候補している。どちらも近鉄がかなりの影響力を持っている県である。JRの影響力がその地域の駅周辺の地域において強くなることは確実であると考える。どの程度影響を与えるか考えていこうと思う。

三重県の候補地は3つ存在しているが、どの場所もリニアの恩恵を受けるのは、亀山市とその周辺の地域 (津市、鈴鹿市) の車を持っている人だけであると考える。亀山市は、JRの駅しか存在していないことから近鉄の日常的な大阪、名古屋への輸送客の影響は少ないのではないかと考える。影響が大きくあるのは、東京方面に行くときであると考える。

奈良県が候補地として、挙げている3つの場所はどれも奈良県の中心地 (奈良市付近) であり、かなり近鉄の路線に近い位置に駅ができることが予測される。普段の通勤、通学で、わざわざリニアに乗って大阪に行く人は少ないと考えられることから大阪への輸送客の影響は少ないのではと考える。三重県と同様に、影響があると考えられるのは、東京方面であるように考える。

現在は奈良市から東京に鉄道を使って行くことを考えると、京都に行ってから新幹線に乗るといったルートがオーソドックスのような気がする。近鉄は、奈良と京都を結ぶ路線をもっているため、奈良市付近に東京に直通するリニアが止まる駅ができることで、この京都にいく利用者は減ると考えられる。

だが、おそらくリニアの方が新幹線より値段が高いことや、新幹線しか止まらない場所もあることからこの需要が完全に0になる訳ではないためそこまで、深刻なダメージになることはないように考えている。

リニアは、新大阪駅に乗り入れることから間違いなくキタエリアの発達が加速していくことにつながる。実際にキタエリアは、再開発の真っ最中である。近鉄の本拠地であるミナミエリアの影響力が下がることは間違いないだろう。不動産事業の悪化につながることになると感じている。

以上のことも繰り返しになるがあくまでも素人の予測であり、実際はどの程度、近鉄の利用者に影響が出るかわからないが、近鉄の利用者が多い地域に新たな競合相手が出現することは間違いない。だが、リニアができるおかげで、関東地方からの観光客を呼び込みやすくなることにも繋がると考えることができる。

実際に、鈴鹿市長が近鉄に対して、リニア三重県駅に延伸をするように依頼することを考えていることが分かっている。実際にその申請をするのか、近鉄がその申し入れを受けるかどうかは現段階では分からないが、近鉄の路線がリニア駅と繋がることで、三重県の主要な都市にアクセスしやすくなり、観光の利便性は確実に向上するだろうと考える。

また、大阪~名古屋間といった大都市圏同士を結ぶ路線の利用者が減っていくとしたら、カバーをする役割の場所が必要になってくる。そのような場所は、JRの影響を受けにくいことを考える必要がある。

そのように考えると、伊勢志摩地域の重要性が上がると考える。JRに対して優等列車でスピード、列車本数、快適性が圧倒的に勝っているのは三重県内である。また、鳥羽から先は、JRの路線が伸びていないことから志摩市内においては独占状態である。このことから志摩スペイン村の将来に対しての重要としているのではないかと想像することができる。


4.まとめ

結論として、志摩スペイン村が潰さない理由は、

  • 経営の母体が近鉄グループホールディングスであるため

  • 伊勢志摩国立公園のエリア内にあり、現状復帰にとてもお金がかかるため

  • 集客力があるため

といった理由はもちろんある。

だが、近鉄が潰さないといった判断をしている理由として、

  • 都会から遠く離れた田舎に、さまざまな人がターゲットになる施設を造り出すことができている。

  • 現在の志摩スペイン村の最寄り駅 (鵜方駅) まで人を運ぶために列車を走らせることで運賃の最大値を得ることができる。

であると考える。


5.あとがき

ここまで、文章を読んでくれてありがとうございました。想像以上に文章が長くなってしまいました。また、読みづらい箇所もあったと思います。この文章を最後まで読んでくれたということは、それなりには志摩スペイン村に興味がある、気になっている方だと推察します。

