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「いのち」の想い

2024年 4月

 桜が咲いて、散って…
 毎年のことながら、あっという間だなあ、と地面に落ちた花びらを見る。

 散り際がいい、という思い入れで、軍国主義の時代に桜のイメージは利用されたみたいだ…「死んで来い!」ということだ。
 桜は、花を咲かせて散っただけ、ただ懸命に「いのち」を生きただけで、その在りようを見て人は、美しいと素直に思っただけのことなのに。
 小賢しい奴が、「政治」に都合よく利用したんだな。
 昔も今も「政治」は、利用することばかり考えているんだ…。生きとし生けるものの「いのち」を利用する、という眼差しでしか見ようとしないのは、嫌な感じだな。

 桜は、ただ咲いて、散るだけなのに…
「いのち」は、生きて、死ぬだけなのに…

 42年間、撮り続けた「奈緒ちゃんシリーズ」の撮影の舞台は、横浜市の郊外にある住宅街、奈緒ちゃん一家の暮らす二階建ての家と、すぐ側にある小さな公園だ。
 公園には、日本の普通の風景に欠かせない桜の木が二本、春になると約束通り花を咲かせ、散っていた…。
 私たちのカメラは、来る年も来る年もその桜を撮り続けて来た。

42年間撮り続けた、奈緒ちゃん一家の日々同様に、公園の桜を撮り続け、編集を重ねるうちに、見ようとしているものの在りかが、ようやく分かりかけて来たような気になっている。
 桜が、咲いて散ることの繰り返しが、教えてくれたのだ。

 言葉にすると、ちょっと恥ずかしいけど、それは一言で言うと、
「いのち」なのだと思う。

 「長くは生きられない…」と言われていた奈緒ちゃんが、医療や薬のバックアップに助けられながら、生きながらえたのは、奈緒ちゃんのお母さんに言わせると、
「奈緒の生きようとする力」によって始めて可能になった…。赤ちゃんの頃から、今に至るまで、ずっと「生きようとする力」によって生かされたように思える、と。
 「奈緒には、“いのち”のようなものが見えていたような気がする…。見えるようになったのかもしれないけど…そうとしか思えない」と言っていた。

 「いのち」は、ただただ生きる方向を向いているのだ。

 いつの頃からか、奈緒ちゃんが口にするようになった言葉「やさしくなあに…」は、てんかんの激しい発作を繰り返しながらも生きて来た奈緒ちゃんの、自分のカラダの底から湧き上がって来た「いのち」の想いにたどり着いた言葉のような気がする。
 「やさしくなあに」いい言葉だと思いませんか?

 時々は「ケンカしちゃいけないヨ…、やさしくなあにって言わなくちゃ、ねえ」
と言ったりもする。
 「仲良ししなきゃ…戦争なんかしちゃ、駄目だよ!!」と言ってるのかなあ。
 奈緒ちゃんの言葉と言うよりも、奈緒ちゃんが触れてきた「いのち」が語りかける想いを、代弁しているのだ。

 ヒューマンドキュメンタリーは「いのち」を見つめることで、その時代を、社会を、しっかり見つめることになる。
 「やさしくなあに…」
 私が大好きな、奈緒ちゃんの言葉に耳を澄ませてほしい。

 桜が咲いて散る頃には完成させたい、と願っていた新作『大好き』。
 「いのち」に触れるドキュメンタリー、映画『大好き』を大好きになってほしい。

かんとく・伊勢真一



伊勢真一監督 2024年 最新作! 奈緒ちゃんシリーズ 第5作!

『大好き〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』
完成上映会(東京・横浜)

”いのちの記憶”
「長くは生きられない…」と医者に言われた障がいのある姪っ子・奈緒ちゃんが五十歳になりました。『大好き』は五十年におよぶ、いのちの記憶です。
(かんとく・伊勢真一)

〈東京〉4月27日(土)

会場:東京 日比谷図書文化館 B1F 日比谷コンベンションホール

   千代田区日比谷公園1番4号(旧・都立日比谷図書館)

〈横浜〉5月11日(土)

会場:横浜・泉区 泉公会堂

(相鉄線「いずみ中央」駅 徒歩5分) TEL. 045-800-2470


最新作『大好き 〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』

映画『奈緒ちゃん』で始まった、重いてんかんと知的障がいを併せ持つ姪っ子 奈緒ちゃんの映画創りは奈緒ちゃんの元気に引っ張られるように続編を成長の過程で生み、《奈緒ちゃんシリーズ》と名付けられます。そして、奈緒ちゃんは元気に50歳を迎えました。いつも奈緒ちゃんのすぐそばで共に生きてきたお母さん、私の姉の西村信子は80歳。50年間におよぶ「いのち」の記憶をまとめようと思い立ちました。奈緒ちゃんシリーズ第5話は、観る人一人ひとりの“「しあわせ」のようなもの”を、まるで鏡のように映し出す映画です。
(110分/2024年)

各日 13:30〜『大好き』上映

★上映後トーク:伊勢真一監督 (映画『大好き』監督)・西村信子さん(奈緒ちゃんのお母さん)


\奈緒ちゃんシリーズ 第1作目 同時上映!/

『奈緒ちゃん』

伊勢長之助と仕事を共にしたスタッフによる製作。伊勢長之助の孫、奈緒ちゃんはてんかんと 知的障がいを持って生まれました。奈緒ちゃん一家の日常を12年間にわたり見つめ続け、“しあわせ”について問いかけます。映画はその後、“奈緒ちゃんシリーズ”として42年間撮り続けられ、最新作『大好き』にたどり着きます。
(98分/1995年)

〈4/27 東京〉11:00〜『奈緒ちゃん』上映
★上映後トーク:伊勢真一監督 (映画『奈緒ちゃん』監督)

〈5/11 横浜〉10:30〜『奈緒ちゃん』上映
★上映後:・伊勢真一監督(映画『奈緒ちゃん』監督)のトーク
・「ぴぐれっと」(奈緒ちゃんが通う社会福祉法人)のお母さんたちによるフラダンス(映画『大好き』の完成を祝って「ぴぐれっと」のお母さんたちが歌と踊りを披露してくれます!

〈料金〉各回トーク付き 2,000円 
※1日通し 3,500円(前売り:3,000円)※障がいのある方1,000円 ※税込価格です

〈ご予約・お問合せ〉
いせフィルム www.isefilm.com
TEL. 03-3406-9455/090-1059-5863(西村)
E-maill. ise-film@rio.odn.ne.jp










〈料金〉各回トーク付き 2,000円

*1日通し 3,500円(前売り:3,000円) 

*障がいのある方1,000円 *価格は税込です


〈予約・問合せ〉いせフィルム

TEL. 03-3406-9455 E-maill. ise-film@rio.odn.ne.jp

090-1059-5863(西村)



主催:いせフィルム  協賛:エーザイ株式会社

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