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『Beau is Afraid』が楽しみで楽しみで仕方がない人間の末路

みなさま~~~~~~(失踪人口)
世怜音女学院中等部1年演劇同好会所属ではない、にじさんじ所属でもない、重度のVオタク兼ミッドサマーもといホラー映画オタクこと、漁火です。
お久しぶりです。3年ぶりのノートですね。
この記事は、他でもなく、アリ・アスター監督の最新作、『Beau is Afraid(ボーは恐れている)』の予告がついに、ついに出たので、興奮が抑えられず、感謝の意を込めて書かせていただきました。
ああ、長かった…本当に長かった…。この映画が、噂や情報ではなく、こうして現実になる日まで、本当に長かった…!!
アリ・アスター監督に狂わせた人間の一人として、この喜びを皆さんと分かち合いたく、記事を書くことにしました。ミッドサマーの考察記事を投稿した後にいくつか書きたかったものありましたが、結局熱量が持ちきれなくて、3年まるごと全く投稿してなかったしね…。
この記事では、予告動画を観て思ったことについてスクリーンショット付きで語っていきます。
また、同監督の前作である『ミッドサマー』及びデビュー作品の『ヘレディタリー/継承』に関する話(ネタバレ)も含むので、ご注意ください。
この2作を履修していないという方には、ぜひ観ていただいて、一緒に狂っていただきたいですね…♡

それでは、良ければ記事をお楽しみください!

 

     『Beau Is Afraid』ってどんなストーリー?

多分知っている方も多いと思いますが、「もっとも成功した起業家の一人、彼の数十年間の人生を、詳しく描いた映画」とのことです。
また、「4時間ある悪夢のようなコメディー」とも言われているのですが、この発言をした時点ですでに本作の制作が決定したかどうかは不明ですね。ただ、予告を観たら、このフレーズが凄くしっくり来るので、多分『Beau Is Afraid』のことじゃないかな?と思いますね。
上映時間としてはさすがに4時間は長すぎてそれが観客にとって真の悪夢になりかねると思うし、発行会社側としても好ましく思わなそうなので、実現するとしても、ミッドサマーと同じようにディレクターズカットを出すんじゃないのかな?いや、出してくれ。とことん狂わせてくれよ、なあ。
ちなみに正式上映版は時間が3時間程という噂です。

ちなみに、タイトルは最終的に『Beau Is Afraid』に落ち着いたが、『Disappointment Blvd.(失望大通り)』という仮のタイトルがありました。
もうひとつ、『Mona's Choice(モナの選択)』という仮タイトルもあったようですが、これに関する情報が少なすぎてなんとも言えないですよね。制作中の情報流出対策用のコードネームという説が有力…かも?

 

     予告動画を見ていく ~ガバガバ訳を添えて~

本日のメインディッシュです。どうぞ召し上がれ。
※独断で分けた段落ごとにあらすじを書き、その段落について語っていきます。あらすじ内の””付き太字表示はセリフです。

・00:00~00:18

負傷のボー。場所は、明らかに釣り合わないクルーズ船のデッキ。
振り向くと、そこには、少年時代の自分と、赤い髪の美しい女性が居た。
そして、第一声として、ボーの母親らしい人が、以下のように語る。
あなたがお父さんから受け継いでしまった物について…、本当に、申し訳なく思っているわ。
でも、私は子供が欲しかったの。この人生で一番のギフトとして。”

女性と思わしきシルエット、赤ん坊の泣き叫びと共に、画面が遠ざかっていく——

う~ん、こいつぁすげえや。(小並感)

ホアキンが演じる壮年のボーが座っているのは、車内の椅子。なのに、クルーズ船の上で、更に昔の自分が目に映る。
赤い髪の女性は、若い頃の、彼の母親だろう。

そもそも何故こうなった?かというと、予告動画の2:10あたりで、車の中でボーが頭を強く打ってしまう描写があります。
そのシーンの前後が、おそらく冒頭のこのシーンに繋がるでしょう。

