STRACT / PLUG
Headline Asia は入れておくだけで安くお買い物できるアプリ「PLUG(プラグ)」を開発/運営するSTRACT社のシリーズAラウンドにリードインベスターとして参加しました。
PLUGが将来、インターネット体験にイノベーションを起こしビッグテックカンパニーに成長すると信じています。
STRACTチームとは弊社が主催するIVS2022 LAUNCHPAD NAHA を通じて出会いました。(公開はしていませんでしたが、シードファンドであるLAUNCHPAD FUNDからもシード時に出資を行っています。)
オンラインショッピングは、もはや生活になくてはならないものになりました。
少し前まではオンラインで物は買えない、見ないと信頼できないと言われていた時代があったたようですが、今自分のデスクにあるものを見渡すと、今年始めた舌下治療の常備薬以外は全てオンラインで購入したものです。
オンラインで買い物をする最大のメリットの一つは、お得に買い物ができることです。スーパーで買い物をする時にこのキャベツがほかのスーパーと比べて安いのか、わざわざ複数のスーパーを行き来して比べるのは大変なので、多少の誤差は気にせず購入します。一方で、オンラインショッピングでは多くのサイトを数クリックで参照し、一番安いサイトを探すことが可能です。しかし、「タイパ」が叫ばれる現代ではそれすらもめんどくさいと感じる人も多いです。PLUGはSafariの拡張機能として機能し、ユーザーがAmazon等で買い物をしていると、自動で複数のECで価格比較を行いベストプライスを教えてくれます。
ちょうど今朝も気になっているアイテムを検索してAmazonのページを開いたら価格比較をしてくれました。
さらに、価格比較だけでなくそれぞれのEコマースで使えるキャッシュバックも自動でサジェストをしてくれる、入れておいて得しかないプロダクトです。
(ダウンロードはこちらから!🤧: https://app.adjust.com/16xmk7f )
PLUG as an Agent
上記のプロダクト説明だけでも十分に便利で、使わない理由のないプロダクト、と感じる方も多いと思います。実際、PLUGはすでに累計100万ダウンロード (24年10月末時点で130万DL) も達成しています。
しかし、PLUGを単なる”価格比較 / キャッシュバックのサジェストツール”と捉えてしまうと、PLUGが秘めるポテンシャルの10%も理解できていないかもしれません。
直近のICCカタパルトのプレゼンで代表の伊藤さんは、冒頭で”一番重要な、この事業の概念の話”として
PLUGはユーザーのトランザクションを最適化するエージェントになることを目指しています。
その後の説明にもある通り、PLUGはすでにある「PLUG ベストプライス / オファー」に加え、今後、「PLUG キープ」(お気に入り的な機能。値下げ時に通知なども) や「PLUG あと払い」「PLUG インシュアランス」「PLUG ショッピング」などEコマースの体験を最適化する機能のローンチを今後続々と予定しています。また拡張機能という性質上、ローンチした段階でこれらの機能があらゆるECで利用可能となります。
PLUGは全てのトランザクションを最適化しするエージェントを目指し、その最初のステップとして価格比較(ベストプライス)やキャッシュバック(オファー)を提供しています。
そう考えるとサービスとしてもビジネスとしてもより壮大な未来像が想像できると思います。
PLUG as an Aggregator (of Aggregator)
巨大インターネットビジネスの共通する特徴として StratecheryのBen Thompsonさんが記したAggregation Theoryと呼ばるAirbnb、Netflixなど多くのビックテック企業の成長の基盤となった概念があります。
ざっくり抜粋/要約すると以下です。
その例として、Google、Facebook、Amazon、Uber、 Airbnbといったような企業が挙げられています。
Googleは検索エンジンからスタートし、サプライ (webページ) をコモディティ化し、 ユーザーアグリゲートし、インターネットに接続する際のゲートウェイという圧倒的なポジションを確立しました。
PLUGが前段で述べたユーザーに対するエージェントとしてのポジションを確立できると、ユーザーはトランザクション毎に”エージェント PLUG”にお得な情報や最安値の探索、そのほかあと払いや配送管理、お気に入り登録、購入体験の最適化などを依頼するようになるでしょう。
つまり、多くのユーザーがPLUGを経由してインターネット上で買い物するようになるということです。
