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ゴールド 金と人間の文明史-44 金を求める聖なる渇望を癒そうとした男たちの最期

インカ帝国の物語が無残な終焉を迎えたように、征服者たちの物語の結末も道徳の訓話のようだった。

アダム・スミスは探検者や征服者を新世界へ駆り立てた「金を求める聖なる渇望」を激しく非難したが、彼の非難は正しかった。

金を求める聖なる渇きを癒そうとした男たちのほとんどは不幸な最期を迎えた。


バルボアは反逆罪で捕えられ斬首刑となった。

バルボアの斬首刑を命ぜられたフランシスコ・ピサロ -バルボアの元部下- はリマの自宅で食事中に敵の刺客に暗殺された。

剣に刺し貫かれたピサロは「キリストよ!」と叫び、血まみれになって床に倒れたまま十字架を探しあててそれにキスした。

ピサロの仲間は分裂し、ペルー征服に自らの運命を賭け恐ろしい危険をかいくぐった男たちの多くは、金をもってスペインに帰国し安楽な生活を送るという夢を実現できなかった。


スペイン人が金と金製品を奪うだけ奪ってしまうと、もう略奪するものが無くなりペルーの金鉱で採掘が始まった。

そして、スペイン人はこの採掘の重労働 -インカ帝国のもとではこの重労働は厳しく管理して行われ、掘りつくさないように調整され、労働者の命も守られた- にインディオを駆り出して酷使した。

のちにポルトガルがブラジルの豊富な金を採鉱し始めたが、酷使されたインディオの死亡率があまりに高かったせいで先住民の人口が激減し、そのかわりにアフリカの奴隷を大量に輸入せざるを得なくなった。

鉱山での奴隷としての過酷な重労働で、人間の命はあたかも何の価値もないかのごとく無駄に費やされた。


皮肉なことに、新世界から流れ込んだ金の氾濫は、征服者たちが約束し、王が期待した富も権力もスペインにはもたらさなかった。


ゴールド 金と人間の文明史 ピーター・バーンスタイン

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