VTuber赤井はあとを知った日

誰もが順風満帆な人生というわけにはいきません。

ありとあらゆる場面で納得いかないことや、理不尽な選択を迫られることや、求めていなかった展開に出会うことがあります。
そういった様々な受け入れがたいことに立ち向かったり、逃げたり、傍観したりを繰り返して生きていくわけです。

私が特に応援しているホロライブのみこちやねねちも、それぞれ悲しいこと、つらいこと、理不尽なことに襲われ、それを乗り越えて今なおVTuberとして活動し続けています。
私はその姿に感銘を受けて、応援したいと思っているのです。

9/7の深夜に、赤井はあとさんのチャンネルで配信された放送。
「REAL TALK」と銘打たれた放送、告知のTwitterでは「不快に思う人もいるかもしれないけど最後まで聞いてほしい」という一文。
VTuber、ホロライブを取り巻く昨今の様々な状況が頭をよぎって、どうしても気になって視聴することにしました。

そこにあったのは、VTuberをなりわいとする一人の少女の正直な姿でした。

私は、恥ずかしながらそれまで彼女の配信を観たことがほとんどありませんでした。
コラボなどに参加して活躍している姿は目にしていましたが、個人の配信、特に料理や絵の紹介などではない、純粋な雑談配信やマイクラの作業配信などは観ていません。
だから、今回の話題に挙がったような内容、その片鱗がかつてどこかで語られていたとしても、私は全く知りません。
実質的に、今回がほぼ初めての赤井はあとさん、はあちゃまでした。

彼女の口から語られたのは、過去の思い出話、その苦労について。
彼女にとっては過ぎたことだからなのかもしれませんが、明朗快活に、笑い飛ばしながら話せるのはすごいなと思うような内容でした。でも、そういうのが彼女らしさなのかもしれない、というのは私にもなんとなくわかります。

そして、今の彼女を取り巻く現状、配信に取り組む意志。
こちらの内容は、正直言ってとても心に突き刺さりました。正しい表現が見つかりませんが、衝撃を受けたのは事実です。
キャラクターとしての設定をやぶり、真実を告げたということにも一定の驚きはあります。でもそれは、衝撃の全体からするとほんの一部です。ある意味、公然の秘密のようなものでしたし。
彼女には、その告白が必要だったことは理解できます。彼女がこれからも配信者として、VTuber赤井はあととして活動していくために、一種の区切りというか、けじめをつけるみたいな意志があったのかもしれません。公然の秘密となったことを明らかにして面倒ごとを消化したかっただけかもしれませんし、しかし現実にはどちらでもない、彼女自身の確たる理由があるはずです。
いずれにせよ、その告白をしたうえで、今後の活動をさらに頑張っていくという、彼女自身の言葉を借りれば「120%の力で」続けていくという強い意志を見せつけてきたのです。

衝撃を受け、感慨深い気持ちになりました。
「本当にすごいな、この人は」
言葉にしようとすると、もうそんなありきたりの文字列しか出てきません。

彼女自身は、自分が置かれた環境でVTuberとしても最強を目指すという宣言をした際に、「同じ年齢で自分よりすごい人なんていくらでもいる」ということを言っていました。
地球人全体を相対評価した場合、そう言われてしまえばたしかにそうかもしれません。誰も発見していない新たな真実を発見した人や、スポーツで世界一の記録を取った人などは、「すごい順」に並べたらはあちゃまより上に来るのかもしれません。
でも結局のところ、「すごさ」なんてものは比較できる定量のものではありません。誰かに影響を与え、誰かの人生の道しるべになったのなら、その人にとっては永遠に「一番すごい人」であり続けるわけです。

例えば同い年の一流スポーツ選手がいたとして、その人をすごいと思う理由はなんでしょうか。
人それぞれ色々あるとは思いますが、その大きな一つとして、「間違いなく自分と同じ世界に存在している同年代がこれだけ頑張っている」という事実を、いくつもの共通点から実感できるという理由があると思っています。
共通点から生まれる共感性は、知らない人を身近な人に感じさせてくれます。

今回の放送によって、はあちゃまが地続きのこの世界にいるという実感を強く持ちました。
彼女に限らずすべてのVTuberは究極的にはこの地上にいるわけですが、こうして実際に身近に感じる話を聞くと、その実感は大きくなります。
そしてその実感は、応援したいと思う気持ちの原動力になるのです。

はあちゃまは、9/30まではひとまず全力で活動すると宣言しました。
私はその姿を見届けたい。様々な苦難や悩みに見舞われながらもVTuberとして活動していきたいと思い、それに青春を捧げる彼女を応援したい。
他の誰にも真似できない彼女だけの輝きは、決して見逃すわけにはいかない。
もはやアイドルだとかVTuberだとかそういう枠組みを超えて、その外側にある一人の人間としての生きざま。
私たちが目の当たりにしているのは、そういう魂の煌めきなのでしょう。

私はようやく、赤井はあとというVTuberをほんの少しだけ知ることができた気がします。

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