保育士確保のために賃金UP
保育士の確保について、千葉県船橋市へ視察に伺った内容を報告いたします。西尾市でも保育士不足が問題となっていて、どうやって人員確保するのかが重要な課題としてあげられています。船橋市は「船橋手当」をはじめ、魅力的なプランを用意していて、その取り組みから学べる点を探るために視察先として決めました。以下に、視察内容と学びをまとめましたが、先に結論から述べたいと思います。
結論
現状の賃金では保育士という過酷な仕事の割に合わないのが、人材確保が進まない理由だと、船橋市でのアンケートでも浮き彫りになっています。事務作業を含めた業務量の多さ、児童や保護者からのプレッシャーなど、実際保育士の方から聞くことは少なくありません。そういった社会状況のなか、船橋市は保育士確保にかなり成功していて、それはまずシンプルにお金をつけるということです。お金の手当をつけずに、他のことでどうこうしようとしても解決するようには思えません。まずは賃金UPです。
船橋手当をはじめとした保育士に対する支援額の総額860万円、というのはかなりインパクトがあります。しかし船橋市のこれは、私立に在籍する保育士に対してのもので、西尾市の場合は公立保育士が不足していて、そのまま同じ施策を当てはめることができません。なので、西尾市は条例の段階から考えて、保育士の賃金UPにつながるような形を作る必要があると思いました。そこはこれから議会で研究しないといけないことです。以下船橋市の取り組みを紹介します。
保育士確保の背景と具体策
船橋市では、平成27年度に全国ワースト2位の待機児童数を記録し、保育士確保と待機児童解消のために緊急アクションプランを策定しました。このプランに基づき、保育の受け入れ枠の拡大と保育士の確保を目指し、多角的な施策を展開してきました。令和6年4月時点では、待機児童数は24人に減少していますが、依然として保育需要が高く、新たな制度対応のためにも保育士確保が急務です。
船橋手当
船橋市では、保育士の処遇改善のために「船橋手当」を導入しています。この手当は、私立保育園等で勤務する保育士に対し、月額4万3220円、賞与8万3700円を上乗せするもので、初任給が私立保育園の方が高くなるように設定されています。この手当は昭和54年度から導入され、平成28年度以降大幅に引き上げられました。
保育士宿舎借り上げ事業
平成27年12月から実施されているこの事業は、保育士の宿舎としてアパート等を借り上げ、月額6万9000円を補助するものです。正規職員だけでなく、フルタイムパート職員も対象となり、国の補助制度に基づいて運営されています。
保育士養成修学資金貸付事業
平成27年4月から、市内保育園で勤務する意思のある方に修学資金を貸し付ける事業を開始しました。卒業後、市内保育園で一定期間勤務すれば返済が免除される仕組みです。貸付金額は月額3万円で、対象者は市外在住者も含まれます。
保育士就業継続支援研修
平成25年度から実施されているこの研修は、保育士の就業継続を支援するための研修会を年3回程度開催しています。テーマは保護者とのコミュニケーションやキャリア形成など多岐にわたり、保育士のスキル向上と定着を目指しています。
私立保育園合同就職フェア
平成29年度から実施されているこのイベントは、私立保育園が個別ブースを出し、就職希望者との面談を行います。年2回開催され、参加者の就職に結びつく機会を提供しています。
WEBページの作成
令和4年度から、保育士確保策をインターネットサイトに掲載し、求人情報も併せて提供しています。このページは保育士向けの情報を集約し、求職者にアピールするためのものです。
資格取得の支援事業
平成30年度から実施されているこの事業は、保育士試験合格後、私立保育園等で1年以上勤務した者に対し、学習費用の一部を補助するものです。補助額は最大15万円で、資格取得を支援しています。
その他主な質疑と回答
視察当日の質疑応答では、船橋市の具体的な取り組みについてさらに深掘りしました。主なQAは以下の通りです。
Q: 保育士確保目的のための船橋の待機児童数の推移は?
A: 平成27年4月1日625人から、令和6年4月1日24人に減少。
Q: 船橋手当導入のきっかけと経緯は?
A: 昭和54年度に公私間格差の是正を目的に開始。現在は保育士不足の解消が主な目的。
Q: 公立保育園と私立保育園の給与格差は?
A: 公立保育園の保育士は市職員としての給与体系に基づき、私立保育園には「船橋手当」で補助しているため、私立の方が初期給与は高いが、長期的には公立が安定している。
Q: 船橋手当導入後の保育士数の変化は?
A:平成28年度以降、処遇改善策により保育士数は大幅に増加した。
Q: 賃金の差による保育士確保の影響は?
A: 保育士不足は公立・私立問わず共通の課題だが、給与体系の違いにより私立の初任給が高い状況が続いている。
Q: 退職率の高さについてどう対策しているか?
A: アンケート結果から仕事の過酷さと賃金の不満が主な原因と判明。処遇改善と給与の適正化を進めている。
これからやるべきこと
今回の視察を通じて、船橋市が保育士確保のために多角的な施策を展開していることが分かりました。西尾市でもマネできることは取り入れて、そこから独自の支援体制を整えて、保育士の確保と定着を目指すことが重要です。特に、船橋手当のような独自の補助制度や、保育士宿舎借り上げ事業、保育士養成修学資金貸付事業など、効果を生んでいる支援策をどのように取り入れることができるか、検討する必要があります。
また、保育士の就業継続を支援するための研修会や、私立保育園合同就職フェアなど、保育士が働きやすい環境を整える取り組みも成果が上がっています。西尾市でも、これらの施策を取り入れ、保育士確保に向けた具体的な対策を講じていきたいと考えています。
保育士の確保は、子供たちの成長を見守るために欠かせない要素です。今後も、保育士の処遇改善と働きやすい環境づくりを進め、待機児童の解消と質の高い保育を提供できるよう努めてまいります。ご意見やご質問がございましたら、ぜひお寄せください。一緒に、西尾市の未来を支えていきましょう。
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