運送業者必見!物流の2024年問題を弁護士・中小企業診断士がタイパのよい解説してみました②
「物流の2024年問題」が話題ですが、何がどう問題なのでしょうか。残業時間が、「960」や「3300」等様々な数字が出てきて、かなり複雑でややこしく感じます。そこで、「物流の2024年問題」を分かり易く整理していきます。前回は、法規制について解説しましたが、法規制の観点から解説します。
「物流の2024年問題」とは
まず、「物流の2024年問題」は要するに、法改正によってドライバーの労働時間規制が強化されたことによって、ドライバー不足となり物流に支障が生じるのではないかということです。
労働時間の現状
令和3年度厚生労働省「自動車運転者の労働時間等に係る実態調査報告書」によると1年間の拘束時間について、「3,300時間以上」と回答した事業者の割合は、21.7%です。その内訳は、3,300時間以上~3,516時間以下が17.4%、3,516時間超~3,840時間以下が3.6%、3,840時間超が0.7%です。
また、トラック事業について、改善基準告示を遵守することが難しい理由は、「着荷主で荷待ち時間が発生するため」が最も多く37.7%、次いで「発荷主で荷待ち時間が発生するため」が35.8%、「納品までのリードタイムや時間指定等の条件が厳しいため」が22.6%、「積込みや荷卸しが手荷役で、作業時間が長時間となるため」が21.4%、「自社側で荷主からのオーダーに合わせた効率的な運行計画を作れていないため」が17.5%でした。最も多い原因となる荷待ち時間とは、荷主(荷物の持ち主、送り主)や物流施設の都合によってドライバー側が待機している時間のことであり、荷物の積み下ろし待ちや指示待ちの時間も含まれています。荷待ち(にまち)や荷役(にえき)の効率化が課題であることが分かります。
改善策
以上を踏まえると、法律的観点と業務効率化の観点の2つの観点から、改善基準告示の遵守策が考えられます。
法律的観点
まずは、1年のうち6か月までは、1年の総拘束時間が3,400時間を超えない範囲内において、1か月の拘束時間を310時間まで延長する労使協定をすることが考えられます。1年で言うと原則3,300時間から、100時間の延長ですが、1年の内、6カ月間は、1カ月につき16.7時間拘束時間を延長出来ますから、拘束時間を遵守する上で重要です。
業務効率化の観点
次に、業務効率化による観点ですが、全日本トラック協会の「取引環境と長時間労働の改善に向けたガイドライン」では、対応例として次の13例が紹介されています。すなわち、① 予約受付システムの導入、② パレット等の活用、③ 荷主からの入出荷情報等の事前提供、④ 幹線輸送部分と集荷配送部分の分離、⑤ 集荷先や配送先の集約、⑥ 運転以外の作業部分の分離、⑦ 出荷に合わせた生産・荷造り等、⑧ 荷主側の施設面の改善、⑨ 十分なリードタイムの確保による安定した輸送の確保、⑩ 高速道路の利用、⑪ 混雑時を避けた配送、⑫ 発注量の平準化、⑬ モーダルシフトです。各企業ごとにボトルネックは様々ですから、まずはボトルネックを探索し、その特定されたボトルネックに基づいて、①~⑬までの内から対策を考えるという流れです。
まとめ
以上物流の2024年問題の概略を解説してきました。法律的観点と業務効率化の観点を掛け合わせて、拘束時間の短縮に努めることが重要です。業務効率化の観点を実行していくには、運送業に精通した中小企業診断士に相談してみるのが良いでしょう。