『うんこと死体の復権』で土の栄養を考える
関野吉晴さんは生きる伝説みたいな方ですけど、その、常人じゃとても映せない監督作品『うんこと死体の復権』は、子供から大人までみんな見に行くと良いと思う映画です。
今の世の中、うんこと死体はみんなの目に見えないところにきれいに無くなっていくモノになっています。
この映画の序盤の舞台となるプープランドでは、「誰でも野糞ができるように」と伊沢さんが山林を購入して、十数年野糞をし続けている場所です。そのせいか、このプープランドは近くの山林に比べて圧倒的に土の分解能力が高くなっていると言います。
西尾市では長縄町の浄化センターにうんこは回収されて、ここで脱水されて、放水できない汚泥はクリーンセンターで焼却されます。皆さんご存知の通り、かつて糞尿は売買されるほど貴重な肥料だったわけですけど、今は灯油で燃やすのが普通になりました。
年配の漁師に聞くと、海辺のまちでは回収した糞尿は海に捨てていて、それが餌になって魚類がたくさん育ったと言います。糞尿にかぎらず、港にあがる魚のクズも捨てていたと言います。しかしこれも今は高いお金を払って、事業系廃棄物として焼却されます。
海の栄養不足は山の栄養不足とも関係があるとも言われます。山の栄養分が川に入って、それが海に届けられていたのですけど、今の海は「きれいだけど栄養がない」と言って、三河湾にも人工的にリンを流しています。糞尿流せばリンの問題解消!ということになりそうですけど、それが許されそうな場所はあまりなさそうです。
これまで灰にされていた糞や死体といったミネラルを山に埋めていくとエコロジーはどんな転回を起こすんだろう、とわくわく想像をかき立てる明るい映画で面白かったです。