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新婚旅行でアラスカに行った話 #7

どーも、いさなです。
一周空きましたが、再びアラスカ旅行記です。
ワンダーレイク滞在最終日の朝、デナリを見る最後のチャンスとなりましたが、果たして我々はデナリを見ることが出来たのでしょうか?

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8日目の行程

2泊したワンダーレイクキャンプグラウンドを後にして、ユニット34にてバックカントリーキャンプをします。トレイルなし、キャンプ場なし、あるのは完全に手付かずの自然のみというシチュエーションのキャンプです。一体何が待ち受けているのでしょうか。

起床

この日は突き刺すようなツンとした冷気で目を覚ましました。まだ日の出前でしたが、いやにテントの中が明るかったことを覚えています。ぬくぬくとした寝袋からなんとか這い出して着替えを済ませ、テントから顔を出して見ると、昨日までのテントサイトとは少し様子が違っていました。となりでぐっすり眠っているワイフィーに「なんか見えるんだけど」と呼びかけると「えぇ!?」といって飛び起きました。

そして、改めて外へ出て見ると、

我々のテントサイトの目の前にデナリが姿を見せていました。

ワンダーレイク初日、昨日の寝る前、今朝に同じ場所で撮影した写真を比較してみます。

素晴らしい景色でした。ほかのキャンプ客もみんなテンションぶち上がって写真を撮りまくってました。バスの運休や天候不順など、様々な障害がありましたが、これで今回の旅行の一番の目的を達成することが出来ました。

サクッと朝食を済ませて撤収し、バスで移動してバックカントリーユニット34へ 移動します。いよいよ、完全に手付かずの自然の中でのキャンプにチャレンジします。

バックカントリーのはじまり

まずはじめの目的地はマウントギャレンです。

キャンパーバスを降りてバスが走り去った後

今からこの自然界へ足を踏み入れます。

ウェットツンドラというのは冬の間に凍った土が溶けて苔が生えている植生です。歩くとスポンジのようにふわふわしていて、非常に歩きにくく、水を含んでいるため足回りがかなり濡れます。約20キロの荷物を背負ってウェットツンドラの斜面を登るのはかなり骨の折れる仕事で、開始10分で既に心が折れそうになりました。1マイル歩けばすぐにドライツンドラに到達できるとのことなので、お互いに声をかけて励まし合いながら少しづつ進みます。

しばらくすると今度は藪に行く手を阻まれました。遠目に見るとウェットツンドラの苔なのか、藪なのか判断がつかないため、歩いているうちに藪にぶつかってしまったようです。巻くことも出来なさそうなので止むを得ず藪漕ぎします。アラスカでまさかの藪漕ぎ初体験です。事前に勉強しておいた通りにストックを体の前でクロスさせて進みますが、根に足を取られ、ザックは引っかかり、全然前に進みません。進むたびに枝がビシバシ顔に当たるし、とても辛い。ここまでで、いかに人類が生み出した「道」というテクノロジーが偉大だったのかを思い知ることになりました。

ウェットツンドラと、時たま現れる神出鬼没な藪に悪戦苦闘しながら進んでいくと、今まで以上に深い藪にぶつかりました。うんざりしつつも、抜けやすそうなコースを探すために藪を観察していたところ、藪のなかに細い川が流れているのが見えました。おそらく、これが渡渉予定だったムースクリークだと判断。

渡渉は死亡事故が多いので警戒していたのですが、大股で頑張れば跨げる程度の川幅で安心しました。
予想以上にウェットツンドラが続いて辛いですが、そろそろ最初の目的地が目前ということで、気合いを入れ直し、藪を抜けました。その時僕が一番求めていたものは「道」です。「道」を作った人、本当に偉いと思います。

無事渡渉を終え、立ちはだかる藪を抜けてしばらく歩くとようやくドライツンドラに到達しました。天気が良いのでデナリも見えます。最高の気分です。周囲に人工物は一切無く、とても静かです。無限に遊べる気がします。

この辺りで遠目にカリブー4匹の群れを見つけました。草食動物はナワバリ意識が強く、接近しすぎると攻撃してくることもあるそうなので、双眼鏡でカリブーの進行方向を確認しつつ、ビビりながら歩きました。