この文章がインターネットに載るのが2024年のことから志摩スペイン村30周年のことから気になった方や、にじさんじ様とのコラボやヤバイTシャツ屋さん様のコラボ、ポケモン様ならびにGAME FREAK様のコラボで気になったという方も読んでいると推測しています。

どのような理由であれ、志摩スペイン村に興味を持っていただいてありがとうございます。それだけで地元の一人からすると、とても嬉しいです。

個人的なお願いをいうと、志摩スペイン村以外にも観光して頂きたいと思っています。ぜひ観光三重や観光サイトなどを活用して行ってみたい場所を探して欲しいです。(見出しの9番目にURLを載せています)

話が少し変わりますが志摩市に限らず、どの観光地も今、重大な局面を迎えているように感じています。インターネットが発達し、文章、写真、動画が簡単に載せられ、拡散することができるようになりました。

それは、宣伝や広告をする側(来てほしい側)からすると、具体的にその地域について伝えることができるようなり、知りたい側からすると、直ぐに知りたいことを具体的に知れるようになりました。

ですが、SNSやブログ、動画サイトで見たら満足してしまい、そこで終わってしまうことが増えているようにも感じています。実際、インターネットで見るだけというのは費用対効果が大きく、時間の節約になるといったように考える人が出てきてしまうことは仕方がないところではあります。

また、将来は、VR、AR、MR、XRなどが発達してくることが予測でき、より現実に近い擬似体験ができるような環境が整っていくことでしょう。(志摩スペイン村はメタバースに参入しています)

なので、紹介や体験の情報を単に発信するだけでなく、どうやったら実際に来てもらえるかということをよく考えないといけない状況になってきていると感じています。

志摩市のようなアクセスが悪いと一般的に言われるようなところは、「実際に行かなくてもいいか」という思いになってしまう筆頭だと感じています。よって、さまざまな地域の多くの人に実際に来てもらい、志摩市に「また行きたい」と思ってもらうことがとてもとても重要だと考えています。

一個人の思いといたしましては、志摩市はまだ立地が悪いと言われる場所ではないと感じています。「大阪、名古屋からでも2時間30分くらいかかるのは遠い」という方が多いというか、9割以上の方はそうだと思いますが、大阪、名古屋という大都市圏からの特急列車で1時間に1本くらいは、乗り換えなしの列車で行けるようになっているというのは私はとても便利だと感じます。

大阪、名古屋からでも2時間30分程度かかることからかなりのローカル線で、使われている列車では快適に過ごせないのではないかと想像する方がいらっしゃいますが、どの特急列車も多くの方にとっては快適に過ごすことができるようになっていると感じています。(詳しい列車の設備は公式ホームページを見てほしいです) 特に、「しまかぜ」は移動を楽しむということにとても注力した列車だと思います。

{どうしても譲れない機能(Wi-Fiやコンセントなど)が付いてる列車がよいという方は「近鉄アプリ」を乗車当日に見ると、その機能が付いている列車を検索することができます。詳しいやり方は近鉄公式がこちらで説明しています。}

すべての近鉄の特急列車は窓が大きく造られており、景色を見ることにとても最適です。私は、列車から見える人の暮らしの様子がとても好きです。

散歩をしている人や、グラウンドで野球・サッカーをしている人、田んぼで作業をしている人、列車の存在に気づきこちらに注目、手を振っている人など、実際にその場所で暮らしている人の様子が一瞬ですが感じ取れます。

また、いつもとは違う場所から風景を見ることができることも魅力だと思います。そのような風景を見ていたらあっという間に着いてしまうように私は感じます。

「じゃあ多くの人が日帰りで行ける場所か」と言われればそれは難しいかもしれません。しかし、乗車している体感時間が短く感じる人やリラックスして車内を過ごせる人は存在するのではないかと思います。

