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内田美由紀
2024年11月27日 01:17
昔、男が東国へ行った時に、友人たちに、途上で言い寄越した歌 わするなよ ほどは雲ゐになりぬとも そらゆく月のめぐりあふまで (わすれるなよ 身は天上の人となったとしても 空を行く月のように巡って再会するまで) 「ほどは雲居になりぬとも」はどういう意味だろう。雲居には宮中の意味もあるので、殿上人になったともとれるし、文字通り天上の人となったということで亡くなったという意味もあるだろ
2024年11月27日 01:11
昔、男が武蔵野国まで迷い歩いてきた。さて、その国である女を求婚した。(女の)父は「別の人に結婚させよう」と言ったが、母はなぁ、高貴な人に執着していた。父は普通の人で、母はなぁ、藤原(氏)であった。それでなぁ、高貴な人に(結婚させたい)と思っていたのだった。この婿がね(=婿候補;男)に詠んで送った歌。住む所がなぁ、入間の郡、みよしのの里であった。婿がねが返歌してとなあ(詠んだ)。よそ
2024年11月19日 23:24
むかし 男がいた。都に居づらくなって、東国へ行ったが、伊勢の国と尾張の国の間の海辺を行く時に、浪がとても白く立つのを見ていとどしく すぎゆくかたの こひしきに うらやましくも かへるなみかな(さらに一層過ぎてきた方が恋しいのに、うらやましくも 帰る浪であることだ)となあ、詠んだそうだ。もうずいぶん前のことになるが、秋に研究会で名古屋に行った。一人で行動するのはいつもなのに、
2024年11月19日 01:30
昔、男がいた。(京都の)東の五条あたりに、とてもこっそり(女のところへ通って)行った。(そこは)秘密であるところだったので、門からも入れないで、子供らが踏み開けた築地(土塀)の崩れから通ったのだった。 人がたくさんいるわけではないが、(男が通う)回数が重なったので、家の主人が聞きつけて、その通い路に毎夜、(警備の)人を置いて、守らせたので、(男は)行くが、逢えなくて、帰ったのだった。さて(
2024年11月19日 01:07
昔、東の五条に大后宮がいらっしゃった その西の対に住む人がいた。その人を、本気ではないが、気持ちの深い人が行き訪ねたが、(その人は)正月(旧暦一月)十日位の頃によそへ隠れてしまった。 (その人の)いる所は聞いたが、人が行き通う所でもなかったので、よけいにつらいと思いながら、いたのだった。 次の年の正月に、梅の花盛りに、去年を恋しく思って、(西の対に)行って、立って見、座って見、見
2024年11月19日 00:48
昔、男がいた。思いをかけていた女の所に、ひじき藻というものを贈ると言って思ひあらば葎(むぐら)のやどにねもしなん ひしきものには袖をしつつも (もし思う気持ちがあれば雑草の生えた家の庭に寝もしよう。ひじきではないが引いて敷く物には袖をしながらでも) 二条の后が、まだ帝にもお仕えなさらないで、普通の人でいらっしゃった時のことである。万葉集なら「やど」は「屋の外」すなわち「庭」な
2024年11月19日 00:40
昔、男がいた。奈良の都は離れて、この都(平安京)は、まだ一般の人の家が決まっていないときに、西の京に女がいた。その女は、世間の人よりは優れていた。その人は、容貌よりも心が優れていたのだった。一人ではなかったらしい。それを例の誠実な男が、ちょっと語り合って、帰ってきて、どう思ったのであろうか時は旧暦三月一日、雨がしょぼしょぼ降るときに贈った歌おきもせず寝もせで夜を明かしては
2024年11月19日 00:29
昔、男が初冠(元服)して、奈良の都、春日の里に所領がある関係で狩りに出かけた。その里にとても優美な姉妹が住んでいた。この男は垣根越しに覗き見てしまった。意外にも(その姉妹が現代風で)昔の都に不似合いな様子でいたので、気持ちが惑ってしまった。男は着ていた狩衣の裾を切って、歌を書いて贈る。その男は信夫摺りの狩衣をなあ、着ていたということだ。 春日野の若紫の摺衣 しのぶの乱れ限り知られず