#020 もしも今、わたしの仕事がすべて無くなるとしたら【古性のちの頭の中】
「思い立ったら即行動」が座右の銘だと自他ともに認めていた若かりし頃。月日を経て30代。わたしは臆病になった気がする。
20代むやみに転んだ分、そこからもう一度立ち上がるのがどんなにしんどいかを知っているから、転ばぬよう、転ばぬよう、器用になりすぎてしまった足で歩いている。そんな感覚を持っている。
それは良いか悪いの話ではなく事実で、何をするにも右と左をきちんと指差し確認し、ちょっとだけ飛び出してみては危険を感じたらすぐもとの場所に戻れるよう片足は残して、恐る恐る、ひとつひとつ、確かめるようになった。
むやみに転ぶことをやめた日々はおだやかだ。
擦り傷も、おおきな失敗も、傷つくこともない。
そのかわりに、私は自分が10代1番なりたくなかった「退屈なおとな」に近づいていないか、自分自身が自分の人生に退屈していないかとふと、不安になることがある。
先々月、わたしが写真を撮るおおきなキッカケをくださった方が突然亡くなった。空を撮る写真家の羽部 恒雄さん通称HABUさん。「夢にむかって」や「空へ」など空の写真に言葉をのせた写真詩集を多く残した方だ。
HABUさんは32歳のときに写真家を志しサラリーマンを退職。その後オーストラリアへ留学し、帰国後はそれまで撮りためてきた写真をポートフォリオにまとめ、出版社を渡り歩き続けた。
結果はどの出版社もNO。
結果、最初に本を出したのは44歳のとき。12年後のことだった。
HABUさんが空の写真とともに私たちにくれるメッセージはいつもひたすらに前向きで、優しい。読んでいるとつい泣いてしまうし、心の真ん中があったかくなる。
写真も言葉も、不自然にこねくり回されておらずシンプルで、実直で、うつくしい。
まるでHABUさんの生き方そのもので、惹き込まれる。
そんなHABUさんが去年の終わり、わたしたちを残し突然この世からいなくなってしまった。
まさか、と思い何度も確認したけれど事実は変わらず、本当にいなくなってしまったらしい。死因は記載されていなかった。
それを知って数日はわたしの心はざわめきのみを残して空っぽで、ただ空を見上げていた。
その時ふと、「自分の本当にやりたかった夢はなんだっただろうな」と、ふと思った。
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