そしてこれは、Googleが検索エンジンをフックにインターネットのゲートウェイとなったように、PLUGもユーザー体験を最適化することでユーザーをアグリゲートし、一方でスタンドアローンのECを集約、さらにはサプライヤー(既存のEC)を再分解(disaggregate)し、アグリゲーターのアグリゲーターとなることで、EC体験のゲートウェイとなっていると言えると思います。
そのためにはもっと多くのユーザーが必要です。そして、Benさんのエッセーの中ではサプライヤーとエンドユーザーを直接統合するアグリゲーターになるためには、最高のユーザー体験を提供し、より多くのユーザーを獲得することが鍵になるとされています。
STRACTのMissionは、「インターフェースの力で、テクノロジーの恩恵をすべての人へ」です。ファウンダーの伊藤さんは頻繁に「インターフェース」という言葉を使います。ユーザー体験の最適化を追求してきたエンジニアである伊藤さんだからこそ、ユーザーのエージェントとして、どんなユーザーも簡単に直感的に使えて、一番お得で一人一人のユーザーに最適化された購買体験を提供するPLUGを開発できると信じています。
また、BenさんがAggregator について定義したエッセーではAggregator の3つの特徴として以下が挙げられています。
Direct Relationship with Users
Zero Marginal Costs For Serving Users
Demand-driven Multi-sided Networks with Decreasing Acquisition Costs
Direct Relationship with Users : PLUGは拡張機能としてユーザーのインターネット体験に接続されすでにローンチから2年で100万人を超えるユーザーとのタッチポイントを持っています。また拡張機能はもちろん、すでにPLUGのアプリ経由で買い物先を探すユーザーも多く今後PLUGアプリの強化によってよりこの関係性を強いものにしていきます。
Zero Marginal Costs For Serving Users: 価格比較、キャッシュバック (さらに今後開発予定の追加サービス) には基本的には限界費用がかからず、明日ユーザーが100倍になっても理論上は問題なくサービス運営が可能です。
Demand-driven Multi-sided Networks with Decreasing Acquisition Costs: PLUGはEC / コンシューマーのマルチネットワークを構築しています。また、
1. ユーザー数の増加
2. 提携EC数の増加
3. ユーザーに対する提供価値の向上
4. PLUGの収益性の向上
というグロースサイクルがあり、これにより将来的に獲得コストの減少する可能性が高いと考えています。
PLUGのTGIF (PLUGの社内外の関係者が参加する飲み会?) にも何回か参加させていただきましたが、伊藤さんから参加メンバーに向けてもPLUGの最重要概念についてのプレゼンがあり、何回聞いてもワクワクするものでした!そして、そのミッションに共感して経験豊富な素晴らしいメンバーが集まってきています。
サービスの拡張性
よくネットワーキングの場面で初対面の人にベンチャーキャピタルで働いていますというと、「投資領域はありますか?」と聞かれます。アニマルスピリッツ朝倉さんの直近のポッドキャストでもVCファームのセクター特化とジェネラリストについて語られていますが、一個人としてもなかなか聞かれると回答のしづらさを感じていました。もちろん興味のある領域はありますが、そこだけに注力しているわけではないですし、領域特化してしまうと”投資対象が少なくなり大化けする企業に出会える可能性を狭める”という著名な投資家のコメントもあります。
とはいえ「特にないです」という回答も面白くないので、色々考えていたのですが今年の投資活動や特に面白いと思った国内外の企業を振り返ってみてパターン認識すると「サービスの拡張性」というキーワードが思い浮かんできました。
一番好きなテックエッセーの一つのNot boringで紹介されているAstro MechanicaやBase Power Company、Rampといった企業 (内容を説明したいのですが、筆が遅くリリースギリギリの夜に書いているため興味のある方は直接読むか、ChatGPTに要約してもらってください。。) や今年出資させていただいたTradomは既存のプロダクトでも大きな可能性を持ちつつ、それを基盤により大きなサービスに進化していくポテンシャルを兼ね備えています。
ある意味で、加熱するGen AIの中心に位置するChatGPTも同じ特徴があると思います。今のチャット機能を基盤にインターネット時代の王者たちである各種プラットフォームをアグリゲートし、ユーザーとのタッチポイントの頂点のポジションを獲得することによって無限の可能性が開かれます。
