公務員事務職という仕事
私は20数年、公務員事務職として働いてきました。
しかし、うつ病により退職し、現在は民間企業のパート職員として働いています。
パートですが民間企業に身を置いてみて、公務員という仕事を少し客観的に見れるようになってきました。
やはり民間企業というのは利益を追求する仕事なので、コスト意識は非常に高い。
公務員時代もコスト意識はもちろんありましたが、今の職場はもっとシビアです。
そして、給料はその会社(の社長)からいただく、ということ。
だからなのか現場の意見(社長の意向とは違う意見)を上にズバズバとは言いづらい、というのもあるようです。
その点、公務員時代は相手が上司でもけっこうみなさん言いたいことを言っていたように思います。
私がいた職場はいずれも、リスクを回避するため、より良くするため、最善策を取れるようにわりと自由に意見交換していました。
これだけ好きなように意見が言えたのは、そう簡単にはクビにならないこと、組合があること、給料は組織の長からもらうものではない、ということがあると思います。
事業についても、企業の場合は社長の鶴の一声で決まっていくこともありますが、行政はそういうわけにもいきません。
基本的に公務員の仕事の多くは法律や条例に則って遂行していきます。
あらゆるものの根拠が法なわけです。
だから、行政は四角四面だとか融通が利かないとか言われますが、私は融通が利いてはいけないと思っています。
四角四面でないと秩序が保たれないから。
法の範囲内でできることは全力を尽くします。
しかし、それ以上のことはできませんししてはいけません。
できないことはできない、ときちんと伝えるのも公務員の仕事です。
ただし、伝え方は重要です。
冷たく事務的に言い放つのではなく、気持ちは寄り添う。
同じ「できません」でも、印象がずいぶん変わります。
力になれず申し訳ないな、と思ったこともありましたが、必ずどこかで線引きは必要なわけで、その線引きはきちんと説明できる根拠がなければならない。
それが法なわけです。
公務員の仕事をしていくうえで、法こそが自分を守ってくれるものなのです。
民間で働いてみて公務員時代(あくまで私が経験した職務)の「事の根拠はすべて法」という考え方は、とてもさっぱりしていて良かった、と感じることがあります。
これは民間企業で働いてみて初めて気づいた視点でした。
物事は多面体。
見る角度によって見え方が違う。
自分の身を今までと違うところに置いてみると、新たに見えるものがありますね。