この時読んでいる本はなんの本だろう。アリ・アスター監督の性格からすると、何か含みがありそうだが…。

若い頃のボーもまた振り向いて、そして何かを思い出したように虚空を見つめる。
子供部屋にて、母親と男の子だった頃のボー。壮年のボーの思い出で、更に昔の思い出か。記憶のマトリョシカ的な。
子供を寝かしつける、家族の暖かいひと時のはずだが…出てくる言葉(あくまで予告動画内なので、実際にこの時に言ったとは限らないが)と、不鮮明だったり赤く映ったりする母親の姿が不安をそそる。

『ヘレディタリー』履修済の方ならわかると思いますが、アリ・アスター監督、歪んだ家族像を描くの上手すぎますよね。(自分の出自に由来する物だと語っており、とんだトラウマをお持ちのようである。)
今回は『ヘレディタリー』と同様に、またはよりも一層、「家族(母)との関係とそれが導いた運命」に重きを置く予感です。
『ヘレディタリー』ではそれが破滅的な運命だったが、『Beau Is Afraid』では果たしてどうなるのだろうか。そして、ボーが父親から継承した物とは一体なんなのか(絶対碌でもない…)。今から楽しみすぎて胃に激痛が走ります。

・00:18~00:38

”明日、母に会いに行くんだ。”
と、ボーは担当のカウンセラーに言う。
それを受けてカウンセラーが「ほぉ…」と言わんばかりの微笑みを見せると、恒例のA24マークが満を持して舞台らしき背景を以て登場。
そしたら、母親が明るい声で、電話で次のように喋りだす。
もしもし、キャロットちゃん。お母さんよ。
明日あなたと会うのが本当に、本当に楽しみなのよ!これを伝えたかっただけ。
あなたは私の天使なのよ。愛してるわ。じゃあね。”

母親の愛情満ち溢れた言葉の中、ボーはどこかがおかしい街を薬を飲みながら歩いたり、今にも壊れそうなエレベーターに乗ったりする。誰かが冷凍野菜を電子レンジで加熱するシーンも。
電話が切れると、スマートフォンの通話履歴を、ボーは何か思っていそうな顔で、ただ見つめるのであった——

会う約束をしたものの、結局やっぱ行きたくねぇ~~って後悔するやつじゃん~~!!
とてもわかるよ、その気持ち。誰しも皆、少なくとも一度は経験したあるあるだと思います。
相手が長い間会っていない友人や家族とかだと、とりわけこの状況に陥りやすいんですよね。
さて、この段落について見ていきましょう。

謎のロゴ

A24マークの裏面にある、何かのロゴですね。
スポンサーなのかな?と一瞬思ったが、どうやらそうではなかった。
このロゴについてボーが経営している会社のロゴでは?と思っています。
よく見れば、後ほど使われている電子レンジにも、冷凍野菜のパッケージにもこのロゴが付いています。
どうやらボーの会社では、家電製品のみでなく食品も生産しているようですね。「もっとも成功した起業家の一人」は伊達じゃねぇや!まあ推測が正しければの話ですが。

電子レンジの後ろ側にあるビニール袋がなんか、人の顔っぽくて不気味…。

電話を取りながら薬を飲むボーが歩いていく街。彼はこの異常性に、まったく気づいていない——それとも、これが日常、と言った方が正しいのか。
左端に立っている女性は、「自分の手首を切り落としますよ」と切り落とされた両手が書かれている看板を持ちながら、恨めしそうに横を見ている。
これだけでも、もう、え?え?え?え????の、はてなのエレクトリカルパレードというのに、更に右を見てみると白昼堂々と銃を売っている男性がいた。
なに?無法地帯?政府が壊滅した世界線?

