見出し画像

新作は「音楽ドキュメント」

2023年 1月

 あっという間の50年だった。
 夢中になって駆け抜けて来たからなあ…。

 何でもありのドキュメンタリー映画創りだったけど、いつの頃からか「ヒューマンドキュメンタリー」と、私の作品群は呼ばれるようになる。酒が入った時などに時々口にしたのは、「音楽ドキュメントとスポーツドキュメントの傑作を遺してくたばりたいなあ…」という繰り言だ。ガキの頃から、音楽とスポーツが好きだったからね。

 で、映画生活50年の新作は、音楽ドキュメント。傑作であろうと駄作であろうとかまうことはない。創りたいから創ったのだから。そのチラシに「《不在》の音」というメッセージを書いたので、読んでほしい。そして、観に来てくれたら嬉しい…。

 「《不在》の音」

 2021年の正月、ひょんなことからパスカルズの「さるハゲロックフェスティバル」用のショートムービーを頼まれて、ほとんど初めてのようにパスカルズのみんなと出逢った。でも、ずいぶん昔からの友達のような気がしたし、音楽も、なんだかとても懐かしかった。
 リーダーのマツさんは、前の春に突然旅立ったメンバーのチェリスト 三木黄太さんのことをとても気にされて、そのショートムービーを三木さんに捧ぐような気持ちのものにしたいと言っていた…。マツさんはその気持ちのままに、2021年の春と2022年の春、コロナ禍の中で、三木さんの追悼ライブを企画した。メンバーのみんなの気持ちも同じだったに違いない…。私も撮らないわけにはいかない気持ちになっていた。
 「二十五年来一緒にバンドをやってきたから、もう三木さんのチェロの音がパスカルズみんなのカラダの中に入りこんじゃっているんだ…」と語ったまま、マツさんは黙った…。
 2022年の秋、三木さんが最後の時を過ごした長野・伊那谷の工房を訪れ、付近の森を歩きながら、きっと三木さんのカラダの中にもメンバー13人のパスカルズの音が入りこんでいたに違いない…、その三木さんのカラダがこの森の空気に触れていたんだ、と感じたとき、パスカルズの音楽が聴こえてきた。ふと《しあわせ のようなもの》というサブタイトルが浮かんだ。
 「《不在》という在り方もある…」とパスカルズのもう一人のチェリスト坂本弘道さんは、三木さんの《不在》を語ってくれた。《不在という在り方》を抱えながらのパスカルズの音楽が、映画に写ったような気がする。
 人は誰も、誰かしらの《不在》を抱えながら生きている。
 そして、人は誰も、いつの日か《不在》という在り方を生きるのだ。
 耳を澄ませると確かに聴こえてくる。
 《不在》の音、が聴こえてくる。
 音楽は いいなあ…
 映画も いいけど…

(かんとく・伊勢 真一)

映画『PASCALS[パスカルズ] 〜しあわせ のようなもの〜』チラシより


《ドキュメンタリー映画上映会》

伊勢 真一 映画生活50年 記念上映会

2023年 1月 29日(日)
会場:日比谷図書文化館 B1F 日比谷コンベンションホール

11:00〜
『奈緒ちゃん』(1995年/98分)

*上映後トーク:
伊勢真一 (映画『奈緒ちゃん』監督)・西村信子(奈緒ちゃんのお母さん)

13:30〜 最新作初上映!
『PASCALS[パスカルズ] 〜しあわせ のようなもの〜 』(2023年/97分)

*上映後トーク:
伊勢真一 (映画『PASCALS[パスカルズ] 〜しあわせ のようなもの〜 』監督)・ロケット・マツ(パスカルズ) 他


〈料金〉
11:00の回:1,500円
13:30の回:2,000円
*1日通し 3,000円もあります 
*障がいのある方1,000円、中学生以下無料 
*価格は税込です

〈詳細・お問合せ〉
「いせフィルム」
TEL. 03-3406-9455
E‐mail. ise-film@rio.odn.ne.jp

*日程や内容が変更となる場合があります。ご来場の際は事前にいせフィルム公式サイトまたは ツイッター(@iseFilm)等をご確認ください。

.
いせフィルム www.isefilm.com
TEL. 03-3406-9455 FAX. 03-3406-9460 E-maill. ise-film@rio.odn.ne.jp
.

千代田区立日比谷図書文化館 B1F 日比谷コンベンションホール 
千代田区日比谷公園1番4号(旧・都立日比谷図書館)
◎東京メトロ 千代田線「霞ヶ関駅」C4出口より徒歩約3分
◎東京メトロ 丸の内線・日比谷線「霞ヶ関駅」B2出口より徒歩約3分
◎都営地下鉄 三田線「内幸町駅」A7出口より徒歩約3分

※専用の駐車場はありません。日比谷公園地下公共駐車場をご利用ください(有料)。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?