見出し画像

TRANSIT in TaipeiとRes ArtisとTASAの日々①ーTRANSIT in Taipei編

2023年秋、毎年行われているRes Artis(アーティスト・イン・レジデンスの国際会議)の次年度の開催地が台湾である情報を得た。その時ぼんやりと、Res Artisに参加すること、それに合わせて台湾でPARADISE AIRの展示をやったらどうか、と考え始めました。

2019年に京都でRes Artisが開催された際、当時アートホステルとして営業していたKumagusuku(現在は小規模アート複合施設へとリニューアル)で宿泊しながら展示を行いました。その際Res Artisに参加していた多くの団体が展示を見に来てくれて、そこから交換プログラムやさまざまなレジデンス同士のネットワークが生まれたことが大きな出来事でした。

2019年の「TRANSIT in Kyoto」の様子。この時はRes Artisのエクスカーションの一環ということもあり、多くの関係者が訪れてくれました。

台湾ならばメンバーの萌ちゃんも移住して「Taipei Wing」というPARADISE AIRの派生プロジェクトもスタートしている。パンデミック後の世界と、どう繋がれるかという興味もある。またちょうどPARADISE AIRが2023年に10周年を迎え、改めて私達の活動をプレゼンテーションするという機会になるのでは?など、数年ぶりの開催に向けていろいろな想いが巡りました。

そうこうするうちに年が明け、まずは10周年記念本「POWERS OF TEN」を英訳する作業に取り掛かりました。来る台湾でのお披露目を目指し、PARADISE AIRの運営メンバーでもある田村かのこさん率いるArt Translators Collective(以下ATC)の皆さんに翻訳をお願いをしました。

ただ、予算上の問題もあり、日本語の内容をすべて英訳することが難しい事が判明。熟考の末、新たに海外の読者に向けた構成に再編集することとなりました。日本語でも相当な時間と労力をかけて校正したテキストたちを、再度編集するのか…と一時途方に暮れながらもATCのメンバーの方々と、どのような内容にしたらPARADISE AIRらしさを失わず、この本を英語版としてまとめることができるのか。話し合い重ね、翻訳作業を進めていきました。

完成した英語版は、運営メンバーの対話からスタートしています。過去、今、そしてまだ見ぬ未来。全部で10個のキーワードからなる、PARADISE AIRを運営する人の顔が見えることに重点を置いて制作した一冊です。

翻訳ほやほやの本を「TRANSIT in Taipei」でお披露目

英語版はPARADISE AIRの紹介として、PDFで無料で公開しています。ぜひ私達の活動を世界に知っていただきたく、お知り合いの方など興味のある方にぜひ、ご共有ください。

ビジュアルブックとテキストブックが含まれた完全版は限定600部の刊行です。10年をまとめた貴重な資料ですのでぜひお求めください。

さて、その10周年の本を携えて行った「TRANSIT in Taipei」はRes Artis会場の近くにあるKishibe Café 岸畔咖啡にて展示を行いました。

オーナーがジョジョの岸辺露伴好きということで名前の由来はそこから。このカフェはオルタナティブスペースとしても機能しており、ライブパフォーマンスやアート展を随時開催しています。

今回は、いつも写真撮影をしてくれている加藤甫くんの膨大な写真の中からメンバーがそれぞれの視点でセレクトしました。前回の展示がコロナ前だったこと。また、ここ数年新たなメンバーが増えたこともあり、今回は2020年以降の写真も多く、パンデミック前の活動から現在の最新の活動に至るまでの展示内容になりました。

「TRANSIT」のロゴは長尾周平さん。そのロゴを引き継ぎ、台湾では背景に
新たなグラフィックを作り、風呂敷として制作しました。
「歡迎來到日本的藝術村(日本のアーティスト・イン・レジデンスにようこそ)」の
グラフィカルな文字は美山有さんによるデザインです。

写真のセレクトというのは地味で大変な作業でもあります。でも、こんな時間があったんだな、とか、こんなシーンも残ってたんだ、という新たな発見も多い作業で、個人的には色んな意味で勉強になる時間です。

カフェ空間に、新旧織り交じったこれまでの時間を展示。

「TRANSIT」という展示はただ、写真を展示するだけではなくPARADISE AIRのスタッフが展示会場で在廊することでやっと成立するものだと思っています。展示された写真の中にある時間は、コーディネーターの数だけ違うエピソードがあるはずです。それをお客さんとシェアすること。なかなか外からは見えづらいアーティスト・イン・レジデンスという活動ではありますが、そのエピソードから伝わるアーティストの姿は、松戸の中で生きる一人の人間の時間が浮かび上がってくるように思います。

折角の機会なので、会場の一角で日本のアーティスト・イン・レジデンスの
活動紹介コーナーも設けました。

今回、初めて海外で「TRANSIT」展を行えたことの喜びも大きいですが、見に来てくれた方が私達が写真を解説しているときにとても楽しそうにそのエピソードを語ってくれた、とか、以前滞在してくれた台湾在住のアーティストやインターンの子たちが見に来てくれて当時の思い出とともに今の自身の活動の話を聞かせてくれたり。その時間の交差こそが「TRANSIT」で味わえる醍醐味でもあります。

そうやって定期的に写真や映像など記録物で私達の活動を振り返ることは、今後に向かうパワーにもなると同時に、この活動を松戸で行っていてよかったなと思える時間をかけた答え合わせのような感覚にもなります。ものごとの移り変わりが激しい昨今、長く続けていくことはなかなか厳しい局面に立たされることが多いです。やっと10年、まだ10年、その尺度の感じ方もそれぞれかも知れません。

でも、こうして何か振り返る機会があるたびに少しはなにかを残せたかも知れない、とやっと思えるようになります。日々は小さな喜びの一進一退です。少しずつですが、新たな展示や記録物としてさまざまな”TRANSIT”(=移り変わり)をみなさまにお見せできるよう、また日々を積み重ねていこうと思います。

「TRANSIT」の冊子版「TRANSIT Portable」についてはこちらの記事もぜひご覧ください。

いいなと思ったら応援しよう!