伊勢クリエイターズ・ワーケーション滞在記【黒田恵枝】

美術作家として、使われなくなった衣類を主な素材に、それらを手縫いで縫い合わせて空想の生き物の立体作品、それらを用いたインスタレーションなどを制作発表しています。

伊勢クリエイターズ・ワーケーションには 2020 年に参加が決まり、コロナでの延期を経て、2023 年の企画終了直前に滑り込み参加することができました。
実は 2 月に足を骨折してしまい伊勢へ行く数日前ぎりぎりにギブスが取れ、気持ち的にも身体的にもなんだかリハビリのような気持ちで参加させて頂くこととなりました。
そんな中、滞在中ずっとお借りしていた快適な電動自転車と、滞在アーティストへ無料で入浴させて頂けた「みたす の湯」さんはとても心強い存在でした。

伊勢訪問は、今までの人生の中で今回が初めてでしたので習慣にならい、二見浦→外宮→内宮の順に日を分けてゆっくりまわっていきました。その合間に少し持ってきていた制作をホテルで進めるという一週間でした。

神社仏閣を訪れる際には、その場所に縁のある動物はどんなものかをみるのですが、はじめに訪れた二見輿玉神社にはたくさんのカエルがいました。
彼らは猿田彦大神の使いで、伊勢参拝者の旅の安全を込めて「無事にかえる」というご利益と、龍神が雨を喜ぶから蛙、とのことで龍神崇拝との関連もあるようでした。海を背景に唐突に蛙の岩がある景色は少しシュールで美しかったです。

外宮と内宮は、想像していたよりもシンプルなビジュアルに驚きました。去年末に 3 ヶ月台湾で制作していたのですが、そのときに見てまわっていたお寺がとてもカラフルで装飾的だったので、そのギャップもあったからかもし れません。

伊勢うどんも今回の滞在中にはじめて食べることが出来ました。到着初日には、ホテルからすぐに行くことが出来た山口屋さんにて。

その日は少し寒かったのですが、空腹で夕方頃にかけこみ、ほんのりと暖かいおうどんがとてもありがたかった思い出です。同じく名物という手こね寿司とさめのたれという伸の干物も美味しく頂きました。

その他 おうどん屋さんは、たつやさんの焼豚がのったものがとても印象に残っており、別日に通りすがりに立ち寄ってくれ た友人と共に再訪した際には、親子丼を頂きとても美味しく癒されました。

もしもっと長く滞在出来ていたら、オム ライスなどのおうどん以外のメニューも絶対に美味しいに違いないと確信していました。

それからこちらも友人と共に訪れた向井酒の店さん。お魚がとても美味しく、個人的には急須に入ったお茶が頂けたのもとても素敵でした。

制作を進めていた作品は滞在中完成しなかったのですが、帰宅後に手を加え無事に完成することが出来ました。

直前までギブス固定だったため、歩きづらかった方の足も、歩き回ったおかげで最終日頃にはかなりスムーズに動ける様になっていて、また日常へ帰る準備が整ったような心持ちになっていました。
きっとこの土地を訪れる人々もそれぞれに様々な思いや願いと共にやってきて、再びそれぞれの日常へと帰っていくのだろうと行き交う人々をみながら思っていました。

その土地を観察すること、心持ちを整えること、そういった自分自身の活動の軸となる部分というか、制作活動に おける様々なものを維持していくための支えとなる考え方のようなものと向き合う、そんな一週間だったと感じます。
今回この時期に滞在させて頂けたことがとても幸運でした。この経験をきっかけに、どのような作品として伊勢という場所と共作出来るかという具体的なプランとともに再訪できたら良いなと思います。
ありがとうございました。

黒田 恵枝(Kuroda Yoshie) 美術作家

https://kurodayoshiemokemo.wixsite.com/artwork

【滞在期間】2023年3月13日〜19日

※この記事は、「伊勢市クリエイターズ・ワーケーション」にご参加いただいたクリエイターご自身による伊勢滞在記です。
伊勢での滞在を終え、滞在記をお寄せいただき次第、順次https://note.com/ise_cw2020に記事として掲載していきます。(事務局)