【伊勢滞在記】伊勢うどんと伊勢の甘味を巡る日々(玉置標本)
製麺界隈に興味があるフリーライターで、同人誌「趣味の製麺」シリーズを発刊しています。そのため伊勢うどんにはとても興味があり、主に伊勢うどんに関する取材をしました。ついでに甘いものなども。ちなみに埼玉在住で伊勢は初訪問です。
詳しい記事は後日どこかの媒体でということで、とりあえずざっと報告まで。
2022/06/07(火)
伊勢に到着、宿にチェックイン。
伊勢市クリエイターズワーケーションの担当者である伊勢市観光誘客課の三宅様と顔合わせ。取材のアポ取りを全部していただき大変助かる。
三宅様や宿のご主人に伊勢市民の伊勢うどんへの想いをヒアリングしたところ、意外と家で食べることが多いということで、さっそく「ぎゅーとら」というスーパーで購入して食べてみる。
2022/06/08(水)
晴天。本日から取材開始。伊勢うどんの取材は午後からなので、午前中は伊勢神宮の外宮をじっくりと参拝。
せんぐう館が想像以上におもしろく、私は伊勢についてなにも知らなかったことを知らされる。式年遷宮、すげえ。
お参りの後は参道をブラブラと。
午後から伊勢うどんの老舗「つたや」で、ご主人から伊勢うどんのあれやこれやを教わる。伊勢うどんの歴史に様々な見方があることを知る。
私が調べている家庭用製麺機もそうだが、庶民の食文化史は調べる人が少なく、ほとんど記録も残っていないので、答えはなかなか見つからない。
ご主人が作ってくれた伊勢うどんは、とてもおいしかった。
食後はそのまま自転車で「みたすの湯」へ移動。
電気風呂が電流の強さで二種類あり、強い方が本当に強くて笑った。電気風呂好きは是非!
近くにあるスーパーをチェック。やはり伊勢うどんは普通に売られていた。ただしタレや麺のメーカーが少し違うようだ。どうやらいろいろあるらしい。
伊勢の人にとっては「うどん=伊勢うどん」であるという話を実感。
その後、またぎゅーとらに行った。
その夜、宿のご主人から突然「海にいかないか」と誘われ、スタッフや宿泊客などと近くの海へ。いかにもゲストハウスらしい展開に感動する。
2022/06/09(木)
この日は取材が入っていなかったので、天気もいいので天照大神をおまつりする内宮、皇大神宮へ自転車で向かう。
私はまったく信心深くないのだが、それでも「一生に一度はお伊勢参り」と言われる意味が分かるありがたさがあった。この空間を二千年も維持しているのがすごい。
大満足で内宮を出たら参道を見学。外宮の参道に比べて全体の密度が濃く、お伊勢参りの終着点感が強い。内宮の荘厳な雰囲気から一転、気持ち良いくらいの観光地っぷりだ。
手打ちで伊勢うどんを出しているという、伊勢でも大変珍しい店へ。
三重県産の小麦「あやひかり」を使って毎日手打ちするというこだわりながら、その実態はかつ丼が人気の定食屋さんで、あまり伊勢うどん目当てのお客さんが来ても困るから(手打ちが間に合わない)、ネットに名前は出さないでねという方針とのこと。
しっかりとした生地を作り、太い麺をじっくり茹でて、さらに蒸らして、そして寝かせたうどんは、極限まで柔らかいのにしっかりと角があって、箸で持ち上げられるという摩訶不思議なうどんだった。
宿に戻って、白餅黒餅をいただく。
唐突に伊勢市在住の方から、さっき猟で獲ったばかりというシカと、冷凍してあったイノシシの肉をいただいた。伊勢参りのご利益だろうか。
2022/06/10(金)
朝から伊勢うどんの麺を作っている山口製麺へ。
伊勢うどんを食べさせる店で、自家製麺をやっているのはごく一部で(手打ちはさらに少ない)、多くは製麺所で茹でた麺を使っているそうだ。沖縄そばのようなシステムである。
製麺所の麺といっても、そこはプロがしっかりと作っているので、自家製麵にも負けないクオリティとなっている。
やわやわなうどんを手間暇かけて作る工場の方々、そしてこの味を食べて続けている伊勢市民のこだわりに感動である。
ものすごく勉強になったのだが、今思えばせっかく工場まで行ったのだから、出来立てを食べさせてもらえばよかった。今度行くときは、丼と箸とタレとネギを持参しよう。もったいないことをした。
午後は伊勢うどんの有名店である山口屋へ。ちなみに山口製麺とは無関係で、自家製麺にこだわる店だ。
手打ちにこだわる理由などをたっぷりと伺った後、作るところをみせてもらったのだが、「通し」の使い方がつたやさんとはちょっと違っておもしろかった。
もう一杯くらい食べられそうだったので、昨日いった定食屋にまた伊勢うどんを食べに行った。この店なら定食だろうと、今日はメンチカツ定食。うどん、ライス、メンチカツ、赤だし、小鉢いろいろという、ものすごい組み合わせだ。そして相変わらずうどんがトロトロ。
伊勢うどんを食べて思ったのが、ちゃんとした食事というよりは、餅や団子のような軽食だったのではという説である。餅の店ならたくさんあるし。
伊勢で団子といえば、「みつだんご」といって、「みたらしだんご」とは違うものが食べられているというので、野むら製菓舗へ買いに行く。
