「本当のこと」
2024年 7月
映画『大好き』は、「育み、育まれる家族のしあわせ」という映画『奈緒ちゃん』(1995年)完成時に思い描いた、こうなってほしい…という私たちスタッフの願望のようなメッセージが、50年の歳月の中で実現して行く物語、と言ってもいいかも知れない。
障がいのある「奈緒ちゃん」を育てることで「奈緒ちゃん」に逆に育てられていく、という家族の物語…。もう少しいえば「家族」を「地域」とか「社会」と言い換えられたらいいのに、という願望だ。
映画の中で「奈緒ちゃん」のお母さんは、何度も「教わることが多い」「奈緒に育てられた」と語っている。言い換えれば、「奈緒ちゃん」からのメッセージをお母さんが代弁している映画とも言えるかも知れない。
「私は生まれ出なきゃダメなのよ…」という強い想いを持って生まれ、生きた奈緒ちゃんの50年が私たちに語りかけるメッセージは、とても大切なことを伝えようとしているように思う。「いのち」は生きる方に向かうのだから…という“本当のこと”を。
つい最近のニュースで、1948年に制定され1996年まで存在していた「旧優生保護法」の手術規定は憲法違反であるという最高裁の判決が出たことを知った。
「不良な子孫の出生を防止する」との目的で理不尽な不妊手術を強いられた障がい者等の被害者の数は分かっているだけで25,000人に及ぶと言われている…。
奈緒ちゃんの障がい「てんかん」も、その手術規定の対象であったという。
所謂「優生思想」は第二次世界大戦下のナチズムの思想で、現代の私たちの社会には関係ないと思っている人も多いかもしれないが、つい最近まで、まさしく「優生思想」そのものの法律が「民主国家」日本にあり、2018年に被害者たちが声を上げるまで、国はこの基本的人権を侵す憲法違反の法律を放置していたのだ。
相模原での障がい者大量殺傷事件を一人の極悪非道の犯罪者が犯した事件と言うよりも、社会の責任だ…と、映画『大好き』の中で、奈緒ちゃんのお母さんはキッパリと言う。
「優生思想」がまかり通っている日本の社会そのものが問われなければならないと。
奈緒ちゃんは
「旧優生保護法」が言うように
「不良な子孫」だろうか…
「相模原事件の犯人」が言うように
「役に立たない人間」だろうか…
映画『大好き』に目を凝らし、
耳を澄ませ「本当のこと」を受け止めてほしい。
伊勢真一のヒューマンドキュメンタリーは、
現実から目を逸らしている…甘い、と
時々、言われてきたけれど、
「本当のこと」が写っている筈なんだ。
(かんとく・伊勢真一)
↓映画『大好き 〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』予告編
映画『大好き 〜奈緒ちゃんとお母さんの50年〜』上映情報
\完成上映会/
■相模原完成上映会
8/15(木)神奈川・相模大野グリーンホール・多目的ホール
◆10時30分~ 『大好き』
◆14時~ 『えんとこの歌』
上映後、伊勢真一監督のトークあり
〈問合せ〉
児玉 TEL:090-1557-3838 E-mail:mayumiecho@gmail.com
いせフィルムTEL:03-3406-9455 E-mail:ise-film@rio.odn.ne.jp
\劇場上映/
■新宿K‘sシネマ
7/13(土)〜8/9(金)
〈問合せ〉TEL:03-3352-2471
■静岡シネ・ギャラリー
8/16(金)〜8/22(木)
〈問合せ〉TEL:054-250-0283
※8/18(日)14時〜イベント上映・伊勢真一監督と西村信子さんのトークあり
■名古屋シネマスコーレ
8/22(木)〜8/30(金)
〈問合せ〉TEL:052-452-6036
■横浜ジャックアンドベティ
8/24(土)〜9/6(金)
〈問合せ〉TEL:045-243-9800
■シネマ・チュプキ・タバタ(音声ガイド・日本語字幕付のユニバーサルシアター)
9/1(日)〜9/14(土)
〈問合せ〉TEL:03-6240-8480
■大阪・シアターセブン
9/7(土)〜9/27(金)
●先行上映決定!●
7/28(日)・8/23(金)13:00〜 ★伊勢真一監督舞台挨拶予定
〈問合せ〉TEL:06-4862-7733
■京都シネマ
9/13(金)〜9/19(木)
〈問合せ〉TEL:075-353-4723
■金沢シネモンド
10/5(土)〜10/18(金)
〈問合せ〉TEL:076-220-5007
その他、神戸・元町映画館/広島・横川シネマ/山口情報芸術センターYCAM/別府ブルーバード劇場/
富山・ほとり座/上田映劇/…(上映予定)
【いせフィルム】 TEL:03-3406-9455
WEB:http://www.isefilm.com