
成功と失敗の関係は?
あなたはどのパターン?
DoubRingを用いた今回の問題は「成功と失敗の関係を2つの円でどのように表現しますか?」です。例によって大小関係と交接関係のみに着目して以下のDoubRingの9パターンから選んで下さい。
皆さんはどのパターンを選んだでしょうか?以下は日本人約1,500名の回答結果を示したものです。
いくつか多数派の選択肢を取り上げていきましょう。一番多かったのが約3割の人が選んだパターン9、つまり「失敗の中に成功がある」という関係です。2番目はパターン5、つまり「両者が同じ大きさで一部重なっている」という関係です。そして同率3番目に現れるのが、ある意味でパターン9の正反対ともいえる「成功の中に失敗がある」パターン3、そしてパターン8の「失敗の方が大きいが一部成功と重なっている」です。
多様な「成功と失敗」の価値観
次にこれらの結果がなぜこのようにばらつくのかを考察してみましょう。この結果には、各個人の様々な成功観、失敗観が表れていると考えられます。もちろんどういうことを考えて各自が各々の選択肢を選んだかは正確にはわかりませんが、いくつかの仮説を立ててみます。
失敗は偶然か必然か?
まずは上位の中で、正反対の関係とも言えるパターン3とパターン9の違いに関して考えてみましょう(下図参照)。
そもそも失敗の方が大きいのか、成功の方が大きいのかの違いの一つはこれらの量的な比較にあると考えられます。つまり自分にとっては根本的に失敗の方が成功より多いのか、成功の方が失敗よりも多いのかという比較です。
まずそこで比較対象として取り上げるのが「攻め」と「守り」の関係です。例えば野球やサッカー等のスポーツを考えてみましょう。守備というのは基本的に「うまくできて当たり前」という前提があります。野球で言えば、10回球が飛んでくればそのうち1回でもエラーすれば責められるのではないでしょうか?対して打撃という「攻め」に関しては3割バッターは一流、4割なんていうのは「超一流」(以上)ということになります。
サッカーでもキーパーはどちらかといえば「止めて当たり前」、ストライカーは「決めればヒーロー」という関係になるでしょう。
このようなことから、「攻め」の志向が強い人がパターン9、「守り」の志向が強い人がパターン3になると推測されます。
「確率論」と「決定論」の違い
このような「攻め」と「守り」の違いの根本にあるのは、攻めに関しては「ある程度数を打たなければ成功せず、数を打つ以上は失敗はある程度はつきものである」という暗黙の了解があります。対して守りに関しては、「基本的に失敗には原因があり、うまくいかなかったものはその原因を徹底的に追及して再発を防止すべし」という考え方の方が支配的です。
このような「失敗は初めから織り込み済みなので、数を打つことで成功を狙う」という確率論的かつ加点主義的な考え方というのは、会社で言えばスタートアップやベンチャー企業によくある考え方です。
対して「失敗には原因があるから、徹底的に原因分析をした上で最善の対策をして極力なくすべし」という決定論かつ減点主義的な考え方は大企業に多く見られる考え方です。
「成功と失敗」は同意語?
もう一つ別の視点から見てみましょう。
「成功の反意語は?」と聞かれれば多くの人は「失敗」と答えると思います。その意味においては両者が対等になって対峙しあっているパターン4,5はそのような視点を反映していると考えられます。
それでは成功と失敗が「完全に重なっている」パターン6はどのように解釈すれば良いのでしょうか?下図を見て下さい。
成功と失敗が左右の対極で真ん中がどちらでもないという一段目の直線を、真ん中で折り曲げてみたのが図の二段目です。左側に成功と失敗が重なり、右の対極が「どちらでもない」になります。
さらにこれを別の解釈で眺めると図の三段目になります。
成功と失敗は、いずれも「何かに挑戦した結果」という点で「同じ」になり、反対は「何もしない」という関係です。これがパターン6の世界観ということになるでしょう。
このような世界観を別の視点で見ると、過去を見ているか未来を見ているかの違いからくると考えられないでしょうか?「これからやること」には失敗も成功もなく、そこにあるのは「挑戦」のみ、過去を振り返る人にはそれらが(既に結果が出ているので)成功や失敗に見えるというわけです。
失敗は成功するまでの過程?
最後にもう一つの「成功と失敗観」です。それに関連して松下幸之助さんの有名な言葉を引用しましょう。
「成功とは成功するまでやり続けること。失敗とは成功するまでに諦めてしまうこと。」(引用元:『あの人の人生を変えた運命の言葉100』(本田有明:PHP文庫)
この世界観からは、失敗というのは成功に至るまでの途中経過やプロセスであって、そもそも同列のものではないという解釈ができます。
あるいは似たような発想で「失敗とはそこから学ぶ教材」と考えれば、失敗という概念自体が存在しないという価値観もあるかも知れません。
そうなるとそれらを「2つの円」で表現すること自体が難しいということになり、回答はいずれのパターンでもない「その他」になった可能性もあります。
恐らくこの他にも多くの「成功と失敗観」があるでしょう。DoubRingの回答のばらつきからもその多様性の一端を垣間見ることができます。
さらにDoubRingの詳細について知りたい方、さらに世界16の国・地域からのデータを集計した結果を見たい方は、こちらのWebPageを参照下さい。