見出し画像

俺、癌だってさ

人間ドックに行ったら、「大学病院に行ってね」と言われて、2週間後くらいの日にちを決められました。

これに限らず、大学病院に通ってる今でもそうなんですけど、
「じゃあ次は*日の*時に来てくださいね」
「明後日から入院してくださいね」
ってなんのエクスキューズも無しに決められるんですけど、こっちの都合って考えてるんだろうか、なんて時々思ったりもする。
ただ、それが最短の日時なんでしょうから、すべての予定を投げ出してでも従うべきなだろうな、特にこと医療に関しては、とも思い、納得したりもする。

前回も書きましたが、
大きめのポリープがあったから大学病院で内視鏡受けなきゃいけないんだろなー
と思いこんでた私。
それ以外の選択肢があるなんて考えもしなかった。

来院当日。
仕事の合間に人生初の大学病院に。

はぇ~、でっかい。
色んな科がある。
人の数もすごい。
ここにいる人みんな何かしらの病気なのかなぁ。
なにか建物全体が負のオーラを帯びている気がする。
なんてキョロキョロしながら、待つ、待つ、待つ。
そうか、これが噂には聞いていた、でかい病院の待ち時間なのか。

ようやく受付番号が表示される。
先生のいるお部屋に通される。
部屋にはお医者さんと看護師さん。
先生の前のディスプレイには検査の写真が映っている。
あれはきっと、私の大腸の中の写真だな。
「お願いしまーす」
と言って丸い椅子に腰掛ける。

お医者さま、開口一番

「いやぁ、よく見つけてくれました。」


え?
その枕詞、なんか知ってるような気がする。
なんだろう。
「たらちねの」だっけ?
違うな。
「ひさかたの」だっけ?
いや、ちょっと違うぞ。

私の思考速度を周回遅れにして、シナプスを置いてけぼりにした先生の口からは日常会話の雑談のごとき調子で。

「癌ですね。早期の。」

「はぁ????」


いまでも覚えてる。
すっごい素っ頓狂な声が出た。
40数年生きてきた人生の中でも、間違いなく3本の指に入るサプライズだった。

待て待て待て。
癌ってそんなに簡単に告げるものなの?

いや、逆にだ。
逆に考えるんだ。
「よく見つけてくれました」の後に、溜めて、溜めて、続きはCMの後でくらいの溜めを挟んで、「癌です」なんて言われたら、そっちの方がダメージでかいな。

ましてや、私は何も知らされず、家族が病院に呼ばれて嫁さんだけが真実を知る、なんて昔のドラマみたいなパターンだったとしたら、俺もう完全に◯亡フラグ立ってるじゃん。

近所の内科で
「ちょっと胃腸が弱ってますね」
くらいのノリとテンションで
「癌ですね」
って告知されるなんて夢にも思わなかった。
よもや。よもや。

その後は先生から、これが
「これが癌の箇所でー」
「これこれこういう手術をするからー」
なんて説明を受けたんだけど、えらく冷静な自分がいた。
むしろ、これはめったにない経験と、状況を楽しんでいるくらいまであった。

それもこれも、非常に早期だからきっと心配ない、なんていう意味のない自信があった。
普段、自信なんて全く無く、超絶ネガティブで、マイナス思考の私なのに、なぜこの時だけ超ポジティブに捉えられたのかは未だに謎。
もしかしたら、この時の自信のために、今までの人生をかけて自信をなくし続けてきて自信溜め込んでいたのかもしれない。

まとめると、この時の状況は
・1cm弱の癌が大腸のS状結腸というところにある
・ごく早期です
・2週間後に4日ほど入院してもらう
・内視鏡で癌細胞を取ります
ということでした

なんだ、内視鏡だから人間ドックでポリープ取ったのと同じじゃん。
と、その後1時間ほどかけて入院手続きの窓口に回されて、人生初の入院の手続きをして帰りました。
もちろん個室希望。
陰キャなんで大部屋とか耐えられない。
旅行行っても大部屋雑魚寝とかダメな私。

病院を後にして、仕事に戻る道すがら。
この癌を見つけるきっかけをくれた、肺癌サバイバーのA氏に「聞いて!聞いて!」と連絡をしようとアドレス帳を開く。

いや、待てよ。
やっぱりこういうのは、まず最初に家族に知らせるべきなのではなかろうか。
じゃぁ嫁さんに電話するか。
いや、待て。
いきなり電話かけて
「癌になった」
なんて言われたら、ちょっと不意打ち過ぎる。
電話で軽く伝えるか。
いや、そういう空気感で電話で伝えるのは何か違う気がする。
家に帰って軽いノリで伝えよう、さっきのお医者さんの如く。
あぁ、でも早くA氏に伝えたい。
と悶々としながら、仕事に戻りました。

そして、その日の夜。
夕食を食べながら、嫁さんに話しかけよう。
よーし、時は来た、サプライズだ。

「今日病院行ったんよ」
「うん」
「癌やってさー」
「え?保険は?」

そこかよ


驚く様子もなく、初手保険聞かれるとはこれまたサプライズ。
しかも、私、ノー保険。
なんっっっの保険もかけてません。
計画性ゼロ。
そして、嫁さん、自分自信にはゴリゴリに保険をかけていたことが判明。
バカな旦那ですまぬ…すまぬ…。
しかし、今考えても、なぜソコだったのかは謎のままである。


というわけで、人生でそうそう経験しないであろう、
癌告知
というイベントを体験したわけです。
人間が告知されるのって「受胎告知」か「癌告知」くらいでしょうよ。
言われた瞬間心拍数上がったのは覚えてますが、その後は本当に他人事のように聞いておりました。
自分ごととして考えたくない防衛本能だったのかな。
そしてその後は、むしろネタとしておもしろい、くらいに思っていたことをはっきりと覚えております。
その後、色々大変なことになるなんて、つゆ知らず。

さらーっと、癌だって教えてくれるのも、
それほど心配する病気じゃないし
今は癌は治る病気だし
昔とは医療体制が違うのでそんなに心配しないでいいよ
ってことだと思うので。

もし、早期の癌だって知らされて心配になってる人の目にこの記事が
止まることがあれば
大丈夫だよ

心配するな

私からはお伝えしたいな、と思いますよ。


次の話

いいなと思ったら応援しよう!