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愉快な3人のおじいちゃん

イケオジ ”コーちゃん”

お正月、何十年ぶりに中学校の同級生の”コーちゃん”に会いました。中学時代、近所に住んでいた”コーちゃん”は、毎朝、僕の家を通ると玄関の前で大きな声で「おはよー イサオいくぞー」
その声をきくと僕は玄関を飛び出し
先に歩き出す”コーちゃん"を追いかけました。
”コーちゃん”はサッカー部、背も高く、
エースストライカー、
シュンとした顔立ちで女子ににモテモテ、
クラスのキラキラグループ。
僕はというと背は低く、帰宅部、
生き物を捕まえ飼うのが趣味、
女の子と話したことなどありませんでした。

久しぶりに会った”コーちゃん”
背が高く、高級なダウンに
おしゃれなキャップをかぶる
今でもサッカーを楽しむ”イケオジ”でした。
久しぶりにお茶でもしながら話そうと、
某カフェチェーン店に入りました。
ソファー席に座りキャップをとると
頭の半分がおでこになっていました。
それなのにサイドから後頭部にかけて残っている毛を無理くり伸ばし、前にもってくるという
往生際悪い髪型をしていました。

中学生時代に好きだった女の子の話、
文化祭でやらかした恥ずかしい話、
なつかしい思い出話とともに、
最近の家族の話し、
奥さんが怖い話、
仕事の話し、
老眼、腰痛、疲れやすいことなど体調の話、
そして、髪の毛の話
髪の毛が生える薬はないのか、
これ以上抜けない方法はなどの話も

愉快な3人組

「ギャアー ギャアー ギャー」
お~起きたか
病院内に謎の生き物の声が響きわたります。
ノック爺ちゃんの声です。
ノック爺ちゃんは19歳のパピヨン、
飼い主さんが怪我をしたため、しばらく病院で預かることとなりました。
ノックの両目は緑内障のため
全く見えていません。
心臓病のため毎日の薬が必要です。
腰は90度近く曲がり、つねに鼻先を地面につけながら歩きます。
1日のうち22時間ほどは寝て過ごし、
起きると病院内を、ウロウロ、
そして、本棚の下の段、ごみ箱の横など狭い所に
頭をつっこんで動けなくなると、
大きな声で 「ギャアー ギャアー」
助けを求めます。
彼はバックができないのです。

声のする方を見に行くと、
ノックはトータのお腹に頭を突っ込み動けなくなっていました。
トータは18歳のミニチュアダックス、
やはり腰が60度ほど曲がっています。
その曲がった腰の下にノックが頭を突っ込んでいました。
白内障の目はかすかに見えています。
そしてトータもバックは出来ず、
その上、右にしか曲がれません。
トータが部屋の左すみにいたところに、
ノックが右側から押さえつけたような形に
なっていました。

そこにどこからか、ミルクちゃんが足をブルブルしながらやってきました。
ミルクちゃんはこの中では1番の若手の16歳、
ミニチュアダックス。
腰は45度ほどの曲がり、
いつも首を傾げています。
目はやや白く濁っていますが、若手だけあり、
ぼやけてはいますが見えている様子。
食べることが大好きで肥満気味、
ノックの声を聴き、何か食べているのではと近づいてきました。
知恵の輪のように絡み合って動けない2人の
横腹に体当たりして座り込みました。
3人の爺ちゃんワンコが絡み合って動けなくなっていました。

僕が獣医師になった30年前に比べ
ワンちゃんの飼い方が大きく変わりました。
昔は庭に犬小屋を置き、
チェーンにつないで飼っていました。
不審者が来ると吠える、
番犬の役割もありました。
しかし、現在のワンちゃんが室内で飼われ
家族の一員です。
いつも一緒にいるため早めに
体調の異常に気付きます。
獣医医療も研究が進み、
良い薬がたくさんでき、治療方法も増えたため、
ワンちゃんたちの寿命がぐっと延びました。
その為に以前はあまり見られなかった、
腰が曲がる、目が見えないなどの老化現象が多くみられます。

“老化”するとどうなるの?
ギャアー ギャアー 
今までの鳴き声と変わり、
抑揚のない単調な鳴き声になります。
腰が曲がる
関節をつないでいる椎間板の水分が少なくなり、
クッション性が失われ関節の間隔が狭くなり
腰が曲がってしまいます。
目が見えない
白内障などにより目が見えにくくなる
耳が遠くなる
歯がなくなる
同じ方向にしかまがらない
何故か右に旋回するワンちゃんが
多いように感じます。
前にしか歩かない、バックができない
バックするのは高度な行動、
首が傾く、眼球が震える、
耳の奥の前庭神経の障害です。
狭いところに入りたがる
そして、頑固になる

でもこの3人、目が見えなかろうが、
腰が曲がろうが、
足がヨタヨタしようが、
ちっとも落ち込んだりしません。
お腹が空くと起きあがり、
残った機能をフル活用して
食べ物を求めクルクル歩き回ります。
食べるまで時間はかかりますが、
とっても楽しそうに過ごしています。
食べ終わると、またお気に入りの場所で寝ます。
ワンちゃんたちは失われた機能を
悲しんだりするわけではなく、
残った機能を最大限使い生活します。
クヨクヨなどしません。

僕たち人間はいつまでも完璧を求め、
失われる機能に恐怖し、
できなくなった機能を悲しみ、
不安、心配しながら生活していきます。

ノックにトータにミルク
3人の爺さん、
若いころに比べ寝てばかりいますが、
とっても幸せそう。
僕もこんな年の取り方をしたいな
“こーちゃん”髪の毛がなくなるのは
痛くないし命にもかかわりませんから、
ほっておきましょう、
将来、毛がなくなる恐怖を考えながら
生活するより、
今ある髪の毛に感謝して人生楽しみましょう。

そういえば、僕のおでこもだんだん広がり、
毛も細くボリュームもなくなってきたような・・。マッサージと毛が生える薬飲もっと!


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