ボーが乗るエレベーターもなかなかやばいです。

やべえエレベーター

扉が開きながら花火走ってる。エンタメ性抜群でイイねー…ってならねーぇよ。
こんなの、乗るたびに3%の確率で事故SSRが出るとかいう最悪のガチャを強制的に引かされそうだわ。そして300回目で天井到達して確定で落下死しそう。
いやまあ、そもそもアリ・アスター監督作品のメインキャラという時点で既になんかのガチャに失敗してるに決まっているが。ボーも『ヘレディタリー』のアニーと同じように親ガチャ大爆死してそうだし。

ところで部屋の扉に貼られているチラシっぽい物はなんだろう?行方不明ポスターに見えなくもないが…。

00:38~01:04

再び母親との電話。
もう空港についたかしら?”と母親。
それに対して、ボーは不安げに返事する。
行く途中だよ…ただ、いや、あのさ…、危ない…よね?どうすればいいと思う?”
あなたならきっとうまく行くと信じてるわ。”と、母親は落ち着かせるように答える。
エレベーターの向こう側を見て、怯える顔でゆるりと進むボー。
そんな彼だが、外に出ると、殺人鬼にでも追われているかのように、凄まじい形相で通りを駆け抜ける。そして衝突音と共に次の瞬間 ——目を覚ますと見知らぬベッドの上に横たわっていた。
やあ、おかえり!”と、恰幅のいい男性が嬉しそうに、現世におかえりなさいと言う。
”車であなたを撥ねてしまったの。”
と、気まずそうに金髪の女性は説明する。
”どういうこと!?”
と、付いていけないボー。
”*わかるぅー”
と、女性。彼女も、ボーを撥ねたという事実に付いて行けてはいないようだが——

        *文脈的に「I know, right?(わかる、それな)」に近いと思ったので、このように訳しました。
異界の扉が~開かれたァ~

倒れてまで激しく殴り合う人、何かを抱えながらボーに向かって走ってくる人、絶叫を上げていそうな人。ふーん、おもしれー男ら…。
このシーンを観た感想は、『マッド・ボー 失望のデス・ロード』ってタイトルを付けた方がよさそうでは?でした。
危なくないか?と、電話で母親に不安を告げたボーなんだけど、こんな治安が終わってる、世紀末かのような世界観だったら、そりゃ心配もするわ。

ちなみに街に並んでいる店なんですが、「24」の看板の直ぐ側に「GUNS APLENTY(銃一杯)」という店舗がありますね。
これは、00:18~00:38の間にボーが歩いた街にもありました。そう、白昼堂々と銃を売っている男性の屋台に、この店名の札が置かれていたのです。
この店はストーリーに大きく関わってくるのか、またアメリカの銃の手に入れやすさを風刺しているのか。

ボーを撥ねた女性が「I know(わかるぅー)」を言うところは笑いましたね。海外ネキニキ達のリアクション動画でも、皆ここでクスッとしましたね。
悪夢のようなコメディー、というのは嘘ではなかったようです。
『ヘレディタリー』や『ミッドサマー』では、気まずさとか訳のわからなさで、つい笑いたくなっちゃう箇所があったけど、今回はまさに正攻法というか意図的に笑わせてくるようです。
アリ・アスター監督による尖ったブラックジョークも期待できそう。
コメディーとホラー、両方の性質を持ち合わせるように『Beau Is Afraid』が作られたのだとしたら、今までになかったタイプのホラー映画になるだろう。(もし、既にこんな感じのホラー映画が存在しているよ、という有識者の方がいたら、絶対観てみたいので教えてくださいね♡ちゅ♡)

全く関係ない話ですが、車で撥ねられるといえば、今年は、忘れてしまい、「年が変わる瞬間にトラックに撥ねられる米津玄師さん」を拝むことができませんでした。悔しい…悔しいよ…!!
来年絶対リベンジするので…、あなたのその胸の中を洗って待ってろ…。

