日本酒が醸すアナログな関係性を引き継いだ小口商店の第三者承継
函館地域承継ストーリー 継ぐ人、継がせる人。
今回は、函館市港町で地酒に特化した酒屋を営む有限会社小口商店の冨樫佳江さんを取材しました。道南ではちょっとここでしか買えないかもと思わせる日本酒を数多くそろえる小口商店。3年ほど前、事業売却により先代から冨樫さんに第三者承継されています。人や地域、蔵元との関係性を大事にする小口商店の事業承継について、その経緯をお聞きしました。
【函館地域承継ストーリー#3】
有限会社小口商店 代表取締役 冨樫 佳江(かえ)さん
地域に根付いた酒屋
ーまずは、小口商店について教えてください。
冨樫:函館市港町のフェリーターミナル近くにある酒屋です。全国各地の厳選した日本酒をメインに焼酎・リキュール・ワインなどを販売しています。
ー創業はいつごろなんですか?
冨樫:会社の設立は、昭和56年(1981年)です。先々代と先代が2人でスタートしたと聞いています。最初はサイダーや飲料水なんかを大きいトラックで地域に配達する、まさしく商店といった営業形態だったそうです。
ーどうしてお酒…とくに日本酒に特化するようになったんですか?
冨樫:先代が普通の商店じゃ生き残れないと考えて、地酒に特化したそうです。先代はそこまでお酒が飲めるわけじゃないんですけど、ご自身で酒造を巡られて独自のルートを開拓、今の小口商店を築かれたと聞いています。その当時は、まだ地酒特化型の酒屋というのは少なくて、函館でもはじめのほうだったようです。
ー場所はずっと港町なんですか?
冨樫:そうですね。場所はずっとここです。
ーこの場所だと北海道大学の学生さんもよく来ていただけそうですね。
冨樫:よく来てくれますね。先代の時には、アルバイトとして働いてもらっていた時期もあります。先代は、若い方と遊ぶのがお好きなんですよ。学生さんと釣りだとか山菜採りなんかによく行っていたみたいです。
体調を考えて引退を決められたんですけど、遊びは大好きで、釣りや山菜取りには今でも出かけてるみたいです。
ー地域に根付いた酒屋さんなんですね。お客様は学生さんがメインなんですか?
冨樫:若い方にも来ていただいているんですが、やっぱり古くからの常連さんが多いですね。私の代になってFacebookやInstagramを始めたんですけど、最近はそちらをご覧になってお越しくださる方も増えてきました。
ー今までのお客様に加え、冨樫さんが新たに呼び込まれたお客様もいらっしゃるんですね。SNS経由だと市外の方もお越しになるんじゃないですか?
冨樫:八雲や長万部からもお越しいただいていますね。
ー道南の日本酒好きが集まってきてるんですね。SNSはどうして始めようと思ったんですか?
冨樫:せっかく継がせてもらったので、今までのお客様だけでなく新たなお客様にもお越しいただきたいと思いました。そのためにはこちらから発信する、見てもらう工夫が必要だと感じたんです。
ーそれが効果を上げているわけですね。Instagramのあのお酒ありますか?みたいな機会もある。
冨樫:ありますね。酒造のファンも多いので、人気のものは投稿するとすぐ反応があって売り切れちゃいます。お客様の中には「Instagramにアップされたからすぐにいかなきゃと思って来ました。」という方もいらっしゃいますね。
ー先代の努力と冨樫さんの努力がかけ合わさって新たなお客様を呼び込んでいるんですね。
冨樫:実際に継ぐまでは、自分にできるんだろうかって不安だったんですけど、0からのスタートじゃないので、すべてが揃っている中にポンッと来たのでやれていると思います。事業承継っていうのは、なにかをしたいって方にはとても良いものだなと思いますね。
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