【Yコンビネーター】顧客インタビューから学べること
先日少しだけお話させていただいたDCM原さんのNoteでも参考文献として載っていたYコンビネーターの動画「How to Talk to Users」編。
スピーカーのEric MigicovskyはYコンビネーターのプログラムを通じ2011年に最初のスマートウォッチの会社PEBBLEを立ち上げた。そんな彼がユーザーの対話はスタートアップにとって最も大切な1つだという。その方法や、活用、実際の例などについて話している。
優秀な起業家は顧客と近い関係を築く
会社の大きさに関わらず、優秀な起業家は顧客と非常に親密な関係を保つ。すべてのステージにおいて、顧客から有益な情報を学ぶことができる。もし、あなたが起業家ならば顧客との対話はあなたの仕事だ。たとえ、あなたがエンジニアであろうと避けては通れない道だ。
顧客とのコミュニケーションはスタートアップにとって本当に大切だ。Yコンビネーターでは会社について調べるために2つのことを教えている。コードを書いてプロダクトを作ることと顧客と話すことだ。それでも、実際に顧客と話すことは結構難しい。そこで、その方法について説明しよう。
やってはいけない3つのこと
顧客インタビューで犯しがちな3つのミスがある。
1.顧客の話ではなく、アイデアやプロダクト、ビジネスの話ばかりする
顧客インタビューはあなたの製品やビジョンのピッチをするためのものではない。その目的は、インタビューを通じて製品やマーケティングの質を改善することである。そのために、インタビューでは顧客のライフスタイルについて具体的に聞き必要な情報を得なければいけない。
2.仮説ばかり話す
製品がこの先こうなるかもしれない、新しくこういう機能をつけようと思っているなどといった話をしがちである。もしこの機能を作ったら使いたいと思うか、お金を払って使うか。そんなことは聞かなくてよい。そうじゃなくて、実際に顧客の生活で起こっている問題を具体的に聞きだそう。それは、製品や意思決定のための非常に有用な情報になる。顧客がなぜその問題に困っているのかその背景や動機について広く聞き情報を引き出そう。
3.話し過ぎる
多くの起業家は投資家にピッチをし、従業員の前で演説をし、リクルートや契約のためにプレゼンをしていいて話すことに慣れている。そのため、インタビューでも語りたい気持ちが強くなるかもしれないが、そこはぐっと抑えて聞くことに専念しよう。なぜなら、あなたの目的はインタビューで情報を得てオフィスにユーザーの生活に関するデータやファクトを持ち帰ることだからだ。
どんな質問をすれば良い?
初期の顧客インタビューでだれもが使える5つの質問がある。
1.(起業家が取り組もうとしている)問題について最も大変なことは何か
Dropboxを例にとって説明しよう。2005年、まだDropboxが存在しない世界を思い出してほしい。あなたは、Dropboxの初期の構想を考えていてMITで学んでいるとする。コンピュータルームにいて、隣に友達が座っている。あなたは、ポテンシャルユーザーや解決する問題について学ぶため、生徒たちがどのようにファイルを共有しているのか詳しく知りたい。そこで、あなたは「学校のパソコンを使ってグループワークをしているときに1番大変なことって何?」と聞くことができる。そして、その会話を通じてあなたは友達が現在どうやってグループワークをしているか、何か困っていることなどを知ることができる。例えば、大学のシステムを使っていることや、同時に同じファイルにアクセスしているといった問題があるかもしれない。
一般的に、優秀な起業家は人々が日常的に直面する問題や非常に困っている問題に取り組んでいる。この質問をすることで、あなたの取り組んでいる問題が顧客にとって取り組むべき問題かわかる。
2.顧客は最近いつその問題に直面したか
この質問の意図は顧客がこの問題に直面した状況などの背景を知ることだ。Dropboxの例でいうと、友達に質問して1週間という具体的な期間の中でだれとどのプロジェクトに取り組んでいたなどがわかる。できるだけたくさんの情報を引き出し、プロダクトの開発に実生活の情報を反映させることができる。また、その状況であなたの製品が本当に役に立つのか知ることもできる。
3.なぜそれは大変なのか
なぜ、友達はプロジェクトのスライドシェアに苦戦しているのか。
Dropboxの例では、たくさんのバージョンのファイルがあり間違ったファイルを提出してしまったり、同時にファイルを見れないがために全く同じ作業をしていたなどがある。
この質問のいいところは、取り組もうとしている問題を単に特定することだけではなく、ポテンシャルカスタマーやマーケットに対し製品がどのような価値や利点を持ち、いつ役立つのか説明するときに有益な情報を得られるところだ。顧客が製品を購入する時大切なのはなぜそれを買うのかということだ。だから、Dropboxを売り込むときに単にファイルを共有することを強調するよりも、まさに2週間前に困っていた問題を解決するんだということを伝えた方が良いだろう。
4.何かこの問題を解決するためにしたことはあるか
この質問には2つの理由がある。1つは取り組もうとしている問題に対し、すでにその解決策を求めている人がいるのかを知ること。もう1つは、ライバルとなりうるモノや比較されるモノを見つけること。
Dropboxの例では、生徒たちはグループワークでファイル共有の問題に対処するためにどんなツールを使っていたのか。メールを使っていたかもしれないし、何か他の物を使っていたかもしれない。
5.問題に対処するために使ってみた製品の何が気に入らなかったか。
この質問で、プロダクトがどんな利点をもたらすべきかを知ることができる。
注意しておきたいのは、これはどんな機能が欲しか聞くためではないこと。それは、ただの仮説(妄想)だ。顧客は彼らが本当に欲しいものを実は理解していない。フォードが車を作っていた時に、多くの人はそれより早い馬が欲しかったように。
この質問では、すでに存在する製品の問題点を明らかに、自社の製品はそれとどう違うのかを具体的に見つけ出すことができる。
顧客インタビューが特に有益な3つのステージとは?