順調かと思いきや、違和感を感じる

さて、マウントギャレンに取り付いて登って行きます。しかし、地形図で見て想像していたよりもかなりの急勾配、25%以上はありそうです。おまけにいつのまにか足元はウェットツンドラになっていて、足を滑らせたら20キロのザックと一緒に転げ落ちてしまいそうです。なんか聞いていた話と違うなぁ。

結局トップまでウェットツンドラを歩き続け、3時間程度かけて頂上へ到着しました。
ちょっと陰って来ましたがデナリも見えてます。アラスカとはいえ夏は夏なので、日差しは結構暑く汗だくです。ただ風は冷たいので休憩の際は防風できる上着を着ました。

昼食をとり、ルートを確認します。
これからこの山の尾根沿いに歩いていくのですが、

かなり切り立った斜面です。というか、もはや崖。尾根が続いていない??

現在位置を確認するために目印になる地形を探します。

地図上ではマウントギャレンの北側に、ピークが二つ(赤い丸)と、南へ巻いている川(青い線)があることが分かります。

しかし、北を向いた時の実際の景色と一致しません。

ピークが無いし、川も北へ向いています。

これは道間違えたな〜

写真に写っている東西に長い山がマウントギャレンで、その手前を流れてる川がムースクリークでしょう。

地図上でみると、赤が計画していたコース、青が実際に歩いたと思われるコースです。地図で確認すると馬鹿馬鹿しい程の間違いを犯していますが、実際素人が現場で迷わずに歩けるかどうかは五分五分なんじゃないかな?って思います(負け惜しみ)。

川を渡った(と思った)時点でちょっと怪しい気配はしてたんですが(負け惜しみ)、今から戻っても行程がかなり後ろ倒しになってしまうため残念ですがマウントギャレンは諦めることにします。

出来るだけ傾斜の緩やかなコースを選んで山を降り、川岸に着きました。

ここがムースクリークです、この川沿いに北上して、イイ感じのキャンプ地が見つかれば今夜はそこでステイします。

川岸は藪が多く発生している上に足元が沼のような状態なので非常に歩きにくいです。

ウェットツンドラを半日歩いてわかったことは、この草は大変危険であるということ。

一見すると普通の草地なんですが、がっつり沼なので、下手すると靴の中まで水が浸入します。皆さんも気をつけてください。

最高のキャンプ地を発見

藪や沼を巻くために何度か渡渉を繰り返しながらムースクリークに沿って北上して、17:00過ぎごろには予定していたあたりまで進むことが出来ました。何回も渡渉したので完全に足元はズブ濡れです。

そろそろ設営して食事にしたいなと考えていたら丁度良い草地を見つけました。
テントを張り、食料などの匂いのするものは全て100メートル以上離したところに置いておきまさす。

キャンプ地の様子がこちら。

絶景です。こんなスペースを独り占めできるなんてなんて贅沢なんでしょうか。※草の上に設営するのは推奨されてないのですが近場に適切な場所がないのでしゃーなしです

イイ感じに西日が当たるのでズブ濡れの登山靴、靴下、ゲイターを干しておきます。

キャンプ地に訪れた予期せぬ来客

川の水を汲んで飲料水を確保します。浄水フィルターは絶対必須です。水筒タイプとかいろいろありますが、浄水フィルターを通した水を飲料用のボトルに分けて入れる方式が安上がりだと思います。嵩張らないし、運搬する水の量を調整できます。
水も匂いの元になるそうなので、食料置き場に置いておきました。

やるべきことが片付いたので夕飯にします。一品目はスパイシートルティーヤです。

バックカントリーの際は、食事中に周囲を警戒できるよう、お互いに向かい合って座ります。

トルティーヤだけだと流石に足りないのでスパムを焼きました。香ばしい匂いが立ち込めて食欲をそそります。

食事を終えて後片付けをしていると、ワイフィーが僕の背後を見ながら「え、なんかこっちにきてる、、、?」とこぼしました。次の瞬間、顔色が変わり衝撃の発言が飛び出しました。

