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肉食メダカの誕生

1ヶ月半前からベランダビオトープをはじめた.メダカとミナミヌマエビを10匹ずつ入れて,それぞれ1匹ずつ死んだが概ね順調な経過を辿っている.
肉食メダカが爆誕したこと以外は.

きっかけはビオトープを初めて2週間ほど経った頃の大雨だ.雨が止んで晴れ間がのぞいたとき,それまではいなかった小型のスネールが数匹,ビオトープの底床を這っていた.おそらく,雨水の混入でビオトープ内の液性がやや塩基性に傾いたことが原因だと思う.インターネットの集合知曰く「スネールは繁殖力がすごいので適当に駆除したほうがいい.天敵となる生き物を使う方法もあるけどめんどくさいし多分メダカとかエビのことを食う.見つけたらピンセットや割り箸などで取り除いて殻を砕き,エビの餌にでもするのがいい」ということだったので,早速実践した.スネールの殻はピンセットでつまんで少し力を入れるだけで砕ける.それをビオトープの中にリリースするだけなので何も面倒なことはない.毎日ビオトープをちゃんと見ているわけではないので,2,3日に1回,そうやってスネールを砕いていた.それとは別に,ほとんど毎日メダカに人工飼料を与えていた.

1週間前のことだ.天気が安定しないその日も,私はスネールをピンセットで潰して水中に落としていた.すると,メダカが寄ってきて,スネールの潰したものを食べたのだ.また次のスネールを潰して同様に落とすと,今度は数匹のメダカがやってきて奪い合いの様相すら呈していた.潰したスネールを落とそうとピンセットを水につけると,落ちるのを待たずに,ピンセットに付着している死骸をもぎ取っていく個体すらいる.
メダカは完全に肉食になっていた.
スネールの死骸で生き餌の味を覚えたことにより,肉食メダカとして生まれ変わったのだ.人工飼料をやっても以前のように水面に寄ってきてツマツマすることはなく,ホテイアオイの影から興味なさげに眺めているだけだ.水面をツマツマしているメダカも,よく見れば人工飼料ではなく,ホテイアオイから脱落したアブラムシを食べていた.


どんな生体も生き餌の味を覚えたら最後,よほどお腹がすかない限り人工飼料には見向きもしなくなる……という通説はメダカにも適用されるらしい.
今日,私は敢えてホテイアオイの裏に産み付けられたゼリー状の卵を見逃した.
メダカの生き餌として立派に育ってほしい.私がピンセットで潰すその日まで.

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