注文が入ってから焼くみつだんごは、食べてみると確かにみたらしとは全然違った。ものすごくコクのあるみつの正体は、和三盆を作るときにでる副産物の黒いみつとのこと。伊勢うどんのタレくらい濃い。
2022/06/11(土)
土砂降り。晴天続きで忘れていたが、そういえば今は梅雨時だった。
自転車は諦めて、バスで内宮方面へと移動。外宮と内宮を結ぶバスがたくさん出ているので、移動は楽ちんである。
伊勢で餅を食べるシリーズ、本日は茶房太助庵で神代餅(かみよもち)をいただく。神代餅の勢乃國屋が出している茶店だ。
伊勢うどんの麺を使ったカレーうどんが最高だという話を何人かの伊勢市民から聞いたので、カレーうどんがうまそうな山口屋に再び伺う。
伊勢うどんはカレーうどんのために存在するのではというくらいに合う。いつか「カレー伊勢うどん巡り」をしたくなった。
2022/06/12(日)
伊勢に来て知り合った人(肉をくれた人)に、鳥羽の安楽島で隔週日曜日に開催の朝市へと連れてきてもらった。魚介類には詳しい方だが、私でも知らない魚、食べ方のわからない貝などが売られていて大変楽しい。
今回の旅行、いやワーケーションは、炭水化物と糖質が主な取材対象だが、次に来たときはじっくりと海産物を攻めてやるぞと心に誓う。
朝市の後は、夫婦岩のある二見浦方面へ。私は旭湯で済ませてしまったが、本来はみそぎといって、お参りに来る前に二見浦の海で身を清めるものらしい。
二見浦にある鈴木観助本舗の「くうや茶屋餅」を狙っていたのだが、残念ながら臨時休業。
餅ではないけど、饅頭屋さんがあったので寄る。酒素(さかもと)饅頭製造本舗の旭家だ。
糀を自然発酵させた生地で粒あんを包んている。一つ食べたらうまかったので、お土産に10個購入。
二見浦から鳥羽に移動。
諸事情で柄にもなくミキモト真珠島を目指す。
2022/06/13(月)
この日は趣向を変えて、金剛證寺というお寺を目指してみることにした。ガイドブックによると、せっかく伊勢参りにきたのなら、こっちもお参りした方がいいらしい。
ちょっとお寺をお参りしようと思っただけなのだが、予想以上にしっかり登山だった。たまにすれ違う人は、みんなちゃんと登山靴を履いた人ばかりだった。やべえ。
2022/06/14(火)
また土砂降り。今日は岩戸屋さんで取材。
こだわりの老舗系ではなく、団体の観光客が来るような大規模店での伊勢うどん作りを見せてもらった。これもまた伊勢うどんの側面で大変勉強になる。
すぐに提供できる名物料理という面では、伊勢うどんのポテンシャルはやはり高い。
今はさすがに伊勢うどんがどんなものか知っている人がほとんどだけど、昔は「こんなうどんが食べられるか!」と怒る人もいたなどの貴重な話を聞く。
続いておかげ横丁にある伊勢醤油本舗の伊勢焼きうどんを取材させていただく。流行の発信店だ。
2022/06/15(水)
三宅さんが糀屋さんにアポを取ってくれたので、たまり醤油の取材ができることになった。ありがたや。
そして取材をもう一軒。今度はタレの老舗メーカーであるマルキ商店さん。
基本的に取材は受けていないそうだが、例の猟師さんが親しいからと電話をしてくれて無事成立。
タレの作り方は非公開ということだが、貴重な話を伺わせていただき、タレを使った料理をいろいろと食べさせてもらった。
たまり醤油に出汁が効いたタレは、どんな料理にも合う万能調味料だったのだ。
そして松阪方面の河原へ。
この辺りにはフェモラータオオモモフトハムシという外来種が生息していて、何度かその幼虫を確認しにきたのだが、まだ生きた成虫をみたことがなかったので探したのだが、残念ながら雨がちっとも止まず、不発に終わった。
2022/06/16(木)
とうとうワーケーションの最終日。お土産に赤福を買おうと、わざわざ本店まで出向くなど。伊勢の名残を惜しむ。
まだちょっと時間があったので、もう一食。
永六輔も通ったという「ちとせ」を訪問したところ、これまでと違う一杯にこれまた驚く。伊勢うどんの幅はどこまで広いのだろうか。
まだまだ食べたい店、話を聞きたい人、訪れたい場所があるから、また伊勢に行って、伊勢うどんを学んでこなくては
これにて私の伊勢クリエイターズワーケーションは残念ながら終了。
いや本当の終了は、これらの取材を何らかの形にまとめ上げたときですね。ボリュームも濃度もすごい情報なんですよ。どこか良い媒体ないですか。伊勢の同人誌でも作ろうかな。
そして後日、試しにと手打ちで伊勢うどんに挑戦してみたけれど、これじゃないよなーというものが出来上がってがっかり。
とりあえず伊勢の話を取り入れた同人誌「出張ビジホ料理録」という本を出したので、よろしければどうぞ!
玉置 標本(Tamaoki Hyouhon) ライター
【滞在期間】2022年6月7日〜6月16日
※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)