私は前回のにじさんじ様とのコラボの際に志摩スペイン村を日帰りで行こうとしている人をSNSで見かけました。多くの人がホテル志摩スペイン村や周辺のホテルが取れなかったためであると思いますが、最低でも1泊2日をおすすめします。日帰りは、おそらく多くの人が「疲れた」や「遠かった」という印象が強くなってしまうと思います。

泊まった方がよいと言っているのは、その方が「志摩市にお金が落ちる可能性が上がるから言っているんでしょ?」と言われそうですが、そういった理由ももちろんあります。

それとは別に、伊勢志摩エリアの観光サイトを閲覧していると、伊勢までは日帰りで楽しめる場所といった特集が組まれています。しかし、志摩市が入っている行程は少ないです。(また、伊勢志摩の日帰りプランと書かれているのに、伊勢市内のスポットだけということがあります) そのことからも日帰りは、観光サイトがおすすめしていないといったことからも宿泊することをおすすめしています。

また、近鉄の特急列車は普通列車と同じ線路を使います。多くの観光客の方が特急列車に長い距離を乗ってくださると、地域間輸送の線路が守られることにも繋がります。そのような観点からも多くの方々に乗っていただけると嬉しく思います。

少しだけ地域間輸送について詳しく言いますと、三重県の公共交通機関は、近鉄グループホールディングスに乗っ取られているといっても過言ではありません。

先ほど紹介した通り鉄道においては、JRと比べて圧倒的に近鉄が強い状況です。主にバスを運営している三重交通があるではないかと言われる方がいらっしゃると思いますが、三重交通も近鉄グループホールディングスの傘下です。三重県内の移動を支えているのは、近鉄といっても過言ではありません。

また、三重県は全国的に珍しく新幹線の駅も空港もない県です。他には、山梨県、奈良県にはないです。将来的には、リニアの駅ができる可能性がある県 (山梨県はリニア駅ができることが確定しています) でもあります。

リニアが全線開通したときに、関東地方に住んでいる方が実際に短縮された時間ではなく、心の感じ方としてどのくらい近くに感じてくれるようになるか少し楽しみです。

本文にあげた志摩スペイン村が存在する理由の1つとして私が考えていることを否定することにも繋がりますが、近鉄には伊勢志摩エリアに行く際にはお得な切符がたくさんあります。

このことは、インターネットで多くの人が紹介、反応してくださっているので、知っている人は多くいるように感じています。説明してきた利点を潰してでも多くの観光客を呼びたいと考えているのだなと私は感じています。

伊勢志摩エリアのたくさんのお得な切符は観光者の特権であるように思います。正直に言うととても羨ましいです。志摩市に住んでいる人が大阪や名古屋といった都会方面に行くときに使えるお得な切符は少ないことからです。

おそらく移動時間が長いため志摩スペイン村の30周年の記念や、コラボ期間中、ライブがあるときに行くか悩んでいる方がいると思いますが、そんなあなたこそ来るべきだと感じます。

このコラボ期間が終わった場合、伊勢市には来るかもしれませんが、志摩スペイン村延いては、志摩市に来る機会を永遠に失うに等しいという方が含まれていると感じているからです。志摩市は一度訪れたら「もう一度行きたい」と思わせるような地域であると感じています。

志摩スペイン村30周年のキャッチコピーは、「¡Buen viaje! きっと再発見」です。「¡Buen viaje!」は、「良い旅を!」という意味です。

私が思うにはそもそも旅というのは、きっかけがあって初めて生まれる人生を豊かにしてくれるものだと感じます。そのような希少な機会に志摩市を選んでくれることを期待し、この文章を読んだ少しでも多くの方が、片雲の風に誘われるように、近鉄に乗って志摩市に訪れることを楽しみにしています。

三重県に、志摩市に、志摩スペイン村に
「来 て ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! !」


6.参考文献

6-1.図

6-2.前書き・あとがきのURL

7.近畿日本鉄道・志摩スペイン村公式サイト・SNS

8.志摩スペイン村とコラボを行った方々の公式サイト・SNS

9.近鉄お得な切符紹介ページ、三重県・志摩市公式観光サイト・SNS

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