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歴史的な低投票率から見る「どうして昔は投票率が高かったのか」という逆説

投票しなかったのは誰で、投票したのは誰かという話です。

今回の衆院選は歴史的な低投票率となりました。結果が全てなのであとは分析なのですが、今回の投票行動には主にネット世論の影響が強く出た、もしくは、影響がより強まったと分析されています。これはつまり、

☑️ネットの影響を受けない人は投票に行かなかった

ことを指します。やばくないか。私これ、「ネットの影響を受けない人=一般人」だと思うんですよね。ついに「一般人」が投票に行かなかった選挙だった、もしくはそれにとても近づいたのだと私は思います。

低投票率はなぜ起きたのか。よくないことに、折しも選挙当日の関東は小雨といえど雨天でした。全国民参加型の選挙が天候に左右されるのはやむを得ないことです。で、多摩から臨むはるか海こ向こうの横浜では、私が愛してやまない横浜DeNAベイスターズというグラディエーターがホークスとかいう猛獣とコロッセオで戦う儚くも美しい興行を行っており、その隣ではゆず、ミスチル、吉川晃司がライブを行い、更には横浜マラソンまで行われて横浜が沸騰していたとお伺いしています。さいたまスーパーアリーナではbacknumberが、相模原ではAlexandrosがsumikaやフォーリミ、マンウィズやkroiを呼んでフェスをやったとFM802が言っています。宝石のような10/27日曜日。なんでこんなハッピーな日に選挙なんか行かなきゃいけねえんだ。普通に考えて物販並ぶだろバカか?そんなみなさまの声が関東平野にこだましているのを感じます。そう、雨だし他にもイベントあるし選挙なんか行くかバーカというのが全世代にわたる実際の世論の正体なのです。

◆なぜ選挙より”他のこと”なのか?

極端なことを言えば、選挙は陰キャのお祭りなんですよ。これは陰キャ陽キャ論争に油を注ぎたいのではなく、この国の大半を占める陽キャの皆さんにとって選挙が何のメリットももたらさないことを示しているということです。楽しくもない、いいことも起こらない。つまり、選挙に行くメリットとしてよく言われる「民主主義だから」「未来を変えられるから」「生活が豊かになるから」というお題目に実際に価値が見出せないためです。これは、各々のお題目が大多数の「一般人」にとって夢物語だったり、意味がわからなかったりして、リアリティを喪失していることと直結しています。

◆そもそもなんで投票に行くんだっけ?

翻って、じゃあなんで昔は、特に昭和は投票率が高かったの?という話です。これは、現在投票率が低い理由から逆に論ずることができます。

☑️①民主主義が守れるから
☑️②くらしに直結するから
☑️③未来を変えられるから

これ、①や③なんかは正直政権交代とか起こってない昭和で何を言ってるんだという話だと思いませんか?①に関しては戦後のGHQによる占領や女性参政権の勃興による「殻をやぶる」ムーブメント、③は学生運動の高まりが背景にあると思いますが、これは今ネットの皆さん(𝕏とYouTubeとTikTokとYahooで吠えてる皆さん)と同じく、ただ熱に当てられてる少数派のお題目なんですよ。実際には特に意見を持たないが日々の暮らしが大切なだけの一般人=多数派の投票行動が投票率を下支えしていたと考えるのが当然です。

じゃあどうやって暮らしに直結していた感を出していたのかといえば、昭和中期では「戦後復興に向けての舵取り」、昭和末期では「正社員がほとんど」だったことが挙げられるでしょう。特に昭和末期までの会社、労働組合による組織票は当たり前であり、現存する連合などは最もたる例であり、それは選挙互助会の側面が強く出ました。つまり、年功序列で定年まで働く上で組合の申し出による組織票への参加は必須条件であり、そうした全国的なムラ的な集票制度が機能していたのが間違いなく昭和という時代だったわけです。

◆"くらしに直結していた"選挙

で、例えば具体的にどうやって「暮らしに直結した」のかといえば、端的にいえば選挙に行ったらいい思いができたんですよね。引き出物、ご祝儀、食事、雇用、縁談、そう言ったものが有力者から落ちてくるわけですよ。会社ぐるみで推して勝たせた議員が会社に仕事を回してくれるわけです。おらが村に新幹線を引いてくれる訳です。もしくは、そうしない限り「そこに居られなかった」訳です。昭和において会社は家族でありムラなので、そこから爪弾きにされるのは村八分を意味します。例えば自民に入れなければ村のトンネルが開通せずに取り残されるのはお前のせいだぞとか、共産党に入れなければ給料を上げる交渉がうまくいかなくなってジリ貧なのはお前のせいだぞとかそういう塩梅です。これは党派に問わずみられた傾向でしょう。そうして同調圧力によって生み出されていた選挙互助会的な会社や組合のありようは、バブル崩壊と共に解体に向かうことになります。

◆切り離されたのは誰?

皆様ご存じの通り、正社員による互助会は特に就職氷河期以降の世代にとって特権階級と化しました。雇用の流動化とリストラによって発生した平成初期においての非正規雇用者(派遣社員やアルバイト)は多くの場合組合に入れず、そのために労働組合は組織票を固めるための兵隊を取りこぼしました。結果次世代の労働組合は育たず、多くの「一般人」は会社や組合と距離を置かれフリーとなり、意識しなければ選挙と無縁な生活を送ることとなりました。こうなると、政治的なムーブは一般市民ではなく、従前より存在し、かつ取り残された①と③の人々(特殊な人々)が支えるようになります。これが加速して行き着いたのが現在の低投票率の正体だと考えられます。

◆現在

この労働形態の変化・多様化が30年続いた現在は、兵隊集めに失敗した労働組合や活動家の高齢化を招いており、結果的に集票装置としての組合の存続が危ぶまれたり、組織票の力が落ちることとなりました。実際上記のお題目だけでそもそも人が選挙に行くわけはなく、嫌だったりダルいことは人間わざわざしないので、まあこうもなります。

他方で、普通に考えると当日投票率24%というのはもう老人すら選挙に行っていないことを示します。行くのは規範意識の高い人か、もしくは𝕏、YouTube、Yahoo、TikiTokでいつも見てる人たち向けに吠えてる人たちとその取り巻きばっかってことです。そんなの関係ない人から見たらドン引きなんですよね。そんでもって投票行ったって意味ないし、大変だし、だるいし。行きたくないでしょ正直。シルバーデモクラシーとも言いますが、これだけの低投票率であれば、どちらかといえば”陰キャのお祭り”、つまるところネットでキャンキャン吠えてるみなさんが徒党を組んで総選挙を見守るとかいう政治を舞台にした推し活にすぎないのであり、大多数の陽キャの皆さんは遊びながらもそれを見抜いているわけです。興味のないアイドルの追っかけはできないんですよ。

この「暮らしに直結する」をどう捉えるか。今回の選挙の中身の話をするならば、手取りを増やすと言った政党が躍進した答えがここにあるでしょう。歴史は夜に作られ、夜はパリピの皆様が回しているのはもはや語らずとも良いでしょう。陽キャを救え。

画像はAIが考える「熱心な人がめちゃくちゃ捲し立ててしゃべってるのを大多数の人はスマホいじりながら聞いている構図」です

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