・1:04~1:27

”これ、なに…?”足首に付けられた妙な装置について、ボーは聞く。
”ただのヘルスモニターさ。君の健康状況を確認するのに役が立つよ。”と男は回答する。
撥ねられて連れられて来た家の中に、ボーはしばらく泊められる様子。この家にはうら若き娘がいて、夜にこっそりある男と会っているようだ。
そんな中、誰かがボーに次のように話しかける。
”お家に帰るのが悲しいかい?ボー。
君にとっては、全く現実味がないんだろうな。”
夜から昼へ、昼から夜へ、夜からまた昼へ。娘と会っていた男がガラス扉の外から静かにボーに視線を向ける。
”ただここから出たいだけだ。”夜闇の中、ボーが言う。
”それはどうかな。”朝になっている家の中で、男性が言う。
そしたら、全身に得体の知れない水色の液体が付いているボーは、体当たりで扉を破り、無理矢理に逃げ出す。
斯くして、彼の逃走劇が始まったのだ——

どう見てもただのヘルスモニターじゃないですね、ええ。
一連の展開を見るに、ボーを撥ねた張本人の女性の夫らしきメガネの男性は、ボーが妻を告発したりしないように、自宅に軟禁しようとする、と推測できる。
足首に付けたそれも、監視するための物かと。
結局、耐えきれないボーが無理矢理とこの家から逃げ出したのだが、それに至るまで、どんなイカれた茶番が繰り広げられたのか、凄く楽しみです。

そういえばこれを見て『ミザリー』(1990)を思い出したのは私だけ?

娘が会う、家の外に泊まっている車に住んでいるらしい男について、娘とはどんな関係、ボーに何をするのか。

また、メガネの男性が「それはどうかな」と言うときに、左側にはミリタリーを思わせる写真などが見えます。
また、骨壷のような物もあり、大事にされており、ぴかぴかに磨かれているようです。
右上の写真に写っている青年、亡くなった息子なのかな?
ちなみに、「never goodbye always see you l(ater)」のポスターも飾られていますね。まさかボーとも、See you later(また後で)する気...?
とりあえず、この家には複雑な事情がありそうです。アリ・アスター監督の十八番、それはワケアリ家族。

ボーが逃走する際に彼の身に付いていた謎の水色液体に関しては、1:57辺りで再登場します。液体の正体は、今考えても多分無駄だからやめておきます✌

この段落について語りたい点ですが、朝と夜が一瞬で切り替わるの、やっぱ大すこだわ。
『ヘレディタリー』、『ミッドサマー』本編でもこのように、瞬く間に朝と夜が入れ替わるシーンがありましたよね。私的にはそれがたまんないのですよ…。
観客の時間感覚を能動的にめちゃくちゃにするのもまた、アリ・アスター監督の得意技です。時間と空間に対する認識が乱れると、人はついついおかしくなっていくんですよね。
映画の主人公と同じ混乱と困惑に囚われてしまわれたが最後、もう逃げ出せない。

さすがだぞ! 人間の 弱点を ばっちり 理解 しているんだな!

・1:27~1:45

作り話の現実が、やがて作り話そのものに侵食される。
ボーが目覚めるは、作り物のジャングル。
”あなたの道のりは長い。”
彼が足をひきずり歩くは、絵本から取り出したような町。道は、赤いレンガで出来ている。
”十里の道はやがて百里になり、百里の道はやがて千里になる。”
一瞬リアルに戻るも、作られた田園と雪原と砂漠とを、変わらない赤いレンガ道の上に一人で旅をする。
そして静かな宵の海に辿り着き、小舟に乗って、何処かへ向かっていく。
”この冒険は、何年も、何年も続いていくことでしょう。”
老年の姿のボーは弱々しく言う。
”家に帰らなければ…。”と。
”知ってる。”と、人間とはかけ離れた姿の女性が言う。
赤い髪と瞳だけが人間のそれに見えるこの女性
は、仮面を覆っているのか。ボー母親なのか。「人間に恐怖を植えつける形象」であること以外、全て不明である——

Q:俺、またなんかヤバいのをキメちゃいました?
A:そうだよ!狂え!

