陸上生態系と炭素循環

陸上生態系(植物だけでなく、土壌微生物や動物など「従属栄養生物」も含む)はカーボンニュートラルである。光合成で大気から二酸化炭素を吸う量と、呼吸で二酸化炭素を出す量が、釣り合っているから。

「森は二酸化炭素を吸ってくれる」というのは、ある一面では正しく、ある一面では誤解を招いている。森という陸上生態系の一部である植物は、たしかに二酸化炭素を吸うが、植物自身は、吸った二酸化炭素の約半分を自分の呼吸で吐き出す。その植物が死んだら微生物に分解されて、二酸化炭素として放出される。だから森はカーボンニュートラルな存在なのだ。森を増やしたからといって二酸化炭素を際限なく吸ってくれるわけではない。

でも、森の保護は重要

地表付近(大気・陸上生態系・海洋)に存在する炭素の総量は、あらかた決まっている(※)。森を伐採するとどうなるか。以下の模式図に示すように、大気に存在する炭素の比率が上昇することになる。伐採前も伐採後も、大気と陸上生態系をトータルしたサイズはおなじだが、それらの比率が変わっているのである。

単純化のために海洋の炭素量は省略していることに注意。大気・陸上生態系・海洋

するとどうなるか。大気中の二酸化炭素濃度が上昇することになるので、温室効果が増大し、温暖化が起こるのである。なので、森を伐採しないことは重要なのだ。

※ 地表付近ではなく地殻中の化石燃料を掘り出して燃やすから温暖化が起こるわけだが、それについては別の投稿で論じよう。地表付近の炭素は、数日から、長くても数千年程度で循環する(これをターンオーバータイムという)。化石燃料は、人間が掘り出さないかぎり数千万年から数億年のターンオーバータイムを持っている。

温暖化の原因は「二重苦」

大気中の二酸化炭素濃度が増加する原因の8割は化石燃料。残りの2割は森林の伐採。温暖化対策の主眼は化石燃料からの脱却であるが、森林のことを無視してはいけないことも分かる。というわけで僕は森の炭素循環の研究をしているのである。

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