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ウサギの耳から木が生えた

耳から木が生えた


「先生、耳の中から
木が生えているんだけど・・・」
「どうしたらいいの?」
確かに大きな耳の穴のなかから
爪楊枝のようなものが生えています。
それも両耳。
「いつからから生えだしました?」
「夏ぐらいかな」
「おじいちゃんがね、
 この木は脳につながっているから
 絶対ひっぱっちゃダメって言うの」
「ほっておいたらね、
 だんだん伸びてきてこんなになっちゃったの」

『木の生えたウサギ』を連れてきたのは、
 中学2年の梓ちゃん。
『木の生えたウサギ』は“ピッピちゃん”
「これはね多分耳の中に
"ウサギミミクサ”
の種が入ったためだよ」

ウサギミミクサ


この種が耳の中に入ると芽をだします。
そして、おじいちゃんの言うとおり、
この草は栄養を求め、
脳に向かって根を伸ばします。
もし自分の飼っているウサギの耳から
木が生えていたも
絶対引っ張っちゃダメ。
そのままにしておいてください。
秋になると実がなり
それが割れると中から種がでてきて
それを飛ばすと自然に枯れるから大丈夫。
ただし種を飛ばす前に途中で枯れると
脳に雑菌がはいるから、
大事の育ててください。
それと、
この“種”人間の耳に入っても
芽をだすことがあるから
くれぐれ気を付けてください。

ウサギミミクサの話をすると、
目をウルウルさせながら、
あわてて耳をふさぐ梓ちゃん。
世の中には恐ろしい植物があるものです。

『ウソ』ですよ。
ごめんなさい
そんな植物はありませんから。
ちょっとふざけ過ぎたことを反省した撲は、
涙目の梓ちゃんに聞きました。
「耳を掻くことある?」
「ない」
「顔を斜めにしていたりすることは?」
「“よだれ”や“鼻水”“目ヤニ”は?」
「ない」
「食欲は?ウンチ?オシッコ?」
みんな良好、全く問題ない様子。
ちょっと太り過ぎだけど、呼吸も安定、
きわめて健康。

次に梓ちゃんに優しくおさえてもらい、
謎の木に触れてみました。
硬さ・触れ心地・色合いはグリコの“ポッキー”
僕は“ポッキー”を掴みそっと引っ張りました。
長さ3㎝ほどの“ポッキー”が取れました。
ポッキーが何かというと“耳垢”です。
まだまだ耳の中には耳垢が溜まっていたため、
やさしく掃除をしてあげました。
その後
洗浄液できれいにして終了。
ピッピちゃんは耳垢が溜まりやすい体質でした。
ピッピちゃんのように耳垢のたまりやすく、
耳垢が枝のようにとびでる
ウサギちゃんが時々います。

ウサギの耳はとっても大事

野生のウサギはいつも鷹・キツネなど
危険がいっぱい。
そのため、ウサギは大きな耳をもちました。
大きな耳により、
わずかな音でもキャッチすることが
できるようになりました。
そして大きな耳は左右別々な方向に
向けることもでき、
草を食べながらも、
耳を立て敵が出す小さな音を聴き逃がしません。
敵の気配を素早く感じとり身を守ります。
他にウサギの耳には体温調整の機能もあります。
大きな耳には血管が通っており、
大きな耳で風を受け
血管内の血液を冷やすことにより体を冷やします。
太陽に向けて体を温めることもできます。
ウサギの耳はとっても大事なのです。

ウサギの耳の病気


ミミダニ
耳ダニが耳の中に寄生すると、とっても痒く、
耳の中にカサブタができたりカサカサします。
黒い耳垢がでたりもします。
早めの治療が必要です。
外耳炎
耳が臭く、痒がり、中が赤い時は要注意、
外耳炎の可能性があります。
茶褐色の耳垢が大量に貯まることもあります。
アレルギーや耳の中でばい菌が増えると
炎症をおこします。
治療が必要です。
慢性化すると皮膚が厚くなり
耳の穴が塞がってしまうことがあります。
耳血腫
耳に皮膚(耳介)の中に血液の液体が溜まって
腫れてしまいます。
外耳炎やミミダニなどで耳を
いつも掻いているとなることがあります。

ピッピちゃんの耳垢は病気なの?


耳垢はほこりや皮膚の残骸などと、
耳垢腺から出てきた分泌物が混ざったものです。
ピッピちゃんの“ポッキー”は、
この分泌物の量が多かったためと考えられます。
ほっておいてもいいのですが、
あまりに長期間塞がっていると、
ばい菌が増えて外耳炎になることがあるので
定期的にとってあげたほうがいいです。
ただし綿棒で掃除すると、
耳の中を傷つけることがあるので、
あまり頻繁に綿棒を使うのはだめです。
洗浄液を定期的に使うのがいいでしょう。
ほっておいて大きくなっても
決して実はなりませんよ。

“ポッキー”の耳垢をとり、
洗浄も終わったピッピちゃん、
診察室のすみに行き、
片耳を下げ前足で優しく撫でています。
この姿はシャンプー後の長い髪のお姉さんが
トリートメントを付けているようで、
僕はとっても大好き。
ピッピちゃんはひとしきり耳の手入れをし終えて
帰っていきました。

次のかたどうぞ、
診察室にはいってきたトイプードル
耳から木が生えていました。
その木にはなんと柿のような実がついていました。
“イヌミミクサ”です。


注意!“ウサギミミクサ”“イヌミミクサ”存在しませんから。


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