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【エッセイ×ストーリー】ちいさな巣箱と予想外の訪問者

野鳥のさえずりが響く庭で、コーヒーを飲みながら一息つく。
そんな時間を過ごしたくて、6年前から庭づくりを始めた。

思い描いていた鳥たちの姿を見かけるようになり、いよいよ「ちいさな巣箱」を設置することに。
わくわく、ソワソワしながら見守り続けた数日間のエピソード。

さて、巣箱に訪れたのは……。


「あっ、コゲラだよ!」
お正月モードにどっぷり浸かっていたわたしの目に、飛び込んできた光景。

庭のスモークツリーに、ちいさなコゲラがとまったのだ。
しかも、初の野鳥。


鳥好きのわたしが思い描いた「野鳥のくる庭」。
年月をかけて理想の庭が着々と叶えられている。
わたしの鳥好きが伝染したパートナーも、隣で「おめでとう! よかったね」とホクホク顔だった。


「あれ? この巣箱かわいいね」
立ち寄った道の駅で、ひときわ目を引いたのは鮮やかなブルーの巣箱。
地元の方が作ったハンドメイドならではの「温もり」を感じた。

これなら、うちのナチュラルガーデンに合いそうだね。
買っちゃう? 買っちゃおっか。


ハンドメイドのちいさな巣箱は、予想通り、わが家の庭にしっくりと馴染んだ。



「どの樹に設置する?」
「リビングから、鳥たちの出入りが見える場所がいいよね」


よく目にする、シジュウカラやカワラヒナが出入りする様子を想像して口元が緩む。家に居ながら野鳥観察の趣味を楽しめる。なんて、最高!
かわいらしい小鳥たちを想像しながら、ネグンドカエデの幹にちいさな巣箱を設置した。


***


設置してからの数日間。ちいさな巣箱の存在が気になって仕方ないのは、野鳥ではなく……わたしの方だった。


野鳥が入っていないか、気になって合間にチラチラと見てしまう。


まだ入ってないな……位置が低すぎるのかな? 気づいてるのかな? いや、そもそも最近は、野鳥といえばスズメしか来ていないような……。


ぐるぐると思考を巡らせながらも、数日後、ちいさな巣箱のまえで動く影をキャッチした!!!



よし、そのときが来たっ!


スマホに手を伸ばし、撮影するためにそぉーっと窓際へ忍び寄る。


ん?



あのボサボサ頭は……



ほっぺの赤いチークは……



ヒヨドリ__かぁ……。



ヒヨドリには失礼だけれど、わたしは少しだけ、いや、かなりガッカリしていた。それもそのはず。
毎日やって来るヒヨドリは、もはや常連。
始めのうちこそ感動があったものの、最近では親友並みに親近感を覚えていたのだ。


しかし、ヒヨドリの名誉のためにもいっておきたい。
日本でよく見かけるヒヨドリも、海外のバードウォッチャーからすれば憧れの野鳥。
そして、平安貴族からも愛され、和歌にまで詠まれたほどの賢い野鳥であることを。



と、これでヒヨドリの名誉挽回になっただろうか……。



ちいさな巣箱に興味津々のヒヨドリだったが、残念ながら彼のその大きな体は入らない。
あきらかに、キミには入居不可の物件なのだ。


所在なさそうに、木の枝をつついたり、のぞき込んだりするヒヨドリの姿は、なんとも切ないものだった。


と、そこへまたもや動く影が!!!


今度こそ? お目当ての野鳥の入居か! 高鳴る胸をおさえつつ、影を目で追うと……


まだら模様の


茶色の鳥。


これは……


キジのメス!!! しかも、2羽?!


キジもたしかに吉兆ではある……。あるけれど、ちいさな巣箱に……彼女たちの大きな体での入居は……さらに難しい。


なぜ、こうも入居できない野鳥ばかりが訪れるのだろう。
まぁ、期待していた野鳥たちは訪れてくれないが、クスッと笑えてきた。


思い通りにいかないときは、「ま、いっか……」の魔法の言葉でやり過ごす。


庭は生き物たちと一緒に育っていくもの。
予想外の訪問者たちのおかげで、より愛着が湧く庭になった話。


「実際の様子はこちら!」☟☟☟


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いさな(藤原 勇魚) 植物・自然Webライター|kindle作家
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