生活の柄
とあるイラストレーター向けの書籍に自分のキャッチコピーをつけると良いと書いてあるのを見た時からプロフィールに生活の柄をテーマに絵を描いていると載せている。ホームページのタイトルにも『Pattern of daily life』と銘打っている。
この生活の柄というのは私の好きな「生活の柄」という高田渡さんの歌から来ている。
ちょうどSOZIさんのpib book 第一弾の「Pattern」にイラストを載せませんかとお声をかけてもらったタイミングと己のキャッチコピーを考えていた時期が同じくらいでPattern→柄→生活の柄と連想してつけた記憶がある。
その時の私はおしゃれで可愛いという表層的な部分しか考えていなかったのであまりこの生活の柄と冠して活動していた割に深く考えていなかった。この響きが気に入っていて、服や器などの模様が好きでよく描いていたからちょうど良いなくらいの考えだった。
そこから数年経った今、生活することと制作をすること、失敗を繰り返しながらやってきて自分が掲げたテーマである『生活の柄』というものを改めて考えている。
これで良いのだと自分に言い聞かせつつ、これで良いのか?と眠れなくなる。このままではいけないと薄々気づいているが、なんともないようなふりをして生きている。元の歌を聞けば聞くほど他人のこととは思えない。
いろんなお仕事を少しずつご依頼をいただく機会もあったが、基本的には家計は火の車でいろんなことが限界に来ていた。
そんなこんなで昨年は生活を立て直すことに重きを置いて創作活動と少し距離を置いた。今までは楽しそうなことにお声がかかれば二つ返事で、採算度外視であれやこれややって周囲に迷惑をかけてしまったり、活動すればするほど自分の作りたいものや目指したいものがよくわからなくなって苦しくなっていた。
一度立ち止まって、私が目指したいことってなんだろう。私のイラストレーションの役割ってなんだろう。そんなことを自問自答を繰り返して一年経つのだが、最近ようやく何かこれかもということが見えてきた。
それが『生活の柄』である。
表層的な可愛さを求めて絵を描くことの限界を感じて何を描けば良いか分からなくなっていた長い暗いトンネルの中、いろんな場所に行き、いろんな景色を見て、美味しいものを食べたりして日々生活している中には残しておきたい記憶や風景、色や形、匂いがたくさんあることを改めて知った。
最初からなんとなく分かっていたのかもしれないけど自分の中で生活すること、制作することは切り離せないことだ実感として気づいて、それを絵にすればいいなと思ったら気持ちが楽になってきた。
日々生活が織りなすものは柄となるのだ。
そう思ったら最近は目に映るもの全てが面白く感じている。
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