見出し画像

金準備という名のもとに ゴールド85

1857年の秋、パリの「ルヴュ・ドゥ・モンド」にミシェル・シュヴァリエによってある記事が掲載された。

現代のヨーロッパでは金は退蔵されない?

シュヴァリエは「現代のヨーロッパでは退蔵される貴金属の量よりも、市中に出てくる貴金属の量の方が多い」と予想した。

※退蔵とは貨幣を秘密の場所に隠すこととシュヴァリエは説明している。彼は、退蔵は「未開状態の社会に特有のものであり、そうした社会では金持ちが略奪を避けるために地下に避難するからだ」として退蔵を軽視した。


文明社会で金が退蔵された

しかし、文明社会である現代のヨーロッパにおいて、途方もない量の金が退蔵されることとなった。

1800年代の初めにイギリスが金本位制の確立に向けて踏み出し、他の国もそれに倣うようになると、莫大な金が退蔵されることとなったのだ。その退蔵された量は、未開状態の社会で金持ちが略奪を避けるために隠す金の量と比較にならないほどだった。

金はイングランド銀行、フランス銀行などの国家の中央銀行や合衆国財務省などによって退蔵された。


金が退蔵された理由

経済活動及び国際的な貿易と投資が大きく拡大したことから、国家が行動の自由を獲得し、新しい資本を自国に引き付けるために金の退蔵はなくてはならない役割を担った。

「安全な貨幣」や「安全な銀行」を決める基準は、銀行の窓口で金を請求する人々に希望通りの量が引き渡されるかどうかだった。退蔵してある金があらゆる防衛線となり、金を手にしている国々は高く評価され、金を失っている国々は困窮しているとみなされた。


金準備という名の下に

その結果、ゴールドラッシュによる莫大な産出量の金はほとんど市中に出回ることなく、「金準備」という名の下でイングランド銀行、フランス銀行などの国家の中央銀行や合衆国財務省などに退蔵されたのだ。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?