顧客インタビューはすべてのステージで重要なことは間違いないけれど、PMFを達成する前の段階では特に大切になる。
1.アイデアを探す段階→問題を抱える人を見つける
アイデアを探す段階では、いくつものアイデアが浮かんでいるかもしれない。でも、まずは困っていいる問題を話してくれて、最初の顧客になってくれるかもしれない人を探そう。
どうやって、さがせばいいかって?中にはファウンダー自身の問題を解決している会社もある。さっきの質問を自分自身に問いかけてみても良い。インタビューの練習にもなる。
その次は友達に聞いてみよう。何千人もの人にインタビューする必要はない。たいていの場合は1、2人のリサーチから始まっている。その代わり、フラットでバイアスを持たずに、詳しいインタビューをしなければならない。
他には突撃する人もいる。Yコンビネーターのスタートアップの中には消防士にメールをして話を聞きに行った人もいる。なんなら、メールをする必要もない。ただ、消防署に行って所長に少し話せないか聞いてみるといい。これはかなり有効だ。たった10-15分の中でたくさんの有益な情報を得られる。いきなり、話しかけるには少し勇気がいるかもしれい。でも、もし、彼らの問題を解決しようと努力をしているならば彼らにとっても有益な時間になるだろう。
イベントに出席することも、いい手段だ。僕がPebbleにいたときは、ブースもなかったけどCESに行ってポテンシャルユーザーを探した。CESにいる人はテクノロジーに精通している人が多いから興味を持ってくれる人はおおいと思ったんだ。
このステージではメモを取ること、積極的に行動すること、相手の時間を大切にし聞き手に専念することが大切だ。
2.プロトタイプを作る段階→ファーストカスタマーは誰か
この段階ではまずファーストカスタマーを探そう。適切なファーストカスタマーを探すことはとても大切だ。
次の3つの質問を活用しよう。
・その問題のためにいくらのお金を失っているか
対処にどのくらいの費用を使っているか、いくらのお金を失っているか具体的に聞きだそう。
・どのくらい頻繁に起こる問題か
頻繁であればあるほど、顧客は痛みを感じていて製品を受け入れやすく、実際に製品が役立っているのか知れる機会が多くなる。
・予算はいくらか
頻繁に直面する問題でも、予算を管理しているのは上司や本部かもしれない。
3.ローンチ後→PMFを目指す
繰り返し行いPMFを測ろう。Yコンビネーター創業者のPaul Grahamは顧客が本当に欲しいものを作った時にPMFが達成されると定義し、Marc Andreessenは製品を売り込むこともなく売れる状態をPMFとした素晴らしいブログを書いている。でも、これでは少し漠然としていて結果論であり、すでにPMFの段階にないと測定することができない。そのため、PMFの達成に向けてどう改善すべきかという点で有効ではない。SuperhumanのCEOであるRahul Vohraは漠然とした定義ではなくPMFのための具体的なシステムを自身のブログで示した。そのプロセスにはもちろん、顧客インタビューも含まれている。以下の動画やブログを是非読んでみてほしい。
他にも、直接顧客とコミュニケーションをとるために電話番号を入手しておくことと、顧客にどんな機能が欲しいか聞かないこと、具体的でない批評などの悪いデータは無視することなどが大切だ。
まとめ
果たして製品が本当になくてはならないモノなのか、大きな問題を解決しているのか、既存の製品よりも10倍いいのか。それを確かめるためにも、スタートアップには顧客インタビューが欠かせない。ただ、顧客インタビューにもコツや効果的なやり方がある。何度も顧客のもとに足を運び、上達していこう。