どこから話せばいいのかすらわからないんですよね。

まるで舞台の上に演劇しているかのように、小道具の森や町、雪原や熱風吹く砂漠を独りで歩いて行くボー。
これレンガ道は、彼が帰ろうとする家へ続く道なのだろうか。
また、服装的に、最初に見る壮年のボーではなく、カウボーイハットを被った中年の彼らしい。
そもそも彼は一体全体、どうしてこんな不思議な世界に迷い込んだのだ?
スラム街かよと言いたくなる街に、戦慄をもたらす知らぬ人の家。お世辞にも居心地が良いとは言えない場所にいた彼に、このおかしくも何処か美しい景色はどう映るのだ?

謎が謎を呼ぶ中、一つだけ明確にわかっていることがある。
それは、『Beau Is Afraid』は見る合法ハーブ最高にクレイジーだということ。ヤッハー!プルルルルァッーーー!!!!

年老いたボーを、彼の母親を思わせる不気味すぎる「何か」がそこはかとなく冷たさ感じる目で見下ろす構図。
家を求めて何千里の旅は、白髪の老人になってもなお、終わりが見えないようだ。

どうしてこうなった。時系列どうなってんだ。
と、色々と聞きたくなるが、現実から遠ざかって、混沌に落ちていくにこの感覚も嫌いではないです。
「Chaos? I call it fun!」つってね。

・1:45~末尾

——最大の恐怖が、最上の冒険譚を成就する。
カオスの獣が暴れまわる。
激しい弾幕の中で逃げ惑う。時を超えた口づけ。甲高い絶叫。
”奴をブチ切れー!”と、謎の水色液体を口の周りにし、般若のように、涙目で叫ぶ女性。
舞台背景のような戦乱に蹂躙された廃墟にて、ボーを捕まえようとする仮面の男達。拳銃を撃つ男。猛烈な蹴りで応否無く開かれる扉。
”何故嘘を付いたんだよ?!”と誰かを問い詰める。空を見上げ、恐怖を覚える。風呂の中でも安寧を得られない。
”今、この場で、真実を知りたい?”声の主は、母親なのか。
秋を想起させる舞台、斧にて足に繋がれた鎖を断ち切る。爆散する人体。舞台には天使の姿の、仮面の母親が吊るされている。
”ああそうだよ!”声を荒げる。
頭を打たれる。再びクルーズ船上の、昔の自分と母を見る。舞台と観客。抱きしめる男達。
彼は、振り返る。自由を手に入れたのか、羽ばたく天使を背に、また、歩いて行く——

扉バーーン!!!!!!!!!!!!

時間も空間も人物も、人々が生きていく上の基本となるありとあらゆるが交錯して、乱反射する。

もう心の中で何回つぶやいたことか。「こんなの絶対おかしいよ(CV:悠木碧)」って。「わけがわからないよ(CV:加藤英美里)」って。
ただこの「未知との遭遇」かのような感覚も、決して悪くはありません。もっとくれ。
少しだけ、アレハンドロ・ホドロフスキー
なんか、かの名高い『ホーリー・マウンテン』(1973)を観る時と同じ気分になりましたね。観ていると自分の現実まで少しずつひび割れてしまいそうな。
『Beau Is Afraid』、令和のカルト映画になるポテンシャルがありすぎる。
ボーは何に恐れているのかはまだはっきりとはわかりませんが、私はアリ・アスター監督を恐れていますわ。『Isaribi Is Afraid』、乞うご期待!

まあ、というわけで、ぶっちゃけ謎だらけなのでこの段落はなんとも言えない感が強いんです(※思考力と語彙力が足りないだけ)が、本節の締めとしていくつか見ていきます。

注目していただきたい点は、このシーンで、ボーが接吻をするのは生身の人間ではなく、絵画、つまり二次元的存在なんですよね。
えー私も出来るようになりたい。でもそれがアリ・アスター監督作品の登場人物になることを意味するのならやっぱり遠慮しときます。
なんというか、連続で異なる年齢のボーが接吻をするシーンの中でも、こちらが特に好きですよね。
ただ、ファンタジックでいいなと思う一方、リアリティの欠如が進んでいると捉えられる場面でもあるので、純粋な気持ちで素敵~!とも言いにくい…

