Mavic 3 Proで無理やり測量する

Mavic 3 Proは、コンシューマ向け/動画撮影向けのハイエンドドローンである。しかしそれを、測量などの産業用に使うことをメーカーが制限しているように思われる。むかしDJI社は太っ腹で、1台で動画撮影も測量もこなせる万能ドローンを売っていたのであった。しかしそれはドローンの普及を進める時期であり、ドローンの魅力が世界にいきわたり、そしてDJI社の優位性を世界が思い知った現在は方針を変えた。測量をしたい人にはMavic 3 Enterpriseという高価なドローンを売り、比較的安価なMavic 3 Proで測量はできないように制限しているのだと思われる。

これは営利企業として合理的な経営判断だから、僕からは何も言うことはない。ただ、Mavic 3 Proはハードウェアとしては測量にじゅうぶん使える実力を持っていて、そして僕のような予算のかぎられた研究者は、なんとかしてこれで測量をしようと考えてしまうのである。現在、日本語でこれを実現する情報はなかなか見つからないので、ここに私が雑なメモを書き留めておくことにする。

なおこれは、手取り足取りビギナーを指導する親切なガイドではない。基本的にぜんぶ自分でやろうとする人・それでも壁に当たった人が読むべき情報であり、そういう人の成功をサポートすることになれば幸いである。

  1. Litchiを使う

    • Litchiはスマホやタブレットでドローンを飛ばすサードパーティ製アプリだ。料金は数千円。ドローン本体や追加のバッテリーなどと比較したら安いものなので、こういうものだと考えて購入しよう

    • Litchiの使いかたは、ネット上でいろいろ見つかるのでそれを参照しよう。LitchiでDEMを読み込んで、対地高度一定で飛ばすフライトプランを作成し、それをkml形式でダウンロードしよう

  2. オンライン変換を使う

    • ここが一番苦労したプロセスである

    • いろいろ調べた結果、ドローン用のオンラインツールをいろいろ公開してくれているWes Barrisさんのウェブサイトで、Litchiのkmlを、Mavic 3 Pro用のkmzに変換できることをついに発見した( https://www.litchiutilities.com/litchiToM3.php

    • ちなみに、以前はcsv形式しか読み込めなかったのだが、Wesさんにお願いしたところ、なんと寛大なことに、kml形式も読み込めるようにしてくれたのである(ちなみにLitchiが吐き出すcsv形式では対地高度一定の飛行高度を記録することができない。つまり地形追従ができない。これはLitchiのバグかもしれない。kml形式では地形追従データをエクスポートできるのである)

    • なお、Litchiに国土地理院のDEMを読み込んで地形追従をするのが基本であるが、WesさんのツールはGoogle Elevationというサービスを自動参照して標高を取得してくれるので、これを使うことも可能である。ただし、Google Elevationの精度はいまひとつなので、断崖絶壁みたいな急峻な地形で測量をしたいなら、国土地理院のDEMを使うことをお勧めする

  3. DJI RCにロードする

    • 変換後のkmzファイルをDJI RCにロードする。DJI RCはAndroid OSで動いているので、PCのファイルをAndroidスマホに転送する要領でやればよい。私は、kmzファイルをDropboxに保存し、それをDJI RCの「ファイル」アプリで操作している。DJI RCはAndroid OSなので、ウェブブラウザでDropboxのapkファイルをダウンロードして実行すればDropboxアプリをインストールできるのである

    • kmzファイルをDJI RCのDJI Flyアプリで読み込むために、まずDJI Flyアプリでダミーのフライトミッションを作成して保存する。すると、Androidのファイルシステム内のwaypointsフォルダにランダムな英数字のサブフォルダが作成され、そのなかに同名のkmzファイルができている

    • 自分で作成したkmzファイルのファイル名を、DJI Flyアプリが作成したダミーのkmzファイル名と同一にして、入れ替える。これによりDJI Flyアプリは、外部で作成されたkmzファイルを内部のファイルだと認識して読み込んでくれる

    • DJI RCでミッションを読み込み、正常にプログラムされているか確認する。飛行速度・機体の向き・ジンバルの角度などは、Litchiでの設定が反映されないので、ここであらためて設定しよう

ここでは書かないが、Mission Plannerでフライトプランを作成し、Litchiで対地高度一定フライトに変換し、それでMavic 3 Proを飛ばすことも可能である。Mission Plannerの使いかたはネット上でいろいろ見つかるので、オルソ画像をつくりたい人は調べてみてもいいだろう。

オルソ画像を作りたい人に注意を一点。DJI Flyはインターバル撮影に対応していないので、動画で撮影しておき、ffmpegなどで一定間隔で静止画を切り出すことで静止画を入手できる。Mavic 3 ProのメインカメラであるHasselbladは、動画も静止画も画素数があまり変わらないのが不幸中の幸いである。

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