「やさしさ」
2023年 10月
次回作『大好き~奈緒ちゃんとお母さんの50年~』の製作・上映支援カンパが、少しずつ増えています。額の多少にかかわらず、とてもありがたく、嬉しい。
カンパの額に応じて返礼として、パンフレットやDVDや、DVD-boxを差し上げることにしているのですが、「返礼の品は遠慮します」と言う方や「礼状も郵送料と手間が大変だろうから要りません」と言う方が結構います。名前を公表しないでほしい、と言う方もいる。
要は、見返りを求めているわけではない…ということでしょうか? その多くは見ず知らずの方々です。住所も明かさず、御礼状の書きようも無い方もいます。
メジャーな人気監督でもない、私のようなドキュメンタリーの創り手の、まだ未完成の作品へのカンパですから、もう「有難い」としか言いようがない。
私が逆の立場だったら、そんな無償の行為が出来るだろうか…と考えてしまう。
もちろん、私が41年間自主製作で映画を撮り続けたのも、見返りを求めたわけではない。無償の行為と言えば、そうだろうけど、自分が創りたいと思う作品へのチャレンジだし、その結果が一本の映画として遺ることは、映像の創り手である私にとっては、何ものにも代え難い悦びだから。
「世のため人のため… 」という立派な考えで創ってきたわけではないし、強いて言えば、奈緒ちゃん一家四人に観てもらいたい、という思いが撮り始めた頃にあって、あとはほとんど自分のために取り続けてきた映画だからね。
言えば、自分のことしか考えていない自分を自覚すればする程、支援してくれる方々の心根の「やさしさ」のようなものに触れ、申し訳ないという気持ちになってしまうんだ。
時々、私の映画を観た人から、作品に監督の「やさしさ」を感じた…というようなコメントをもらうと、消え入りたいような気持ちになる。
だって、自分のことばかり考えている
ワガママな奴で、「やさしさ」から一番遠い存在だと思ってるから。
でも、「やさしさ」のチャンピオンのような、奈緒ちゃんをはじめ、私の映画に登場する一人ひとりは、みんなそれぞれの「やさしさ」を生きている人ばかりなのだと思う。監督ではなく、映画に出ている人が「やさしい」んだ。
きっと自分に無いものを求めているんだ。「やさしい人」はいいなあ、と思って撮ってるからね。自分も、「やさしく」なれたらなあとも思いながら… 。
で今回は、映画に登場している人だけでなく、映画を観てくれる、応援してくれる一人ひとりの「やさしさ」が、たんと集まって、製作・上映支援の輪が大きく広がりつつある。
そして、迷いながらも、カンパ活動に取り組んでヨカッタと思えるようになった。友人・知人や見ず知らずの一人ひとりの、「やさしさ」に触れることが出来たから。
キレイゴトに聞こえるかもしれないけど、本当にそう思ってる。
「やさしさ」なんてちょっと気恥ずかしい言葉だけど、次回作『大好き』は「やさしさ」が原動力となって産まれ出る映画になる。
きっと映画を観た人々にも「やさしさ」が空気感染するに違いない。
「やさしくなあに」って
言わなくちゃ! ねえ!!(西村奈緒)
(かんとく・伊勢真一)
上映情報
■『Pascals~しあわせのようなもの~』
〈大分〉耶馬溪・嚴浄寺
11/3(金・祝) 15時~
※上映後、伊勢真一監督のトークあり
【問合せ】嚴浄寺・村上 TEL:090-2582-4662
〈山口〉山口情報芸術センターYCAM
11/8(水)~17(金) 時間未定
【問合せ】山口情報芸術センターYCAM TEL:083-901-2222
■11/19(日)奈緒ちゃんシリーズ特集上映会!in下北沢 ラ・カーニャ
12時〜「おーい集まれ ! ! 〜てんかんと闘う仲間達〜」
(45分/1984年)
日本てんかん協会の全国キャンプに参加した奈緒ちゃん一家を中心に、同じ病気に悩む仲間たちを描いたドキュメンタリー。映画『奈緒ちゃん』のスタッフによる作品で、久しぶりの上映。
★伊勢真一監督のトーク
13時30分〜「奈緒ちゃん」
(98分/1995年)
てんかんと知的障がいをもつ少女・奈緒ちゃんの、8歳から成人式までの12年間を追ったヒューマンドキュメンタリー。障がいのある子を持つ家族の日常を、淡々と、そして静かに見つめ続け、映画は“しあわせ”について問いかける。伊勢真一監督の自主製作、自主上映による映画創りの原点。(毎日映画コンクール記録映画賞グランプリ、キネマ旬報文化映画ベストテン2位)
★伊勢真一監督、西村信子さん(奈緒ちゃんのお母さん)のトーク
16時〜「やさしくなあに 〜奈緒ちゃんと家族の35年〜」
(110分/2017年)
「長くは生きられない…」と言われた、障がいのある姪っ子「奈緒ちゃん」とその家族の日々を、伊勢監督が見つめ続けた35年の記録。「奈緒ちゃんが生まれたから、生きたから、たくさんのいのちが生きた。」奈緒ちゃんは44才、元気です!『奈緒ちゃん』『ぴぐれっと』『ありがとう』に続く、家族の物語。(2017年キネマ旬報文化映画ベストテン3位、DMZ韓国国際ドキュメンタリー映画祭審査員特別賞ほか)
★伊勢真一監督と会場の皆さんとのQ&A
[料金] 各回トーク付:2,000円・一日通し:4,000円
(前売り:3,000円)*全て税込
[ご予約・お問合せ]Tel. 03-3406-9455
Mail. ise-film@rio.odn.ne.jp(いせフィルム)
Tel. 090-1059-5863(西村信子)
■12/9(土)『ごちゃまぜ映画会』横浜市あ〜すぷらざ
〈神奈川〉横浜市・本郷台
12/9(土)あ~すぷらざ2階・プラザホール
10時30分~ 『Pascals』
13時~『朋あり~太鼓奏者・林英哲~』
15時~ ライブ 横浜和太鼓 「音や」
※各回上映後、伊勢監督のトークあり
【問合せ】西村 TEL:090-1059-5863または
いせフィルムTEL:03-3406-9455
※日程等が変更となっている可能性もありますので、ご来場の際は必ず事前に主催者・会場ホームページ等をご確認ください。