【感想】「色と形のずっと手前で」長嶋りかこ
妊娠して、ままならない体になって初めて見える世界。
出産後の「聞いてないよー!」というトラブル続き。
そして、仕事に復帰してからの、圧倒的に時間が足りなくなり、限られた時間の中で仕事でも日常でも「やる・やらない」の判断を迫られ続ける状況になること。
読みながら、頭の中は初めて妊娠・出産した14年前にタイムトリップ。「気持ち悪いなぁ……」と会社のトイレで壁にもたれて休んだこと、夕方になって張ってくるお腹を撫でさすったこと、お腹を守りながら歩いた新宿駅などコマ切れのシーンが生々しく脳内再生された。
そして、妊娠中のあれこれだけでなく、「なんで!?」「どうして私だけ!?」と浮かぶ疑問や愚痴を飲み込み、吐き出し、時に白目をむきながら、でも「ああ、アドレナリン出てるわ…」と走り続ける快感も得つつ、働き続けた育休明けの日々のことも。
長嶋さんの仕事の規模感、自分の名前で仕事をするときに抱えるプレッシャーの大きさ、事務所で働くスタッフの方の雇用に対する責任感はどんなに大きいことか。そんな背負うもの山盛りの長嶋さんは、なぜ、ひとりで子どもを育てる決心に至ったのか。
同じ土俵で語るのは恐れ多いけれど、私もモノを作る仕事をしているひとりとして、娘が大人になった時に同じようなモヤモヤを抱かなくてすむような、そんな時代にしなければと、強く思う。
さて、本を読んで長嶋さんの考えていること、感じていることが気になり、ゲスト出演されているポッドキャストも聞いた。
「今は、だいぶ出産前のペースに戻りました?」という問いに対しての、
「まったく。そして、戻ることはないと思うから、長生きしようと思って、笑」
という返答に、心から賛同。
さっそく健康診断の予約をした。