「しあわせのようなもの」
2023年 2月
1月29日(日)。日比谷図書館のホールで映画生活50年の記念上映会を企画し、150人近い方々が集ってくれた。上映作品は長編処女作『奈緒ちゃん』と最新作『パスカルズ〜しあわせのようなもの〜』。最新作はお披露目上映だったので、ドキドキだった。
感想はいつもながら映画以上に豊かなイメージを語ってくれています。私の映画は作品そのものよりも感想の方が素晴らしい、と口の悪い仲間は言うけど、本当にそうだ。
映画が観た人の心の扉を開けて、イメージを引き出しているんだから、と自慢もしたいけど。
私は、映画というイメージのトンネルを掘る仕事をしただけで、トンネルを歩くのは、一人ひとりの観客だからね。映画は、観た人の中で映画に成って行くのだから…。
『奈緒ちゃん』と『パスカルズ』の映画が、全然違うはずなのにとてもよく似ていると思う、と何人かに言われて、ちょっと嬉しかった。『奈緒ちゃん』で始まった私の映画創りは、長編だけでも二十本を越えて、それぞれの作品の内容もかなり多様だと思う。多様で多作。でも、言ってみれば、長い一本の映画を創っているという感じがあるようにも思う。
言えば、「いせ線」という線路をあっちゃこっちゃブレながら走り続けている感じかなあ…。仕事が遅いから、特急列車ではなく、鈍行列車だと思うけど、ゼーゼー言いながら走り続けて停車場に辿り着く。
一作一作そんな風な作品創りだ。
『奈緒ちゃん』という駅から走り始めた列車が今、『パスカルズ』という駅に着いたところ。長い一本の映画の途中駅なんだな…。
今回の『パスカルズ』のサブタイトル「しあわせのようなもの」というフレーズは、実は『奈緒ちゃん』の前作の短編『をどらばをどれ』のラストコメントなんだ。信州の小さな村に伝わる“をどり念仏”を踊り終えた老夫婦が、村の道を歩くうしろ姿に語りかけるような言葉が欲しいと思い浮かんだ言葉が「しあわせのようなもの」。
三十年近く経って新作『パスカルズ』のサブタイトルにその同じフレーズが甦ってきたんだ。
「しあわせ」って何?と聞かれても、私には答えようがないけど、「しあわせのようなもの」を感じる映画を創りたいと思い続けて来たような気はする。もしかしたら、これまで創って来た映画の全てに「しあわせのようなもの」とサブタイトルを付けたかったようにも思うのだ。
長い一本の映画は、まだ終わらない。
「しあわせのようなもの」を求める鈍行列車の旅は続きます。
まだまだお付き合いください。
.
いせフィルム作品 上映のお知らせ
《伊勢真一映画生活50年記念特集上映》
[シネマ・チュプキ・タバタ]
▼ご予約・詳細はこちら(特設サイト)
https://chupki.jpn.org/archives/10438
■2月15日(水)
10:00-11:38 「奈緒ちゃん」
12:10-13:40 「ルーペ」
14:10-15:32 「いのちのかたち」★音声ガイド初上映!!
※上映後、伊勢真一監督と いせひでこさん(画家・絵本作家)のトーク。
16:20-18:00 「えんとこ」
18:30-20:06 「えんとこの歌」
■2月22日(水)
10:00-11:27 「妻の病」
12:00-13:25 「ゆめのほとり」
14:00-15:22 「いのちのかたち」
16:00-17:50 「やさしくなあに」
※上映後、伊勢真一監督のトーク。
18:30-19:58 「いまはむかし」
《追加上映決定!『いのちのかたち 画家・絵本作家 いせひでこ』》
シネマ・チュプキ・タバタさんで
『いのちのかたち』の追加上映が決定しました!
▼ご予約・詳細はこちら
https://coubic.com/chupki/428912
■3月2日(木)~7日(火)
10時30分~11時52分
※日本語字幕・音声ガイドあり
《舞台挨拶》
*3月3日(金) 10時30分~の回上映後 ゲスト:伊勢真一監督
*3月5日(日) 10時30分~の回上映後 ゲスト:いせひでこ さん
今ならまだお席がございます。
ぜひこの機会に“ユニバーサル上映”の『いのちのかたち』をご覧ください。
〈問合せ・予約〉
シネマ・チュプキ・タバタ:
TEL:03-6240-8480
https://chupki.jpn.org
いせフィルム :
TEL:03-3406-9455
E-mail:ise-film@rio.odn.ne.jp
そのほか各地での上映情報は、いせフィルム公式サイト「上映情報」をご覧ください。