予告の中で、多分一番「恐怖」という感情をむき出しているボーがこちらです。
一体彼は、何を見たのだろうか。腰が抜ける程恐ろしいそれを目にしたら、我々観客も同じ恐怖に陥ってしまうのか。
SAN値チェックです。1D100/1D100。

正体表したね。

前段落で春、夏、冬を思わせる季節を歩いたボーだが、ここで秋が補完されるとはね。
秋は本作において何か特別な意味があるのか、そして何故ここでボーが鎖に繋がれていて、他の3つの季節では歩けたのか。
実りと朽ちゆく、相反の性質をどちらも象徴する秋だからこそ、想像の幅が広がります。

舞台装置として宙に浮かぶ、天使姿の母親。おいこの天使、罪喰いよりヤバそうに見えるぞ。
聖なる装いこそ纏うが、やはり仮面を付けていて不祥である。ボーの畏怖の対象であろう母親がこの姿で登場することには、何か大きな意味があるでしょう。

次に、こちらが私が全予告中でもっとも興味深いシーンの一つです。
老人のボーがなんらかの芝居の舞台上の演者と、互いに向かってゆるりと歩いていく。他の観客は皆、それに反応なしに観劇を続ける。
舞台の左側にいる女性について、彼女も謎の仮面を付けている。

この舞台は、A24マークが出た時の背景になっています。この時点でもう、重要な場所なのに違いありませんね。
なお、小道具に描かれている窓ですが、『ミッドサマー』にて大きな役割を持つ、メイポールを彷彿させる模様が入っています。また、横と縦の線が交差することで、反キリストのシンボルとして知られる逆十字も描かれており、悪魔崇拝をメインテーマにした『ヘレディタリー』のことを思い出させる。
ただの、発狂オタク特有の深読みかもしれませんが、なかなか興味深いです。

また、舞台上の男の演者達が降りてきて老人姿のボーと一家団欒かのように微笑みながら抱き合いますが、まさに「舞台上の芝居(作り話・幻想)が現実になる」ということで、「(ボーの)現実が舞台上の芝居に囚われる」と相対しているように私は思いました。

赤いレンガ道、斧を手に、ゆっくりと向こう側へと行く。一片のカブに似た緑色。
不気味な天使に見守れながら、彼はどこへ向かっていくのか——

いよいよ予告のラストシーン。ここで、自ら鎖を切ったボーが、旅を再開するようです。
なんか『Beau Is Afraid』でも、『オズの魔法使い』を取り入れたように見えますが、どうなんでしょう。
どこまでも続くレンガ道に家への帰還を望む主人公。いや、容姿的に、ドロシーではなくてブリキの木こりか。
『オズの魔法使い』と関係なくても、ラストシーンに選抜されたこの景色は物語の核心に位置するモノのメタファーでしょう。

 

          おまけ ~曲について~

予告動画を観ていこうツアーの終わりとして、この予告内で使われた曲についても触っていこうと思います。

ベッドの上でボーが目覚める時から流れる曲なんですが、こちらは、Supertrampさんによる「Goodbye Stranger」です。初出が1979年のようで、44年もの歴史がある曲です。
いかにも軽快な調べなので、画面上に起きるめくるめく奇々怪々とは全く似合わないと思うのは無理もありません。
しかし、この曲の歌詞も一度読めば、腑に落ちると思います。
なんとこの曲は、「見知らぬ人々としばしの繋がりを得るも、すぐに自分の旅に戻る男」の歌なんです。
以下、歌詞の一部を、例のガバ訳を添えて紹介します。

It was an early morning yesterday
I was up before the dawn
And I really have enjoyed my stay
But I must be moving on
昨日の早朝のことだ
俺は夜明け前にもう目覚めたんだ
この地は本当に素晴らしかった
でも俺は進まなければいけないのさ

Like a king without a castle
Like a queen without a throne
I'm an early morning lover
And I must be moving on