特に目新しい発想ではないと思いますが、これらのサービスの拡張性とその先にあるスケールの大きさに非常に魅力を感じています。PLUGのポテンシャルについては既述の通りすが、まさに年の終わりに少しだけ思考の整理ができてスッキリしたので余談としてあんまり見られないであろうnote限定で備忘録として残しておきます🫥
最後に
最後にあるスタートアップ企業の創業期の話を書いて終わりたいと思います。
1996年にBackRubという検索エンジンが開発されました。1998年にはAmazonのジェフ・ベゾスなどのエンジェル投資家から、1999年にはKleiner PerkinsやSequoia Capitalから$25Mの資金調達に成功し、現在世界で最も大きな会社の一つになっています。Googleという会社です。
しかし、Wikipediaによると「1999年の初め、ブリンとペイジはGoogleをExciteに売り渡すことを希望していた。2人はExciteの最高経営責任者(CEO)ジョージ・ベルを訪問し、Googleを100万ドルで買収するオファーを持ちかけたが、ベルはこのオファーを拒絶した。 Exciteのベンチャーキャピタリストの1人ビノッド・コースラは、Googleを75万ドルで売り渡すようペイジらを説得することに成功したが、それでもベルはGoogle買収を却下した。」という苦労もあったようです。
Chat GPTに当時のGoogleの苦悩を聞くと、以下の回答でした。
1. 技術的評価の低さ
当時、検索エンジンは今ほど注目されていなかったため、ビジネスとしての価値が過小評価されていました。検索自体が広告ビジネスや収益に直結するとはほとんど考えられておらず、むしろコンテンツポータル(Yahoo!など)の付随機能と見なされていたのです。このため、検索エンジンのためのアルゴリズムを開発しても、他社からは「便利ではあるが、売上につながるのか?」と疑問視され、なかなか評価されませんでした。
2. 資金調達とインフラの問題
インターネットのデータが急増する中で、Googleはデータを効率よくクロールし、インデックスを構築するためのサーバーを必要としていましたが、当時は大規模なインフラを自前で整備する資金がありませんでした。特に、クロールやインデックス作成のためのコンピュータリソースは高額で、スタンフォード大学内のサーバーを借りながらなんとか運営していた時期もあります。この資金不足は、Exiteへの売却を試みた理由の一つともいえます。
3. ビジネスモデルの確立に対する不安
ペイジとブリンは、検索エンジンを通じて情報を整理するという使命を持っていましたが、当初は広告で収益化することに躊躇していました。検索結果に広告を混ぜることで、検索の信頼性やユーザー体験を損なうことを恐れていたのです。このため、彼らは長い間、広告を利用せずに収益を上げる方法を模索し、結果的に広告を自然に表示する新しい形の「検索連動型広告モデル」にたどり着くことになりますが、初期段階ではビジネスとしての不確実性が非常に高い状態でした。
中でも”検索エンジンは今ほど注目されていなかったため、ビジネスとしての価値が過小評価されていました。検索自体が広告ビジネスや収益に直結するとはほとんど考えられておらず、むしろコンテンツポータル(Yahoo!など)の付随機能と見なされていたのです。”という記述は今となっては信じられません。
ただこれはテック業界では良くメンションされる「The next big thing will start out looking like a toy (次の大きなイノベーションも最初はオモチャに見える) 」というメンタルモデルを最も象徴するエピソードの一つです。
現状のPLUGはおもちゃというには洗練され過ぎているプロダクトになっていますが、10年後に今のPLUGを見たらおもちゃに見えるかも知れません。
もちろん、STRACT/PLUGの成功は確約されたものではありません。まだまだユーザー数はこれから何十倍に伸ばしていかないといけませんし、現時点では想定できていないリスクがあるかも知れません。大きな挑戦は始まったばかりです。
STRACTが目指す「インターフェースの力で、テクノロジーの恩恵をすべての人へ」というこのポテンシャルに共感してくれる方がいれば、まずはApp StoreでPLUGをインストールしてみてください。(Andoroidユーザーの方はまずはiPhoneを買ってください🫡) そして、もしこの壮大な冒険に同じ船のクルーとしてチャレンジしてくれる方がいればぜひSTRACTにぜひジョインしてください!(カジュアル面談と募集ポジションについてはこちら!)