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Let's 体験!2016

この夏、はじめて中高生向けにパラダイスエアの活動を体験していただくというワークショップ企画「Let's 体験!2016」を行いました。

いつもアーティストがやってくるたびに私たちスタッフが松戸の案内をします。生活に必要なスーパーやお気に入りの場所、公園、江戸川、飲み屋さん、紹介する場所はスタッフによりそれぞれで、その違いこそが実は面白いところです。いい意味でムラがあり、その人が何を松戸で重要としているのか。それがルートから浮かび上がってくる気がしています。ちなみに僕は必ず松戸神社に行きます。地域の神様に、無事に彼らの活動が行えますように、とお願いするために。

そんな松戸ツアーを、参加してくれる学生の皆さんと一緒に考えよう。なかなか分かりにくい私たちの活動を知ってもらうこともそうですが、海外のアーティストとも交流して欲しい。そして、彼らの視点で選んだ場所が私たちにとっても発見につながるかもしれないし、彼らが知らない場所であれば、松戸の魅力に気づいてもらえるかもしれないという考えもありました。

なんとなくふと思いついた事をそのままプログラムにしたので、実施に至るまではかなりの検証が必要でした。中高生がどこまで英語で話せるのか、松戸の紹介と言っても漠然としてるのでどう意見を引き出すか、8月の炎天下の中の街歩きはどうなのか…などなど。しかし、やってみないとこればっかりはわかりません。

実際応募をしてくださった学生の皆さんは何らかのかたちで海外に興味があったり、美術に興味があったりする方もいれば、面白そうだからという子達まで様々、中学生もいれば、高校生もいます。

この日は滞在中のカナダからやってきた漫画家のメーガン・ランズと、アメリカからエリース・ブロードウェイが参加してくれました。

メーガンは日記スタイルで自分の生活を漫画にしたり、また絵本の挿絵を描いたりしているアーティスト。滞在中も日本での出来事をスケッチブックに書き溜めてこれから漫画として描くのか、ネタ帳のごとくまだ数日の日本滞在でもアイデアがぎっしり詰まっていました。
エリースは大学で東洋の文化(思想なども)学び、自ら描く絵にもアジア的なモチーフがいくつか描かれています。日本の小説や古い漫画本に絵を描いたりして日本のポップカルチャーも好きなようでした。

当日、少し緊張した面持ちの皆さんと自己紹介を交えて、私たちの活動の紹介、アーティストの活動の紹介をしました。そして、松戸でどんな場所を知りたいかなどを聞いた上で、紹介したい場所をチームに分かれて考えることにしました。チームはランダムで中学生と高校生も交えてバラバラにして。

アーティストのリクエストやそれぞれの作風をヒアリングしてみんなで訪れる場所のマップを相談しながら制作していきます。メーガンは漫画の画材を買いたい、というリクエストが出ていたのでどこで買えるのか、エリースは日本の文化にも興味があるので松戸の神社など紹介したらいいんじゃないか、など。

ですがなかなかこれが難しい。なぜ難しいかというと住んでみたり通学していると私たちにとっては「普通」なのでそれはあんまり特別感のある出来事ではないということ。アーティストに、どうやって魅力的に伝える事が出来るのか、そして言葉の壁…なんだか難しい問題ばかりが持ち上がって一日目が終わりました。

二日目、もう少しアーティストと参加した皆さんが交流をして欲しいと思い、ゲームをしました。皆に英語でニックネームをつける。そして、せっかく絵を描くアーティストがいるので、絵を使った伝言ゲームをやりました。それぞれ出したお題が時に正確に、時に奇妙に絵で伝わっていくようすが何とも面白かったです。ここで、すこし皆さんが打ち解けてくれたようでした。

そして、おすすめの場所を一人ずつアーティストに発表します。

自分の言葉で、それを英語にまで翻訳してどこがおすすめなのか、どんな場所なのか思い思いにプレゼンテーションしてくれました。絵が得意な子は絵を描いて来てくれたり、前日に親御さんに相談して一緒に考えてくれたり、その場のノリで説明します!なんてチャレンジ精神あふれる子もいました。場所もブックオフ、松戸神社、アニメイト、戸定邸、本屋さん、サンリオのショップなどなど本当にさまざま!

そして実際にプレゼンテーションをしたあと、いくつかの場所に実際に行ってみることに。メーガンが好きそうな絵本がたくさんあるブックオフや、道すがらにあった、たい焼き店でたい焼きを買ったり、アニメショップでは意外にもジュエリーデザイナーのマルタ・ボーアンが販売されているストラップに強い興味を示したり…とアーティストそれぞれにナイスな反応を繰り広げてくれ、私たちの「普通」の景色がいきなり新鮮な風景に変わった瞬間でした。

一番食いつきが良かったのがプリクラ。デコレーション機能と、今は目が大きくなったり肌がきれいになったり、そんな機能をもの凄い勢いで楽しむ女子チーム。

そんな楽しい松戸巡り。暑さの兼ね合いで紹介してくれた全ては回れませんでしたが、アーティストと参加者の皆さんの距離も初日に比べたらぐっと縮まって、それこそガイドブックにはない彼らが考えたオリジナルな松戸めぐりが出来ました。初めに考えていた方向とはいい意味で裏切られ、彼らの世代がどう松戸を見ているかも垣間みれたような時間でした。

活動の最後、アーティストから今日の感想とみんなからも感想を貰い参加証を渡すことに。パラダイスエアではちょっと特別仕様にしてアーティストのサイン付きで。メーガンはなんとイラストも一緒に!世界に一枚の特別な参加証に。

最後、僕からみんなにひとこと。今回の楽しい思い出はそのままに。出来なかった事やなんだかよくわかんなかったな、とか、出来なくて悔しかったことは、これからの人生の中で解決していけば良いと思っています。

パラダイスエアは学校ではないので、なにかを専門的に教える場所では残念ながらありません。でも、きっと普段の学校ではなかなか感じられない事を、たくさん感じて、そして考えてもらえる場所だとは思います。年齢も、通っている学校も違う中学生と高校生と一緒に活動する事だって、普段とは違う人に接する貴重な機会です。今はまだその時期ではないかもしれませんが、一歩外に出たら本当にたくさんのものがあります。答えや正解を見つけることが目的ではないのです。そして、今回の体験はひとつの通過点です。

おまけで、その日は松戸の献灯祭りだったので希望者と一緒にお祭りに出掛け、アーティストと一緒に灯籠に絵を描いて坂川に流しました。

こうやってひと夏の短い時間でしたが中高生の皆さんと一緒にプログラムが出来て僕自身も本当に勉強になりました。来年もこのプログラムはぜひ開催したいと思っています。そしてまた来年やってくるアーティストは違うので、きっと違った内容となることでしょう。メーガン、エリース、マルタ、3人のたまたま同じ時期に滞在した女性アーティストたち。松戸で働き始めて初めての行事や参加者の皆さんと一緒に感じられた夏。3人のアーティストのエネルギーはパンチの効いたひと夏の思い出です。

Photo|Hajime KATO

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