城を持たない国王のように
玉座を持たない女王のように
俺は早朝を愛する人間で
進まなければいけない人間さ

このように、歌の主人公は、一つの地に決して留まらず、放浪の旅をあくまで続けていきます。
旅を生涯続けて、数多の人々と出会うであろうボーに、ぴったりな曲じゃないですか!
まあ、ボーの場合は、好んでこの道を選んだかどうか怪しいのですが。

Goodbye stranger
It's been nice
Hope you find your paradise
Tried to see your point of view
Hope your dreams will all come true

さよなら、見知らぬ人よ
とても楽しかった
君が自分の楽園に辿り着くことを祈ってる
君の視点で世界を見ようともした
君の夢が叶えるといいね、そう思ってるよ

この部分を抜粋したのは、「Tried to see your point of view」というフレーズの為です。
主人公が、出会った人に対して、理解を示す為の言葉のはずだが、予告からして、「見る」という行為は本作に置いて重要なポジションにいると感じたので、何かあるんじゃないかと思ってしまいます。

「恐怖は身体感覚の延長」という、伊藤龍平博士が著書『何かが後をついてくる――妖怪と身体感覚』で提唱しているこのセオリーに関して、私は賛同しています。
振り返れば、ボーは常に、何処かもしくは何かに視線を向けている中、「Afraid(恐れる)」の感情を表しています。
そうすると、やはり、「見る・視覚」が『Beau Is Afraid』における大きな恐怖の媒介と考えたほうが良さそうではないでしょうか。まあ、そもそも映像なので視覚に訴えるのは至極当然のことですが、それをもう上回ってくれるんじゃないか、という期待も込めて。
あと、予告内に満ちている視覚上の錯乱が、「他の誰かと視覚を共有している為」によるのだったら、それはそれで面白そうですよね。

以前の『ミッドサマー』考察記事では言及しなかったが、アリ・アスター監督の選曲センスも、実に見事なものですよね。
今回の「Goodbye Stranger」然り、『ミッドサマー』のエンディング曲として「The Sun Ain't Gonna Shine (Anymore)(太陽はもう二度と輝かない)」を選択したのもすげぇーとしか言いようがない。

『Beau Is Afraid』抜きでも、「Goodbye Stranger」は聞きやすく、味わい深い曲ですので、ぜひ一度お聞きいただければと。

 

              まとめ

とりあえず予告を最初から最後まで観てきて、自分なりの考察というか妄想を書きましたが、私が知っているのは、自分が何も知らないということだけだ。
あ~~~早く映画本編をキメたい~~~~公開はよ~~~~~~ワルプルギスの廻天もはよ公開されて~~~~~~(関係ない作品の話もしてしまって誠に申し訳ありません。)

公開までの公式の動きも楽しみですね。『ミッドサマー』は予告動画が2本も出ましたし、今回もか?って期待しちゃいます。
皆さんは予告を観て何を思ったか、また何か気づいたことがあるか、もしよろしければ是非私にも知らせてください。オタクは他の人の感想が知りたい生き物なので。

あ、そういえば、ホラー映画ではないんですが、皆さんは同様にA24制作の、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス(Everything Everywhere All at Once、略してEEAAO)』を観る予定はありますか?
日本では今年3月3日公開ですが、私は海外に住んでいる為、もう観ているんですよね。
日本未公開なんでストーリーの詳細や自分の感想は控えますが、これだけは言っておきますね。

観てみな。飛ぶぞ。

多分『Beau Is Afraid』が公開されたら同じことを言います。
最後の最後でまさかの別作品の話になってしまいました。本当にすみません。

以上、恐怖を込めて、漁火でした。
それでは、また次回お会いしましょう。私が記事書けたら、になるんですけれども…。(本編公開後の感想の記事は絶対書きたいです)(考察の記事書くと言わないことで保険をかけています)

※『Beau Is Afraid』は今年4月にて全米公開の予定。日本では公開時期未定ですがハピネットファントム・スタジオ配給で公開予定です。なお、過激な暴力表現・裸体などにより、米国ではR指定とのことです。

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