「ベアーだベアーだベアーだ」

振り返ると40メートルほど先、川の対岸にこちらへ向かってくる3匹のグリズリーを発見しました。

「やべぇしんだ」
「まじかこんなことってある?」
「新婚旅行でとんでもねぇことになっちまった」
「どーすんだ?どーすればいい?」

かなりテンパりましたが、ビデオで見た内容を思い出し、まず食料をベア缶に詰め込みます。とにかく、食料を熊に食べられるわけにはいきません。ベア缶から顔を上げると、3匹のグリズリーは川を渡り20mほどまで迫ってきています。その時、一瞬グリズリーと目が合いました。グリズリーは飢えていました。おそらくですが、焼いたスパムの匂いにつられてここにきたのだと思います。ただ、こちらも喰われるわけには行かないので、ビデオで見た通り行動します。熊から目を離さず、手を多くき広げて存在をアピールしながら後ずさりでその場を離れます。この時、大きな声を出して熊に自分は食べ物ではないということを伝えるとビデオでは言われていたのですが冷静に考えるとそれは意味不明です。僕は何を口に出せばいいのか分からず黙って後ずさりをしました(恐怖で声が出なかったのかもしれない)。そんな中ワイフィーは

「ヘーイ!ベアー!私たちは美味しくないよー!」

と叫んでいました。僕も声を出さねばならぬと思い、とっさに叫びました

「そうだよー!こんなんでも僕たちの新婚旅行なんだよー!」

グリズリーが食料の匂いを放っているベア缶に気を取られている隙にテントまで戻り撤収します。いつもの癖で丁寧にテントを畳もうとしてワイフィーに「畳まなくていいから!」と突っ込まれてしまいました。テントとは別の場所にデポした飲料水、日焼け止め、歯磨き粉なども諦めました。この間も絶えず「ヘーイ!ベアー!私たちは美味しくないよー!」と叫び続けました。

青い矢印ので示すように、グリズリーたちは北側から川を越えて接近してきたため、止むを得ず来た道を戻ることにしました。

グリズリーとの追走劇はじまる

渡渉の危険なんてそっちのけで移動し、そろそろいいかと思ったところに設営しました。とは言え安心もできないのでしばらく周囲を警戒しているとまたもや「なんかあの辺動いてない?」とワイフィーが異変に気付きました。双眼鏡で茂みを観察するとさっきのグリズリーがこちらへ向かって来ているようです。

この時、緑の矢印で示した方向へ風が吹いていました。止むを得ず来た道を戻ったのですが、熊に対して風上へ向かって移動する形となっていたために匂いを追いかけて来てしまったという訳です。

このまま川に沿って南下してもまた同じことの繰り返しになると思ったので、今度は尾根を盾にするように移動しました。

赤い丸のあたりでグリズリーが追って来ている様子がなかったので設営しました。

念のため寝る前に双眼鏡で周囲を見てみると、青い丸の辺りにグリズリーを発見しました。

こちらに気づいている様子は無く、一心不乱にブルーベリーを食べていました。距離も300ヤード以上離れており、一応公園内の安全基準はクリアしている状況だったので、これ以上下手に動かずにここで野営することにしました。内心、これ以上熊に振り回されるのも面倒だし、もう疲れたので寝たいというのもありました。

食料のほか、飲料水、浄水フィルター、歯磨き粉などありとあらゆるものを置いて来てしまいました。手元にあるのは酒くらいのものでしたが、体の水分を節約するため口はつけませんでした。

翌日の早朝に置いて来たものを回収するつもりですが、動物の活動は早朝が最も活発らしいので注意しなければなりません。また、当初予定していた川沿いを通って北に抜けるルートは1日目の野営地点が予定よりかなり南になってしまったためコースタイムが足りないと判断して諦めることにしました。

8日目のまとめ

ついにバックカントリーが始まりました。ウェットツンドラを歩くのはとてもしんどいし、道を間違えてマウントギャレンには登れず、挙句の果てにはグリズリーに襲われるという事態に陥りました。えらい目に遭いましたが、それでも唯一無二の自然を満喫できました。

補足

僕らはグリズリーに喰われることなく今生きてこうやって記事を書いてますが、一歩間違えたら死んでいてもおかしくないかったです。グリズリー遭遇後の僕らの行動は必ずしも正解だと言い切れない部分もあるのでいざという時の参考にはしないようにしてください(日本で普通に暮らしていてグリズリーに遭遇することはないですが)。

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ISANA
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